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健康局医療政策部 医療政策課




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「医療のより良い関係を考える会」第1回提言
−医療当事者間の意思疎通について−


医療のより良い関係を考える会編

平成14年7月

目次

はじめに

1 患者及び都民自らが取り組むべきこと

2 医療機関や医療従事者自らが取り組むべきこと

3 医療の当事者相互の良好な関係を築いていくためのしくみづくりや支援のあり方

おわりに

参考資料1 医療のより良い関係を考える会委員名簿 pdf

参考資料2 医療のより良い関係を考える会及びシンポジウムの開催状況 pdf

参考資料3 医療当時者間の意思疎通に向けた取組イメージ図 pdf
( pdfをご覧になるにはAdobe社の 「Acrobat Reader」が必要です)



はじめに
 「医療のより良い関係を考える会」(以下「考える会」という。)は、東京都が進める「東京発医療改革」の一環として、患者中心の医療を実現していくため、平成13年11月に設置された。
 考える会では医療のより良い関係づくりに向けて、医療を受ける立場、医療に携わる立場及び学識経験者の15名の委員
(参考資料1)が、「患者の声相談窓口(平成13年5月に東京都が設置)」に寄せられた都民の声を事例として、立場の違いを超えて、様々な角度から意見交換を行っており、その模様を広く都民に情報発信するとともに、都民からの意見を求めてきた。
 考える会の設置以来、議論を重ねてきたテーマは「医療当事者(患者と医療提供者)間の意思疎通」である。
 最も人間的な営みである医療は、たとえ医療機器の高度な発達に支えられたとしても、患者と医療提供者との間の意思疎通が良好に図られることによって、はじめて成り立つ。
 信頼関係が生まれ、患者も主体的に自らの治療に参加する道が開け、患者にとって安全で良質な医療が日々提供される、そうした医療のあるべき姿(患者中心の医療)は、良好な意思疎通から始まるという認識の下、最初のテーマとしたものである。
 考える会は、意思疎通のテーマに関して、4回にわたって議論を行うとともに,都民を交えたシンポジウム「考えよう 医療におけるコミュニケーション −納得と信頼の医療をめざして−」を開催した。
(参考資料2)
 もとより、都民と医療提供者一人ひとりが患者中心の医療という理念に沿った取組を行わない限り、その実現は困難である。
 また、一人ひとりの行動を望ましいものに変えるためには、意識としくみの変革が必要である。  難しい課題ではあるが、考える会としては、意見交換の内容を、広く都民や医療機関などにアピールし、具体的なアクションに結びつけていくことが重要であると考え、このたび良好な意思疎通について、提言として取りまとめを行った。
 今回のまとめにあたり、以下の三つの切り口から論点を整理し、議論の内容を紹介するとともに、考える会としての提言を取りまとめた。
(参考資料3)

1 患者及び都民自らが取り組むべきこと

2 医療機関や医療従事者自らが取り組むべきこと

3 医療の当事者相互の良好な関係を築いていくためのしくみづくりや支援のあり方


 
この提言が、広く周知され、都民、医療機関、医療従事者、行政等の関係団体の取組の参考となり、それぞれの主体的な参画による患者中心の医療の"しくみづくり"の気運が盛り上がり、更には、日々の身近なことから医療が変わるきっかけとなることを期待したい。

1 患者及び都民自らが取り組むべきこと
(議論の内容)
 考える会では、患者中心の医療を実現するため、患者は医療の当事者として、医療提供者との信頼関係を築きながら主体的に医療に参画していくことが必要であるとの認識の下、意見交換を行った。  委員からは、医師におまかせという患者の意識を改め、自らの健康を管理するとともに、医療の場で自らの症状をきちんと語るなど患者から積極的なコミュニケーションに努め、主体的に医療に参加していくことが必要であるとの意見が出された。
 主な意見は、以下のとおりである。

○都民は自分の病気や体調について、もっと関心を持ち、日ごろから自らの健康管理に努めることが必要である。
○都民は医療の制度やしくみ、あるいは医療機関のかかり方などの知識を、積極的に習得する姿勢が必要である。
○患者が医療に関する知識を持ち、積極的にコミュニケーションを図るなど、主体的に医療に参加し、かつ自らが医療機関を選択していくことが、良い医師を育むことにつながる。
○都民は健康管理や病気の予防、更には悩み、不安を気軽に相談できるなど、本当の意味での「かかりつけ医」を見つける努力を行うことが必要である。
○患者自身が、医師に自らの病状を、適切に説明するなどの努力を払うとともに、分からないこと、疑問に思うこと、迷っていることなどを医師に遠慮しないで説明を求める姿勢が重要である。

