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増え続けるアルコール性の肝臓病

肝臓の役割って?
肝臓は内臓のなかで一番大きな臓器で、重さは成人男子で1.2から1.5キログラム、女子は平均1キログラムです。この肝臓には約3,000億個といわれる肝細胞がつまっています。 肝臓は上腹部右側からみぞおちにかけて位置しています。肝臓には動脈、静脈のほか門脈と呼ばれる太い血管があり、胃腸で消化・吸収された栄養素を肝臓まで運ぶ役目をしています。

肝臓はどんな働きをするの?
たんぱく質を合成して生命維持と成長に必要な物質を作り出す。
体内の各臓器の働きに必要なエネルギ-源(グリコ-ゲン、脂肪酸、ビタミン)を蓄え、必要に応じて血液に送り出す。
 アルコ-ルや有害物質を解毒・排泄したり細菌や異物を処理する。
 胆汁をつくり、腸へ送り、消化・吸収を助ける。
 以上が主な肝臓の働きですが、肝臓は人間の体を作り、エネルギ-源を供給するうえで大切な働きをしています。いいかえると、人間の各臓器を正常に働かせるための縁の下の力持ちと言えます。

アルコール性肝障害って?
近年アルコ-ル消費量が伸びるのと平行して増え続けているものが、アルコ-ル性肝障害です。アルコ-ル性肝障害は、脂肪肝、肝硬変が主な病気です。

写真 正常な肝臓
正常な肝臓

脂肪肝はどんな病気?
飲酒されたアルコ-ルの90%が肝臓で処理されます。酒量はそれほど多くなくても連日飲み続けると、肝細胞の中に中性脂肪がたまり肝臓がはれてきます。この状態を脂肪肝といいます。きちんと断酒すれば2から4週間で脂肪はとれて元の状態にもどります。しかし当院の解剖診断では、この脂肪肝で死亡する人がかなりみられます。

写真 脂肪肝
脂肪肝

肝硬変はどんな病気?
脂肪肝の状態が何年も続くと肝臓の中に線維(結合織)が増えて肝臓が硬くなり、肝臓の機能が著しく低下した状態を肝硬変といい、肝硬変になると肝臓はほとんど元にもどりません。また、肝硬変から肝臓癌に進むケ-スも増えています。40から50歳代に発症することが多く、この年代の死亡の第4位にランクされる怖い病気です。

写真 肝硬変
肝硬変

肝臓病を早期発見するには
以下のような症状は、アルコ-ル性肝障害、肝硬変の可能性がありますので、病院、診療所等で診断を受けて下さい。
1 疲れやすく、全身がだるくなり、何をする気も起きなくなったという場合は要注意です。
2 上腹部右側が硬くて重苦しい。
3 からだが黄色くなる(黄疸症状)。
4 紅茶色のような濃い尿が一日中出たり、ますます濃くなった場合。
5 お酒がまずくなり飲めなくなる。
6 手のひらが赤くなる。
7 からだに赤い斑点が出る。
首筋や胸、肩にかけて、2~3ミリから数センチのものまでいろいろですが、細い血管の集まりが中心部から放射状に広がっています。これをクモ状血管腫といいます。
8 腹壁の血管がうき出たり、お腹が張って腹水がたまる。
9 男性の乳房がふくらんだり、毛がうすくなり女性化する。
10 かゆみが続いたり、皮膚から出血しやすくなる。

グラフ アルコール性肝障害による脂肪統計

ウイルス性肝炎って?
お酒による肝臓障害は、肝臓病全体のわずか5%程度で、しかも早めに断酒して安静にしていれば次第に治るものです。多くの肝臓病の原因はウィルスによる肝炎です。
 ウィルス性肝炎は現在までにA、B、C、D、E型の5種類が発見・同定されていますが、主なものはA、B、C型の3種類があげられます。

A型肝炎はどんな病気?
かつて流行性肝炎と呼ばれ、現在でも我が国における急性肝炎の最大の原因で、急性肝炎の40から60%を占めます。患者の糞便を通じて経口感染するものです。A型肝炎は慢性化することはありませんが、時に重症化・劇症化します。現在ワクチンが開発されています。

B型肝炎はどんな病気?
B型肝炎は血液および血液を含んだ体液を通して感染するものです。感染経路としては輸血を含めた血液製剤の使用がかつては多く見られましたが、現在は肝炎ウィルスのスクリ-ニング技術の発達で、完全ではありませんがかなり防止されるようになりました。一般的に成人ではB型肝炎は時に劇症化して死亡する以外は急性肝炎として治癒する例が多いのですが、最近は必ずしもそうではなくB型肝炎ウィルスが完全に排除されない例があるとも言われています。免疫力が低下すると成人でも持続感染する場合があるとされています。出産時などに乳児が感染すると持続感染を引き起こしてキャリアといわれる状態になることがありますが、予防法が発達し感染を防ぐことができるようになりました。また針刺し事故、性交、入れ墨、覚醒剤などの違法薬物のまわし打ちを通して感染することもあります。現在ワクチンが開発されています。

C型肝炎はどんな病気?
C型肝炎はB型肝炎と同様に血液を介して感染する肝炎です。A型肝炎、B型肝炎に比べ高率で慢性化するとされています。現在スクリ-ニング方法の発達で新規感染者は減少してきていますが、肝硬変への移行、肝細胞癌の発生が現在大きな問題となっています。また大酒家の肝臓病変の進行にも関与しています。さらにC型肝炎ウィルスは肝臓ばかりではなく多臓器疾患を引き起こす可能性が高いとされ現在研究が進んでいます。

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