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I はじめに

II 福祉サービス提供主体の使命と経営
 1 提供主体に求められる使命
 2 提供主体における経営

III 福祉サービス提供主体の経営改革
 1 経営改革のあり方
 2 経営改革のプロセス
 3 経営改革の具体的手法

IV 社会福祉法人における経営改革
 1 経営改革の必要性
 2 自己改革の実例
 3 経営改革に対する都の支援

V おわりに

 社会福祉法人の自己改革の実例【資料編】
 設置要綱等


IV 社会福祉法人における経営改革

1 経営改革の必要性

★現状と課題

○社会福祉法人は、戦後の混乱期から現在まで、福祉サービス提供主体の中核として、大きな役割を果たし、福祉サービスの向上に向けてさまざまな努力を行ってきた。

○一方で、これまでの措置制度の下では、社会福祉法人に行政がさまざまな点で制約を設けることで、結果的に法人の創意工夫意欲を阻害したことも事実である。

○措置制度では、補助金や措置費を財源とする場合、原則的に弾力運用が許されず、目的を限定して使うべきものとされ、費用を使い切ることがよい運営をしていることのように判断されていた。そこには、「経営」という考え方はなかったといってよい。

○同時に、法人においても、措置委託費が定員など外形的な基準を元に算定され、サービスの内容や質とは関係がないため、事業の創造的、革新的経営や事業の拡大に向けての努力に不十分さがあったことも確かであろう。

○このような行政の指導と保護の下で、結果として社会福祉法人の運営は、サービスの効率化や質の向上へのインセンティブが働かず、利用者のニーズに向き合うのではなく、行政の顔を見たサービス提供になりやすいなど、その非効率性、閉鎖性の問題が指摘されるようになってきた。

○また、社会福祉法人は、措置制度の下で半ば自動的に利用者の確保と措置費が保証され、継続性・安定性が保証されてきた結果、自主的な経営改革の取組へのモチベーションについて法人間の格差が大きく、また危機感も乏しいと言われている。

○さらに、「運営あって経営なし」と言われることもあるように、事業体の経営という観点からのノウハウについて、十分でない法人が多くみられるのも事実である。同時に、法人におけるサービス提供のノウハウの蓄積も、ベテラン職員など個人に頼っている場合が多く、組織的にノウハウを引き継いでいくという取組が不十分な面も見られる。

○「中間提言」で述べたように、平成13年度から東京都が行っている、社会福祉法人経営改革モデル事業、特別養護老人ホーム経営支援事業における経営コンサルタントによる経営診断結果等をみると、サービス、組織・職員、財務・コストの観点から、社会福祉法人が抱える経営の現状と課題が明らかになっている。

○具体的にみると、サービスの観点からは、「利用者の満足度や要望・苦情の把握が不十分で、サービス改善のための情報として活用できていない」、「マニュアルを作成活用するなど、サービス水準の確保・向上の努力が弱い」などの課題がある。

○また、組織・職員の観点からは、「サービスの知識・技術に関する職員教育が十分実施されていない」、「職員が発揮した能力や成果について適切な評価がなされておらず、昇進や昇格、報酬にも反映されていない」などの課題がある。

○さらに、財務・コストの観点からは、「目標達成ための適正かつ効率的な人員配置がなされていない」、「コスト改善への取組が不十分である」などの課題がある。

○このような課題に対応するため、自らの社会的使命・経営理念を改めて確認するとともに、サービス、組織運営、財務・コストの観点から、法人組織内部の経営体制を整備し、経営基盤を確立していくことが、社会福祉法人に求められている経営である。

○既に述べたように、福祉サービス提供主体の使命は、質の高いサービス、利用者満足度(CS)の高いサービスを、より効果的・効率的に提供することである。そのため、社会福祉法人も、利用者のニーズを把握しながら、多様なニーズに応えるサービスを提供するとともに、サービスの質の向上に取り組んでいくことが、求められている。

○これまでの福祉サービスが行政や施設といった提供側、供給側の判断に基づき実施され、利用者ではなく提供側の論理や事業が優先されていたとすれば、これからは、利用者の期待に応え、よりよいサービスをいかに提供するか、また、そのための体制をどのように作り上げていくかという課題に取り組む必要がある。それが経営であり、そうした課題を解決していく過程が経営改革である。

○ただ、その際、経営の目的や意味を混同しないようにしなければならない。「経営とは、金儲け、営利を追及することである」と考えてしまうと、社会福祉法人の非営利性、あるいは福祉サービスそのものと、経営という考え方が相反する関係になってしまう。

○福祉サービス提供主体における経営とは、理念なしに利潤を追求することではなく、理念を追求するために必要な財源を確保しながら、福祉ニーズの普遍化、提供主体の多元化の中で、質の高いサービスを効率的・効果的に提供する体制をつくっていくことである。

○従来のように経営という観点がないままに、今ある財源を使い切るような経理内容では事業体は破綻してしまうのであり、限りある人材、資金等をできるだけ有効に活用しながら理念を実現するために、今、社会福祉法人における経営改革が求められているのである。

★ これからの社会福祉法人のあり方

○措置から契約へと戦後の社会福祉制度のしくみが大きく変化する中で、福祉サービス提供主体、特にこれまでその中核を担ってきた社会福祉法人は、行政サービスの受託者の立場から利用者と直接向き合う一事業者の立場へと転換してきている。

○社会福祉法人には、長年の実績から、サービス提供の拠点を有しているだけでなく、サービス提供のノウハウの一定の蓄積があるという点での優位性を有している。また、経営者から職員に至るまで、高い使命感を持っていることも社会福祉法人の特性の一つである。

○さらに、社会福祉法人は、これまでわが国の福祉サービス提供主体のなかで中核的な役割を果たしてきた実績があるとともに、制度的にも国民の信頼を得る基盤をもっている。

○例えば、法人の設立や運営基準に対する要件は、社会福祉法人の公益性の担保となっている。情報開示や契約に対する透明性を確保することが法律に明記されているとともに、社会福祉法人の経営から生じる剰余金は法人外に流出せず、法人の解散時も他の社会福祉法人か国庫に帰属することとなっており、個人に帰属することはない。

○こうした非営利性により、社会福祉法人や社会福祉事業に対する善意の寄付や、ボランティア活動への参加など国民の信頼に基づく協力を得ることができた。

○これからの社会福祉法人に求められるのは、その弱点や課題を克服する一方で、自らの強みをいかに経営のなかで生かしていくかを考えることである。

○すなわち、社会福祉法人は、本来の使命である社会福祉事業の実施主体として、最大限効率的・効果的な経営に努めるとともに、民間の非営利組織として、課税免除など様々な優遇措置が設けられていることを踏まえ、新たな福祉ニーズに対応した先駆的独創的な福祉サービスへの取組、地域の中の拠点施設としての地域への貢献、在宅を支えるサポート体制の整備などの取組によって、社会や地域に貢献することが求められているのである。

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