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システム編 1 
(1)第三者評価システム構築の目的
(2)第三者評価の定義
(3)第三者評価システムの全体像
(4)評価対象となるサービス
(5)評価機関

(6)評価サポート機構

1 東京都における第三者評価システム

(1)第三者評価システム構築の目的

○ はじめにでも述べたように、多くの福祉サービスの利用のしくみが行政による「措置制度」から、利用者と事業者が対等な立場で「契約」を取り交わし、利用者自らが選択し利用する「契約制度」へと変わり、契約制度の下で、規制緩和により、多様な事業者が福祉サービスの分野に新規参入することが予想される。

○ このような中で、利用者が、多数の事業者が提供するサービスの中から、自分のニーズに最もふさわしい事業者やサービスを自らの責任で選択するためには、契約制度の下での利用者保護という観点からみても、事業者の特性やサービスの特徴や質を比較できる情報、信頼できる情報が必要である。

○ 同時に、事業者も自らのサービスの質や事業運営上・経営上の課題を客観的に把握し、事業の改善や利用者指向のサービスの質の向上に取り組むことが重要である。

○ このような利用者の選択と事業者の質の向上のために必要なしくみが、専門的な知識を持つ中立的な第三者が客観的に福祉サービスを評価し、評価結果を利用者や事業者に広く情報提供するためのサービス評価システムである。

○ これまで、法律等に基づいて、理事、評議員、財務諸表等サービス提供事業者の組織運営や経営に関する情報、職員体制などのサービス提供者に関する情報、建物や設備に関する情報などは公表されている。しかし、それらは、事業者に関する基本的・外形的な情報が主であり、サービスの内容や質を把握するには十分でない。

○ また、事業者で行われている自己点検、自己評価や、既に先駆的な自治体やNPO等が行っている第三者サービス評価は、サービス質の向上に役立っているという側面はあるが、内部の業務の点検が主な目的で、評価方法や項目が事業者や評価機関毎に異なり、共通の尺度がないため、他事業者と比較可能な評価としては不十分なのが現状である。

○ すなわち、第三者による福祉サービスの評価システムの構築の目的は、利用者本位の福祉の実現のために、さまざまな事業者が行う福祉サービスの内容や質を相互に比較可能な情報とし、利用者や事業者に情報提供することを通じて、利用者の選択に資するとともにサービスの質の向上に向けた事業者の取り組みを促すことにある。

(2)第三者評価の定義

○ 福祉サービスにおける第三者評価とは、事業者でも利用者でもない第三者の多様な評価機関が、専門的かつ客観的な立場から、サービスの内容や質、事業者の経営や組織のマネジメントの力等を評価することをいう。

○ 評価の手法としては、利用者の意向をきく「利用者調査」と事業のしくみやサービス提供プロセスを評価する「事業評価」を用いる。

(3)第三者評価システムの全体像

○ 事業者は、サービスの質の向上のために、自らの責任と負担により、評価機関に評価依頼を行い、事業者と評価機関との間で契約を交わし、評価を実施する。

○ 評価機関としては、民間のシンクタンク、調査会社、研究機関、NPOなど多様な主体が想定される。

○ 評価機関は、利用者の声や事業内容を基に、サービスの評価を行う。その際、サービス評価の手法や項目は、指導検査基準等とは異なり、行政がこうあるべきと示すべきものではなく、柔軟でニーズに即した評価が行えるよう、利用者のニーズや事業者の事業改善の取り組み内容に応じて、評価機関がそれぞれの視点で策定することが基本である。

○ また、多様な事業者が、利用者のニーズに応じて、画一的でなく特色あるサービスを提供していくことができるよう、多様な評価機関がそれぞれの視点で、事業者の特色を活かし、事業者自らがサービスの質の向上に取り組み、経営、事業の改善に役立つような評価を行うことが必要である。

○ 同時に、利用者が評価結果を比較し選択できるように、また、事業者が自らのサービスを他の事業者と比較できるようにするため、共通の尺度のもとに、各評価機関が共通して評価を行う、共通評価項目を設定することが重要である。また、共通評価項目の結果情報について、利用者、事業者双方にとって活用しやすいものとなるよう、情報を集約し、比較可能でわかりやすい形にとりまとめて情報提供することが必要である。