  以上の議論を踏まえ、良好な意思疎通を確保するために、患者及び都民自らが取り組み、努力すべきこととして、考える会は以下のことを提言する。
@患者及び都民は、医療の制度やしくみを調べ、また、必要な医療情報を集めるなどを通して、主体的に医療機関を選択することが必要である。

A都民は、医療に関する悩みや不安を気軽に相談できる「かかりつけ医」を身近に確保していく必要がある。

B患者は自らの症状を適切に説明し、また、分からないことを遠慮せずに聞くなど、医療提供者との対話を図りながら、積極的に医療に参加して、納得できる医療を受けることが必要である。


2 医療機関や医療従事者自らが取り組むべきこと
(議論の内容)
 考える会では、患者との良好な意思疎通を通じて、信頼関係を構築していくことは、安全で良質な医療の提供という使命を有する医療機関や医療従事者にとっても重要な課題であるとの認識の下、意見交換を行った。
 委員からは、医療機関や医療従事者は、@医療の透明性を高めるために患者に診療情報を十分説明し、提供していくこと、A患者が医療の一方の当事者であり、かつ病を持つ者であるということを認識し、患者を支える心構えを持つこと、B健康管理や病気を予防する観点から、また、制度やしくみの理解や、医療のかかり方などの知識を普及する観点から、地域の住民との交流を積極的に進め、信頼関係を構築していくこと、Cこれらを実現していくためにも、患者中心の医療という視点に立って医療提供者の意識改革に努めることなどの意見が出された。
 主な意見は、以下のとおりである。

○医療機関や医療従事者は、患者の不安と緊張に配慮し、「何でも聞いてください。どんなことでもお答えします。」という明確なメッセージを患者に伝えていくことが必要である。
○患者との関係において、質問をする、説明を聴く、訴えを理解するなどの医療の一連の行為を、患者の立場に立って円滑に進めるため、医療提供者は医療現場におけるコミュニケーション技術の一層の研さんに努めることが求められている。
○時間経過を含む詳細な診療計画表(クリティカルパス(注1))などのツールを整備することは、整理された診療情報を患者に提供することになり、患者にとって、主体的な医療参加の道が開けることになる。
○患者が病気や医療のしくみなどの情報を収集できる図書室又は資料閲覧室を設けることなどにより、患者の知りたい、調べたい、又は疑問を解消したいなどのニーズに応える必要がある。
○医療機関内に患者の利益や訴えを代弁(アドボケイト(注2))する相談体制を構築していく必要がある。
○医療機関は地域の人々との交流を図り、健康管理や病気の予防、医療の制度やしくみの理解に努めていく必要がある。
○医療当事者間の信頼関係を構築するため、医療機関は医の倫理に関する運営理念や患者の権利を明らかにし、患者や医療従事者に周知徹底していくことが大切である。
○医療機関は、患者との意思疎通を良好にする必要性の理念化と、その具体的な行動及び評価基準の作成を通じて職員に遵守させるための組織的な運営(コンプライアンス(注3))を心掛ける必要がある。


 以上の議論を踏まえ、良好な意思疎通を確保するために、医療機関や医療従事者が取り組み、努力すべきこととして、考える会は以下のことを提言する。

@診療情報の提供を積極的に進め、患者中心の視点に立った医療提供者の十分な説明とこれに基づく患者の納得と同意(インフォームドコンセント)を日常的に定着させるために、職員の研さんや患者のためのクリティカルパスの導入などに努めるとともに、「何でも聞いてください。どんなことでもお答えします。」というメッセージを患者に伝えていく必要がある。

A病気や医療のしくみなど医療に関する情報を患者に提供する機会や場を設定するとともに、気軽に相談でき、診療情報などを患者に分かりやすく説明するための窓口を設けるなど患者の立場に立った支援に努める必要がある。

B意思疎通に関する自主的な行動基準を策定し、職員一人ひとりが基準を遵守するための運営を徹底していくことで、医療の質の向上と職員の意識改革を図る必要がある。 C 地域の住民との交流を図り、健康管理や病気の予防、医療の制度やしくみの理解に努めていく必要がある。


(注1) クリティカルパス:疾患別、処置別に、患者に対するケア内容を時間の経過ごとに示した診療計画表
(注2)アドボケイト:権利や利益を擁護すること。
(注3)コンプライアンス:法令や自主行動基準等を遵守すること及びそのために組織内の体制(プロセス管理、評価等)を整備すること。トップが関与した上で、コンプライアンスを重視した組織運営を行うことをコンプライアンス運営という。    


