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I はじめに

II 福祉サービス提供主体の使命と経営
 1 提供主体に求められる使命
 2 提供主体における経営

III 福祉サービス提供主体の経営改革
 1 経営改革のあり方
 2 経営改革のプロセス
 3 経営改革の具体的手法

IV 社会福祉法人における経営改革
 1 経営改革の必要性
 2 自己改革の実例
 3 経営改革に対する都の支援

V おわりに

 社会福祉法人の自己改革の実例【資料編】
 設置要綱等


II 福祉サービス提供主体の使命と経営

1 提供主体に求められる使命

★福祉ニーズの変化と提供主体の多元化

○「中間提言」でも述べたように、戦後の福祉サービスは、行政が給付決定から提供まで広範囲にわたってコントロールするしくみである措置制度(行政が、サービスの利用にあたって、サービスの実施の要否、サービスの内容、提供主体等を決定して、行政処分という形で要援護者にサービスを提供し、サービス提供者には、行政がその費用を公費で支払うしくみ)の下で、長い間提供されてきた。

○その対象者は、限られた恵まれない人(社会的弱者)であり、提供主体は、行政と、「公の支配」、「公の監督」の下で公的助成を受けられる法人として設けられた社会福祉法人が中心であった。

○戦後の福祉行政においては、この措置制度の下で、限りある資源を、行政と行政からの委託を受けた社会福祉法人に優先的に集中投入し、公立と社会福祉法人立による社会福祉施設を充実させることに重点が置かれた。その結果、短期間のうちにサービスの種類、内容、量の充実が図られ、社会福祉法人は、その中核として、大きな役割を果たしてきた。

○しかし、都市化、少子・高齢化、家庭機能の変化など、その後の社会経済の成熟化に伴い、都民ニーズは多様化・高度化し、福祉サービスに対するニーズが質・量ともに大きく変化する中で、福祉サービスは、「限られた人のための給付」から「普遍的なサービス」へと大きく変化した。

○たとえば、夫婦や個人を基礎単位とした都市型の家族形態の台頭は、働きながら子どもを育てることを一般的なものへ変化させた。また、高齢化社会の進展に伴って、介護の問題も、特定の世帯の課題ではなく、誰もが直面する国民全体の共通の課題となった。

○このような福祉ニーズの変化により、供給サイドの側も、より高度で多様な福祉ニーズに対応することが求められることになった。

○その一つは、要援護者の保護・育成等のための従来の施設中心の福祉から、できる限り在宅生活を送り続けることができるようにするための在宅福祉サービスの充実への転換である。もう一つは、多様なニーズに応じたサービスを提供するためのしくみづくり、すなわち、画一的・標準的なサービスを提供する行政を主体とした供給体制からNPOや民間企業を含むサービス提供主体の多元化への転換である。

○こうした福祉ニーズの普遍化・一般化と提供主体の多元化の流れの中で、平成12年に、介護保険制度が導入され、社会福祉法が施行された。

○社会福祉法では、「福祉サービスの利用者の利益の保護及び地域における社会福祉の推進を図ること」が法の目的に付け加えられた。また、介護保険制度により、高齢者の方を対象にした多くのサービスの提供のしくみが「措置制度」から「契約制度」へと転換し、利用者がいわゆる消費者として、自己決定の下に利用・選択するしくみに変わった。

○これらの制度改革は、二つの意味を持っている。その一つは、「措置制度」の下で、行政の権限によって社会的弱者を保護・救済するという旧来のしくみから、社会全体で支える連帯のしくみの下で、利用者の主体的選択と自己決定に基づきサービスを受けるという利用者本位の制度への転換である。このことは、サービス提供者と利用者の対等な関係を築き、市民社会の一般的なルールに福祉サービスの利用のしくみを転換させるということを意味している。

○もう一つは、行政と、福祉サービス提供主体の中核を担ってきた社会福祉法人の立場の変化である。

○介護保険制度における措置制度から契約制度への転換は、行政にとっては、サービスを直接提供するという立場から、利用者が安心してサービスを利用できるしくみづくりに責任を持つという立場への転換を意味している。また、社会福祉法人にとっては、措置制度の下に行政の委託を受け、行政に代わってサービスを提供するというこれまでの立場から、自立した事業者の立場への転換を意味している。

○これらの変化により、既に、介護保険制度における在宅サービスでは、事業者についての参入の規制の緩和が進み、特に東京をはじめとした都市部において、多くのNPO法人や民間企業等が参入している。

○このように、福祉サービス提供主体は、自立した事業者として、今まで以上に、より高度で多様化する福祉ニーズに対応することが求められ、利用者から選ばれてこそ、サービス提供が可能になるという「競い合い」の世界に置かれることとなったのである。

★ 提供主体の使命

○現在、福祉サービスは、行政や社会福祉法人が主体となって行うサービス、市場をベースとして供給されるサービス、NPOやボランティアなど地域の力や特性によって着目して提供されるサービスなど、介護保険の分野に限らず、多様な形でさまざまな提供主体によって提供されている。

○利用者本位の新しい福祉の実現に向けた取り組みにおいては、今後一層、福祉サービス分野における、さまざまな規制を緩和し、福祉サービス提供主体の多元化を図ることで、多様な事業者によるサービスのレベルアップに向けた「競い合い」を実現することが必要である。

○これらの多様な福祉サービス提供主体に共通して求められていることは、利用者の真のニーズを把握し、多様なニーズに応えるサービスを提供するとともに、サービスの質の向上に取り組んでいくことである。そのためには、事業体として、自ら提供するサービスの質を客観的に把握しながら、自ら持つ資源を最大限に活用していく努力が必要である。

○もちろん、福祉サービスは、高齢者、障害者、子どもなど、その対象によって利用者の特性は多様であり、提供するサービスの内容や特性も異なっている。また、福祉サービスを提供するしくみも、介護保険制度におけるサービスのように、「市場」で利用者がサービスを選択し、利用者と事業者が契約を結ぶものだけではなく、従前と同様に措置制度に基づくものもある。

○このように福祉サービスは、その特性や提供のしくみが分野別に異なっているが、提供主体に共通しているのは、定められたサービス価格、限られた財源のもとで、いかに質の高いサービスを提供するかという点である。

○言い換えれば、福祉サービス提供主体の使命とは、質の高いサービス、利用者満足度(CS)の高いサービスを、より効果的・効率的に提供することに他ならない。

○この使命は、社会福祉法人、民間企業、NPOなど組織形態や、高齢、障害、保育など福祉サービスの分野にかかわらず、また、介護保険のように契約に基づき利用する分野でも、措置制度が存続する分野であろうと、サービスの質の向上を図るという点で、福祉サービス提供主体に共通しているものである。

○サービス提供主体は、こうした使命の下に、利用者と向き合い、時代の流れを敏感に感じる感性と想像力を持って、多様なニーズに応えるサービス、時代を先んじるサービスへの向上努力を行うことが必要である。

○そのために、経営という視点から、提供主体自らの体質を強化し戦略を組み立て、職場に働く職員の満足度(ES)の高い組織をつくっていくことに、日々取り組んでいくことが求められる。こうした取組が福祉サービス提供主体の経営改革である。

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