○ ただし、現状では、福祉サービスの評価について、明確な評価機関が殆ど存在せず、具体的な評価手法や項目についても確立されていない。そのため、評価機関となりうる主体を発掘し支援するとともに、評価やその結果情報について一定の質を担保し、評価機関の信頼性を確保しなければならない。

○ これらの評価機関の支援、信頼性の確保、評価結果情報の取りまとめ・公表などの一連の支援・普及策は、一体的かつ連携させて行うことが効果的である。この役割を担うのが、第三者性、客観性、公平性を有した中立的機関としての評価サポート機構である。

○ 評価サポート機構は、多様な評価機関を支援するとともに、評価の質を確保するため、第三者評価機関の認証や評価者に対する研修、評価情報の収集や情報提供を行う。

○ また、評価サポート機構は、事業者が利用者に対して自己開示する評価結果情報を集約し、わかりやすく発信する。利用者は、その評価結果を情報として入手し、比較検討した上で、福祉サービスを選択する。同時に、事業者は、自ら評価結果全体を分析・活用することで、自主的なサービス改善や経営判断、組織改革、体質強化につなげていく。

○ 以上が、第三者によるサービス評価の基本的な流れであり、全体像を図示したものが、(別紙1)である。

(4)評価対象となるサービス

○ 福祉サービスにおいて、利用者の選択と事業者の競い合いを実現し、その質の向上を図るためには、基本的には福祉サービス全般について第三者によるサービス評価を行うことが望ましい。

○ また、平成12年6月に施行された社会福祉法の第78条第1項においても、サービス評価の必要性について、「社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って、良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない」と規定している。

○ しかしながら、個々の福祉サービスについて、事業者の特性、利用者の特性などを具体的にみてみると、事業者の規模、形態など、さまざまであり、利用者の意向や満足度を把握するためのコミュニケーション方法も、判断能力の程度によって異なっているのが現実である。

○ また、契約制度に移行するサービスにおける評価は、利用者の選択と事業者の競い合いによるサービスの質の向上を目的とするのに対し、措置制度が残るサービスにおける評価は、客観的な第三者によるサービス評価を通じたサービスの質の向上や事業の透明性の確保を主な目的とするなど、評価へのアプローチが異なっている側面もある。

○ さらに、行政の関与の度合いでサービスを分類すると、社会福祉法内の福祉サービス、法に規定はないが補助金等で行政が何らかの関与を行っているサービス、他の個別法により行政に指導権限のあるサービス、全く行政が関与していないサービスなどがあり、それぞれ、事業者が第三者評価を受けるように誘導する際の手法は異なることが想定される。

○ したがって、第三者によるサービス評価の実施にあたっては、評価が可能なサービスや評価が特に重要と思われるサービスから段階的に実施していくことが適当である。

○ その際、既に区市町村で試行を行っているサービスを考慮しながら、利用者の数が多く民間参入が認められ実質的な競争が見込まれるサービスや、利用者にとって評価情報が特に重要なサービスを先行して実施することが望ましい。

(5)評価機関

 1)評価機関についての基本的な考え方

○ 第三者による評価は、福祉サービスに利用者の視点を取り入れ、事業者による利用者指向のサービス提供を促すという点で大きな役割を果たすが、その際、評価の視点としては、利用者の意向を重視する視点、あるいは組織経営の安定性を重視する視点など、多様な視点がありうる。

○ そのため、利用者の様々なニーズをサービスに反映させ、事業者の特色あるサービスを育てるためには、公的な主体が評価を行うよりも、それぞれの視点をもった多様な評価機関が行うことが必要であり、民間のシンクタンク、調査会社、研究機関、NPOなど多様な主体が想定される。

○ このような多様な評価機関が、それぞれの視点をもって評価活動を行うことにより、多角的な視点からサービス内容を把握することが可能になり、利用者にとって、より開かれた福祉を実現することができる。さらに、数多くの評価機関が競い合うことにより、都全体の評価レベルの向上にもつながる。