3 医療の当事者相互の良好な関係を築いていくためのしくみづくりや支援のあり方
(議論の内容)
 考える会は、患者中心の医療の実現のためには、医療の当事者に取組を求めるだけでなく、これを支えるための行政をはじめとする医療の関係者によるしくみづくりや支援が必要であるとの認識の下、意見交換を行った。
 委員からは、個々の医療現場での意思疎通は、当事者相互の問題としてとらえられてきたが、良好な意思疎通を図り、信頼関係を築くためには、当事者の取組を支援する機会や場の確保、ルールやしくみづくり、更には医療を受けやすいシステムの構築など、定着させるための取組が必要であるとの意見が出された。また、これにより、はじめて「開かれた、安心できる、無駄のない医療」の実現につながるという意見が出された。
 これに加えて、患者の権利の確立、医学教育の改善、更には、しくみづくりとして医療安全のための第三者機関の設置などの意見も出された。
 主な意見は、以下のとおりである。

○都民が最初に接する医療(プライマリケア(注4))を地域社会に根ざしたものとして充実させるために「かかりつけ医」を増やし、住民にとって何でも相談できる体制を築いていく ことが重要である。
○医療機関の診療機能などについて、情報を簡潔で分かりやすく住民に提供するなど、医療情報の公開を前向きに進め、患者の医療機関選択と医療の質の向上に資するためのしくみを検討すべきである。   
○住民が基本的な医療の制度やしくみを学べる機会や場を、学校教育や生涯教育などと併せて医療機関でもつくっていく必要がある。
○患者の立場に立った相談窓口を身近なところに設置し、分かりやすく紹介すること。さらに、窓口相互の連携を推進していくことも重要である。
○患者と医療提供者の橋渡しをする医療ソーシャルワーカー(注5)の制度や患者の代理人(注6)のしくみを整備していくとともに、治療法を選択するに当たって他の医師の意見(セカンドオピニオン(注7))を必要とする患者に、スムーズに応えていく必要がある。
○医療の消費者である患者が有する権利の尊重について医療提供者の自覚を促すとともに、都民に啓発していくことが必要である。
○医学教育において、患者との意思疎通の理念や方法について教育内容に加えるなどの改善を図るべきである。
○事故には至らないが、診療行為時にひやりとしたり、ハッとした事例(インシデント(注8))の報告を受け、必要な情報を還元する第三者機関の設置を検討する必要がある。  

 以上の議論を踏まえ、良好な意思疎通を確保するために必要なしくみづくりや支援のあり方について、行政をはじめとする関係者が取り組み、努力すべきこととして、考える会は、以下のことを提言する。

@患者が身近なところで医療に関する悩みや不安を相談できるしくみを築いていくために、「かかりつけ医」の紹介を行うなど、その機能の活用を図れるような体制をより充実させていく必要がある。

A都民が安心して医療にかかれるよう、地域の中で医療機関が相互に連携しあう体制を、一層整備していく必要がある。

B都民が医療機関を選択していくことを支援するため、必要な情報を提供する情報システムを整備していく必要がある。  また、患者が治療方法を決定するためのいわゆるセカンドオピニオンの求めにもスムーズに対応できる体制を築いていく必要がある。

C医療サービスの消費者としての側面を持つ患者が、主体的な 取組を行えるよう、医療の受け方やしくみを学習するセンターなどの場の設置や、医療機関と住民との交流などの機会を設定していく必要がある。

D相談機能を充実するため、身近な保健所などに相談窓口を設置していくとともに、窓口相互の連携を図るための連絡会の開催などを行っていく必要がある。 また、患者の立場になって情報を受けとめ、分かりやすく伝えるための取組を医療機関に促し、支援を行っていく必要がある。

E意思疎通に関する自主的な行動基準の策定と、職員一人ひとりが基準を遵守する運営を促進させるための方策を検討していく必要がある。

F医療の信頼性を向上させるため、国の動向を踏まえながら、インシデントに関する報告や評価、更には普及啓発を行う第三者機関の設置を検討する必要がある。


(注5)医療ソーシャルワーカー:社会科学的な専門知識及び技術を持って、保健医療の場で患者の抱える諸問題について、相談、助言などの援助を行う者をいう。
(注6)患者の代理人:患者に代わって医療機関と応対し、患者の権利や利益を擁護する役割を担う者
(注7)セカンドオピニオン:現在かかっている医師とは別の医師が意見を述べること。主治医以外の専門家が治療法などを検討する。
(注8)インシデント:日常診療の場で誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、あるいは、誤った医療行為が実施されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの。

おわりに
 考える会では、これまで各委員の間で様々な意見交換が行われたが、この提言を取りまとめるに当たっては、必ずしも十分な論議が尽くされていないものもある。  
 今後とも、都民や医療機関などへ情報発信を行い、様々な意見をいただく中で、医療のより良い関係づくり、ひいては患者中心の医療の実現に向けて更に議論を深め、引き続き必要な提言を行っていきたいと考えている。
問い合わせ先
健康局医療政策部
電話03-5320-4448 (直通)