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評価・手法 項目編 

 障害・入所分科会の検討・試行の結果
 (1)障害・通所分科会のとりくみ

 (2)利用者調査
 (3)事業評価

8 障害・入所分科会の試行・検討の結果

(1)障害・入所分科会のとりくみ

 ○ 障害・入所分科会では、利用者調査において、もっとも困難が予測される知的障害者更生施設を最初に検討することとし、利用者調査と事業評価の調査票の作成を行った。

 ○ 知的障害者更生施設での試行を行い、評価手法の有効性と、重要と思われる項目を導き出した。

(2)利用者調査

ア 調査票作成のポイント

○ 利用者調査の調査票作成の留意点は次のとおりである。

  • 12年度に試行を行った障害通所施設利用者調査の調査票をもとに、入所施設に関する内容を加え改善することにし、利用者に応じた3種類の調査票の検討を行った。
  • まず、利用者調査に必要と思われる項目を基本的に盛り込んだ「くわしいもの」を作成した。
  • さらに、項目を絞った「やさしいもの」を作成し、利用者の注意喚起、集中力の持続の効果を目的として、さし絵を付した。
  • 重度の利用者調査の手法として「コミニュケーションシート」を作成した。

○ コミュニケーションが困難な利用者に対する調査方法として、困難さの度合いにより次の3パターンを作成した。

「くわしいもの」
「やさしいもの」
「コミュニケーションシート」
〜コミュニケーションがとれる人向け〜
〜ある程度コミュニケーションがとれる人向け〜
〜コミュニケーションが困難な人向け〜

○ 「くわしいもの」「やさしいもの」は、アンケート方式とし、基本的に利用者本人が読み、記入するものであるが、不可能なときには職員が質問を読みあげ、代理で記入するものとした。

○ 「コミュニケーションシート」は、あらかじめ施設職員が利用者特有の表現を記録したもの(「利用者カルテ」と略称)に基づき複数の調査員(第三者)が利用者の意向を観察する方式とした。

○ 評価項目の体系

<くわしいもの>
   利用者が更生施設へ入所する前のプロセスから、大項目を設定し、大項目が表す  プロセスの中でサービスのポイントとなるものを小項目として設定した。

大項目 小項目数
生活方針について
日常生活・環境について 24
日中活動・仕事等について
要望・いやな思いへの対応
入所施設の総合評価 10
アンケートについて 10
合  計 69

<やさしいもの>
大項目 小項目数
施設の運営について
個人別の計画について
日常生活について 12
家族との関わり・交流について
嫌な思いへの対応
入所施設の効果・総合的な評価について
合  計 31

アンケートは別に実施した。

 <コミュニケーションシート>
大項目 小項目数
今日のサービスに対する気持ちは?
関わりごとの気持ちは? 11
今後への気づき
合  計 13

イ 試行の概要

○ 入所更生施設の利用者は通所施設と異なり、広域的に区市町村から措置されているため、東京都からの直接委託による試行を実施した。また、調布市においても1施設で試行を実施した。

○ 試行実施した調査票の種類等は次のとおりである。

実施形態 調査書等 都直接委託 調布市
調査施設数 公設民営 1 施設 1 施設
民設民営 1 施設  
調査対象数 利用者 くわしいもの 9 人 5 人
やさしいもの 26 人 28 人
コミュニケーションシート 34 人 3 人
69 人 36 人
家族 家族用くわしい
もの
  60 人
使用調査票   分科会作成版をそのまま使用 分科会作成版を一部変更
・やさしいもの16項目に変更、挿絵一部使用
・家族用はくわしいものを一部変更

