プロスキーヤー三浦雄一郎さんは、2003年5月22日に世界最高峰エベレスト(チョモランマ)の登頂に成功しました。登頂時の年齢はなんと70歳、世界最高齢記録です。
雄一郎さんがエベレストへの挑戦を思い立ったきっかけは、父・敬三さん、次男・豪太さんへのライバル意識からでした。父・敬三さんは90歳を過ぎても毎年120日以上スキーを楽しみ、99歳の白寿の記念にフランスのバレーブランシュを滑り降りることを計画、次男・豪太さんも当時、モーグル日本代表として世界中を転戦していました。
雄一郎さんも、現役時代はスキーでスピード世界記録を樹立、7大陸最高峰のスキー滑走という偉業を成し遂げてきましたが、現役引退後は、運動もしないで、好きなものを食べ放題、飲み放題。体脂肪率も40%近くにまでなってしまいました。
現役時代の自分と現在の自分を照らし合わせ、さらに、目標を持って生きる父と息子を見たとき、「自分を『高齢者』という枠にあてはめ、あきらめてはいけない」「2人に追いつき、追い越したい」と強く感じ、もともと抱いていたエベレストへの情熱が目覚めたのです。
しかし、手始めにハイキングコースになっている実家の裏山を登ってみたところ、足の動きも思うようにならず、結局500m程の山も登りきれない自分に気付きました。
そこから、5年間にも及ぶエベレスト登頂へのトレーニングが始まりました。
ただ、雄一郎さんにはトレーニングに対し、ある考えがありました。それは、「つらいだけのトレーニングはやらない」、「飲み放題・食べ放題はほどほどにするがやめない」、「眠いのを我慢してトレーニングはしない」といった独創的な方針です。
年齢的にもハードなトレーニングはできないので、日常生活の中でできるトレーニングをしようと考え、「おもりをつけてのウォーキング」を実行することにしました。1kgのおもりを足首につけ、10kgの荷物を入れたリュックを背負って歩くのです。そして、このトレーニングを「自分の趣味」だと思うようにしました。
登山靴を履き、原宿から渋谷まで公園や街の人ごみの中に入っていく。とても気持ちがよく、話かけてくる人もいる。日ごとに重さにも慣れて、より大きなおもりにしていくと、さらに自分の筋肉や体力を高めてくれる・・・そんな楽しい基礎トレーニングを続けていくうちに、血糖値も下がり、脳の血流もよくなり、体中に力がみなぎってきました。
基礎体力がついてくると、その後はエベレスト登山までのトレーニングを計画的に実行し、2003年5月、エベレスト登頂を成し遂げてしまったのです。

エベレストの頂上から見渡す雄大なヒマラヤの景色は、まさに地球の生まれたままの姿、もともと海だった場所に自分が立っていると思ったときの感動はとてつもなく大きなものでした。
雄一郎さんの挑戦を支えたもの、それは「情熱」でした。人はそれぞれ「これをやりたい」という情熱が眠っているはずです。それは何歳になっても心のどこかにあるものです。
雄一郎さんは「自分の中にある情熱を大事にするべき」「年甲斐もないと言われるのは名誉なこと」と言います。
「夢」を持ち、その夢を実現させるために「情熱」を持つこと。それが長生きをするための秘訣なのです。