○ これらの評価機関が、利用者調査を行う場合には、利用者の特性に応じて、たとえばホームヘルパーなど福祉サービスに従事している職員に対して一定の研修を行うことや、利用者の代弁者としてのオンブズパーソンで、利用者に関する知識や経験を持っている人を、評価者として活用することも考えられる。

 2)評価機関の信頼性の確保

○ 評価機関は、その組織形態も含め立場や特色の違いを有することも想定されるが、評価されるサービス提供事業者の立場からも、評価結果を活用する利用者の立場からも、評価機関が信頼性を有していなければならない。

○ そのために、評価機関の多様性を妨げないような最低限の要件の設定は必要であり、要件に基づいて評価サポート機構の認証を受けることが必要である。

○ 第三者評価機関が有していなければならない事項としては、次のようなものが考えられる
 ・ 安定性、継続性
 ・ 第三者性、中立性、公平性、独立性
 ・ 透明性
 ・ 評価能力

 3)評価機関の認証要件の考え方

○ 認証要件を定めるにあたっては、

 ・評価システムの信頼性を確保すること
 ・第三者評価を普及定着させていくためには、多数の評価機関が必要であること
 などを考慮する必要がある。

○ 認証要件に盛り込むべき内容は次のようなことがあげられる。

ア 評価機関の責任の所在を明確にすること

 ・サービス提供事業者と契約を交わして評価を行い、共通評価項目については評価結果を公表することが基本であることから、評価機関の責任の所在を明確にするために、法人格を有していることが必要である。

 ・また、評価事業の安定性、継続性という観点からも、法人格が必要である。

 ・評価者が評価機関に所属する形態については、評価者となり得る経歴や資格を持っている人材を幅広く活用するために、常勤、非常勤、登録などの多様な形態がありうると考えられる。

イ 評価機関の第三者性、中立性、公平性、独立性を確保すること

 ・評価の信頼性を確保するためには、評価機関の第三者性、中立性、公平性、独立性を確保することが必要であることから、事業者自らが評価機関になることや、評価者やその関係者などが所属している施設、事業所の評価を行うことはできないような規定を設けることが必要である。

 ・福祉サービスに関する事業を経営する者の集まりである事業者団体が評価機関となることは、加盟事業者の評価を中立、公平に行えるか、恣意的な評価が行われないかなど、第三者性の確保という観点からは懸念がある。

 ・一方、事業者団体が評価システムに参加することにより、第三者評価が推進・普及するという効果もある。従って、事業者団体については、評価についての中立性、評価結果の信頼性が確保されるように、外部の委員で構成される委員会を設置することや他の評価機関の参入を妨げないような条件を付して認証することが考えられる。

ウ 評価機関の透明性を確保すること

 ・評価機関の透明性を確保するために、評価機関は、所属する評価者の氏名、経歴、研修受講歴、評価機関の事業内容、評価手順、守秘義務に関する規程、倫理規程、料金表、評価に関する異議、苦情の申立窓口及び責任者の設置など、評価にあたって重要な事柄について規定を設け、公表することが必要である。

エ 評価能力を確保すること

 ・評価機関に所属する評価者については、必要な評価能力を確保し、評価の視点や判断基準を共有化するために、一定の資格や経験を有した者が、評価サポート機構が行う評価者養成研修を修了することが必要である。

 ・また評価者は、常に評価能力を維持、向上させるために、評価サポート機構のフォローアップ研修を受けることも必要である。

オ 評価者を明確にすること

 ・評価にあたっては、面接調査や訪問調査など実地調査について、できるだけ多角的かつ客観的に行うために、複数の評価者が実際に現地に赴き調査にあたることが望ましい。

 ・また、評価結果を出すにあたっても、実地調査を行った複数の者とは別の評価者の目を加えて合議により決定することが望ましい。その際、評価者は、調査業務経験者、福祉・医療・保健関係者、学識経験者といったさまざまな分野の経験者の組み合わせで行うことが望ましい。

 ・評価結果の責任は、評価機関が負うのは当然であるが、評価機関がサービス提供者に示す評価結果には、評価を決定した評価者の氏名を明記し、評価者を明確にすることが必要である。