○ 調査票は、都直接委託については、分科会作成版をそのまま使用した。また、調布市については、市の実情を考慮し、家族に対する調査を行うなど、一部変更して使用した。

ウ 実施手順

○ 都直接委託についての実施手順概略は次のとおりである。
手  順 内容・ポイント
◇調査項目の確定 ・分科会作成の調査票をそのまま使用
◇対象事業者の選定 ・施設利用者を対象に、3調査票を使用。
◇評価を受ける事業者
 との打ち合わせ
・事業者と2回打ち合わせを実施、全体スケジュールの説明、利用者評価対象者の選定、自己評価の記入説明等を実施した。
◇利用者(保護者)に
 対する説明
・利用者には施設から説明、家族には家族会において施設から説する説明
◇調査票の配布 ・調査員が、施設で利用者へ配布
◇調査票の回収 ・調査員が、施設で回収
◇問い合わせ・苦情への対応 ・評価委託事業者と都において対応
◇個人情報の取り扱い ・評価委託事業者とは契約書に守秘義務を明記
・調査票に個人を特定できる内容を記載しないよう注意

○ 調布市についての実施手順概略は次のとおりである。
手  順 内容・ポイント
◇調査項目の確定 ・「くわしいもの」は、検討会で作成した調査票に3項目追加して採用
・「やさしいもの」は、検討会作成の調査票から主要な16項目に限定。絵カードを作成した。
◇利用者調査対象者の選定 ・施設利用者を対象に、3調査票を使用。
・家族調査も併せて実施した(利用者の気持ちになりかわって回答)。
◇評価を受ける事業者
 との打ち合わせ
・市において外部委員による検討会を設置し、評価を受ける施設職員、評価委託事業者も委員に加え、事務局体制を整備した。
◇利用者(保護者)に
 対する説明
・利用者には、施設から説明
・家族には、調査の趣旨、日程等について文書による通知や家族会において説明
◇調査票の配布 ・家族用は、郵送配布
・施設では、利用者・職員へ調査員が配布
◇調査票の回収 ・家族用は、郵送回収
・施設では、調査員が回収
◇問い合わせ・苦情への対応 ・市担当職員が対応
◇個人情報の取り扱い ・評価委託事業者とは契約書に守秘義務を明記
・調査票に個人を特定できる内容を記載しないよう注意

エ 調査結果及び調査手法・調査票の有効性

○ 利用者調査はその場で回収したため、回収率はほぼ100%であった。家族調査は郵送回収であったため、92%であった。

○ 調査に必要とした時間に関しては、「くわしいもの」「やさしいもの」については、平均30分を要した。

○ 「やさしいもの」の絵については、リラックスするという面はあるが、質問の理解には役立たなかった。一部の利用者の回答を引き出すのに役立った。

○ 「コミュニケーションシート」は観察方式による調査で、「職員の思い」と「第三者の認識」調査員の観察を合議して回答をひきだす方式のため、施設職員の意見が反映されやすい傾向になり、合議の決定方法は今後の課題である。また、この手法は推測にならざるを得ないという一面があり、利用者の満足度を引き出す手法として有効か継続して検討する必要がある。

○ 施設により、朝の目覚めから就寝までの状況を把握するため、継続して5日間にわたり宿泊又は、通所により調査を実施した。今回の調査では、重度知的障害者とコミュニケーションが取れ、特徴を把握できるまでに約3日を要している。ただし、調査員の労力的には継続5日が限界と思われる。

○ 直接本人に聞くという調査方法は、利用者が権利主体であるということを再認識する意味で非常に有意義であった。しかし、本人の「好き嫌い」なのか、その時の「気分」なのか対象者の特性上判断が難しい傾向がみられる。

オ 試行結果の検証から導かれた、利用者調査の重要と思われる項目

○ 都直接委託による試行結果のデータを分科会で検討した結果、現在サービスを利用している利用者にとって重要と思われる項目として、以下のものがあげられた。

<くわしいもの>
大 項 目 小 項 目 分   類
生活方針 ・施設の方針の説明
・個人計画作成時の本人参加
回答数が少ないため、
定性的な分析により
抽出
日常生活・環境 ・食事はおいしく食べているか
・気持ちをわかってくれる職員がいるか
・自由時間に散歩、買物が可能か
いやな思いへの対応 ・いやな思いの経験
・いやな思いの内容
・内容をどこかに伝えたか
総合的評価 ・できる事がふえたか