○ なお、認証要件については、今後評価事業が実施され、定着していくなかで、実態に即し、必要な場合見直していくことが重要である。

(6)評価サポート機構

 1)評価サポート機構の役割

○ 多くの民間サービスにおいては、市場における競争の中で、民間ベースの情報提供の手段として、評価マーケットが形成される。福祉サービスの分野においても、このような状況が生まれてくることが望ましい。

○ しかしながら、これまで行政による「措置制度」によってサービスの提供が行われていた福祉サービスの分野においては、第三者の評価を受けたり活用するという土壌がない上に、需要と供給のアンバランスが存在しており、何らかのインセンティヴや行政の一定の関与がなければ、自然発生的に評価事業が成立する状況にはない。

○ そのため、評価機関の発掘やそのサポート、評価結果の情報の集約、公表、共通評価項目の設定など、第三者評価システムを普及定着させるための一連の支援・普及策を相互に連携させて実施することが必要であり、そのための組織が、第三者性、客観性、公平性を有した中立的機構としての評価サポート機構である。

○ 評価サポート機構は、これまでの東京都におけるサービス評価の検討や試行調査結果、また様々な組織、団体で行われている評価手法や項目を集約し、マニュアル化してわかりやすく提示することや、評価機関が行う評価の信頼性を確保するために、一定レベルの評価能力を有する評価(調査)者を育成するための評価者研修を実施する。

○  これらのサポートにより、評価に必要な基本的知識、技術の修得が容易になるため、新たに評価に取り組もうとする評価機関も参入しやすくなる。

○  評価がほとんど行われていない福祉サービスの分野において、評価サポート機構の役割は非常に大きい。評価システムを定着させるためには、評価情報の公開性、第三者性の確保、恣意性の排除、評価市場の開放性などに常に留意する必要がある。また、評価そのものもまた常に評価され、評価の視点、評価の手法、項目を点検するとともに、見直しと改善を行っていくことが望ましい。

○ 評価サポート機構の具体的な役割は次のとおりである。

ア 評価機関の認証にかかわること

 ・評価機関の認証、更新、認証取消
 ・認証基準改訂
 ・認証評価機関についての情報の収集、公表 など

イ 評価機関への支援にかかわること

 ・評価者養成研修、フォローアップ研修の実施
 ・評価情報、評価ノウハウの提供 など

ウ 評価結果情報の集約、情報提供にかかわること

 ・評価結果情報の集約、公表
 ・情報提供方法の検討
 ・評価結果情報に対する苦情情報の集約 など

エ 共通評価項目の策定、改訂にかかわること

 ・各サービスの共通評価項目の策定
 ・既に策定された共通評価項目の改訂 など

オ 評価に関する情報収集、調査研究にかかわること

 2)評価サポート機構の業務と構成

○ 評価サポート機構が、中立的機構として、上記の業務を公正に行うためには、次のような外部委員から成る組織を設けることが必要である。

<認証・公表委員会>
・評価機関の認証、更新、認証取消や認証基準の改訂及び評価結果情報等の提供に関する事項について、審議を行う。
・学識経験者(福祉、情報、法律等)、利用者代表を中心として構成する。

<評価・研究委員会>
・共通評価項目の改訂、新規策定に関すること、評価者研修の内容に関すること、評価に関する調査研究に関することについて、審議を行う。
・学識経験者(福祉、経営等)、利用者代表、評価機関代表を中心として構成する。

○  評価サポート機構は、上記の2つの委員会や事務局において、定期的に評価システム全体の検証を行い、評価手法や項目を常に見直すとともに、評価機関のニーズを把握し、そのサポートを行うために、評価サポート機構と評価機関の連絡会を設置するなど評価機関と適宜情報交換することも必要である。

○  さらに、中立的機構としての性格を踏まえながら、評価システム全体が円滑に機能するために、専門的な知識を有する人材を活用するなど、弾力的な組織運営をすることが望ましい。また、評価サポート機構の事務局も、福祉サービスの評価、評価システムの定着に熱意をもって、運営する必要がある。