<やさしいもの>
大 項 目 小 項 目 分   類
施設の運営 ・嫌なことを言ったり、したりする人がいるか 回答数が少ないため、
定性的な分析により
抽出
日常生活について ・風呂にゆっくり入れるか
・やりたい作業ができるか
・自由時間に散歩、買物が可能か
・テレビ、電話等自由に利用できるか
いやな思いへの対応 ・いやな思いをした時相談者は話を聞いてくれたか
総合的評価 ・安心した生活がおくれるか
・活動して出来ることや楽しいことが増えている
・今の暮らしは好きか

<コミュニケーションシート>

○ 朝の目覚めから入眠までの11項目を設問とした。昼食と休憩タイムについては、100%の回答が得られたため、利用者の意向を把握しやすい状況と考えられる。

○ なお、調布市の試行では、調布市版「やさしいもの」調査票を用いた利用者調査の回答数が28あったため、満足構造分析を行うことが可能となった。分析結果からは、以下の項目が重要であると思われる。

 <やさしいもの>
小 項 目 分 類
・自分が好きなことが自由にできる
・この施設で期待されている役割がある
・活動をしていてできることや楽しいことが増えている
・家族といつでも連絡して楽しいこと、嫌なことを話せる
促進
促進
注意
注意

カ 今後の改善点(手法、調査票、項目について)

○ 3種類の調査票の各シート間の中間的なシートがあると障害の程度に合った対応が可能になる。

○ 表現の工夫が必要な設問もある。また、言換えが必要なものもあり、あらかじめ言換えパターンを準備して調査員が同じ表現で聞き取り調査をすることが求められる。

○ 調査票は、利用者の障害特性に配慮して、利用者の毎日の生活に関する項目を先に聞き興味を引くなど、設問の順番を変えて聞き取りをすることにより効果的に回答が得られる。

(3)事業評価

ア 調査票(サービスチェックリスト)作成のポイント

○ 知的障害者更生施設は、公設民営も民設民営も障害者サービスそのものについて評価すべき内容には変わりないと考えられ、同一の調査票とすることにした。

イ 試行の概要

実施形態 都直接委託 調布市
調査施設数 公設民営 1 施設 1 施設
民設民営 1 施設  
使用調査票   分科会作成版をそのまま使用 分科会作成版を一部変更
・4段階評価に変更
・一般職員用を作成

ウ 実施手順

○ 事前に「事業プロフィール」「事業評価分析シート」「サービスチェックリスト」を幹部職員及び一般職員に記入し提出を求める。

○ 調査員による現地訪問・職員インタビューを実施した。

○ 個別に評価をしたものを調査員の合議により最終得点を決定した。

エ 調査結果及び調査手法・調査票の有効性

○ 組織の経営側面の評価に徹したため、自己評価より全体に低い得点になった。

○ 事前に示された「評価イメージ」よりも幅広い側面を見て自己評価している傾向があった。

○ 事前の記入に要する時間は人により、1〜3日を要しているが、これは、初めての経験のためと考えられ、次回は短縮も可能。精度の高い評価をするためなら評価シートを全て活用することが正確な評価につながる。

オ 試行結果の検証から導かれた、事業評価における重要と思われる項目

○ 根拠

 試行結果や事業者・施設によるアンケート結果から次の項目が重要と思われる。

○ 大項目、チェック項目、チェック項目について

 評価委託事業者と施設が重要と考える事項に明らかな相違がみられ、専門的立場の違いから重要度の感じ方にばらつきがみられた。

  評価委託事業者

  1. 情報公開・提供
  2. 安全管理
  3. 地域との交流・連携

 施 設

  1. 事業者・施設としての必要なサービス水準の確保
  2. 個別対応の重視
  3. 要望・苦情・トラブルへの適切な対応

カ 今後の改善点(手法、調査票、項目について)

○ サービスチェックリストは、知的障害者更生施設の場合利用者の声を把握しにくいことからも、リストでの確認が重要になる。確認事項では、施設が利用者ニーズ・社会状況の変化などに対応できる能力・専門性を有しているかどうかを確認できる項目であることが必要である。

○ 短い期間と少ない情報で施設の現状をポイントを抑えて把握していく力や見る目を持った調査員の育成が必要である。