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I はじめに

II 福祉サービス提供主体の使命と経営
 1 提供主体に求められる使命
 2 提供主体における経営

III 福祉サービス提供主体の経営改革
 1 経営改革のあり方
 2 経営改革のプロセス
 3 経営改革の具体的手法

IV 社会福祉法人における経営改革
 1 経営改革の必要性
 2 自己改革の実例
 3 経営改革に対する都の支援

V おわりに

 社会福祉法人の自己改革の実例【資料編】
 設置要綱等


IV 社会福祉法人における経営改革

【8】H法人(特別養護老人ホーム)の取組

人事考課と仕事給の導入による職員のモラールアップ

1 なぜ、人事考課と仕事給を導入したのか

  • H法人は、介護保険制度の導入によって、社会福祉法人を取り巻く環境が大きく変わる中で、これまでのように行政が特別に保護してくれていた措置時代とは異なり、自主的に利用者へのサービス向上を図り、法人経営の面からも自立するということが求められると考えた。
  • 介護サービスはマンパワー中心であり、サービス向上のためには、職員のモラールアップ、能力・技術の向上が必要であるとともに、法人・施設の経営面からいえば人件費比率をいかに管理していくのかが重要である。
  • 措置時代のように、自動的に年々積み上がっていく給与体系(以前は、給与公私格差是正事業給料表を使用)のままでは、将来、職員の雇用すら立ち行かなくなるとの危機意識があり、人事考課と仕事給を導入し、仕事の実績を重視した透明性と納得性のある給与制度(仕事等級制度)へ転換した。

2 「仕事等級制度」のしくみ

  • 「仕事等級制度」は、法人・施設が期待する職員一人ひとりの仕事の内容・役割を具体的に職種別・資格別に整理(等級基準)して職員に提示し、その達成度や貢献度に応じた賃金・人事処遇をする制度である。
  • その目的は、賃金の公正な配分や適材適所を実現し、仕事に対する職員の意識改革を行動改革に結び付けて、生産性の向上を目指すものである。
  • そのため、給料表を、年齢や経験に基づいて決定される「本人給」と、等級基準に対する成果・実績に基づいて決定される「仕事給」に再構成した。

3 仕事給への人事考課の反映

  • 仕事給は、職員が格付けされた等級基準における、人事考課結果をもとに決定され、毎年、支給額が増減する。また、査定幅(額)は、上位の職位ほど大きく設定されている。

    ※給料 本人給(年齢給)⇒年齢・経験に応じて決定
    仕事給⇒仕事の成果・実績(人事考課)に応じて決定

《人事考課結果の仕事給への反映》

 【仕事等級基準書に基づく評価】

  • 職種別に作成されている「仕事等級基準書」に基づき5段階評価(SからD)

【仕事給の額の決定】

  • 複数賃率表により決定
(複数賃率表の例)
  S評価 A評価 B評価 C評価 D評価
1等級 △□ 円 □□ 円 △△ 円 ○○ 円 ×× 円
2等級
3等級
4等級
5等級
6等級
※・この表では、1等級の場合、S評価 △□円、D評価 ××円
 ・人事考課の結果(5段階)が、翌年度の仕事給に反映される。
 ・人事考課の結果が蓄積しないため、その年の評価が悪くても、翌年には挽回可能

4 「仕事等級制度」への移行と職員への説明


【9】I法人(特別養護老人ホーム)の取組

非常勤職員の活用によるサービスの質の向上

1 なぜ、非常勤職員の活用を図ったか

  • I法人は、定員が小規模で、多層階(4フロア)の施設であり、職員配置については、不利な条件がそろっていた。
  • そこで、この多層階をユニット化することで、「ユニット型ケア」(個別ケア)の実現を目標とすることとし、当施設のメリットを出すことを考えた。
  • そのために、職員の配置体制を新たに見直す必要性が生じた。また、介護保険制度の導入に伴い、職員配置基準が緩和され、非常勤職員の活用の途が拡がった。
  • 「ユニット型ケア」(個別ケア)の推進によるサービスの向上と限られた人件費財源の効率的執行という課題を両立する手段として、非常勤職員の有効活用に取り組むこととした。

2 非常勤職員導入にあたっての基本的考え方

  • 利用者サービスにとって、プラスになるものでなければならない。
  • 対人援助サービスは、特定の専門職だけで十分な効果を得られるものではなく、様々な分野・立場・レベルの人々が重層的にかかわるサービス提供構造が有効である。
  • 地域に潜在している多様な福祉マンパワーと出会い、多くの地域住民に施設運営に参加してもらうことが「地域社会に開かれた施設」につながる。そうした地域の就労ニーズに応えることも施設の重要な役割である。
  • 職員間では、雇用形態、勤務条件、職種など多様な働き方があるが、契約し、引き受けた業務について有する責任は対等である。

3 新たな職員配置体制の創出と非常勤職員の導入効果

 (1)職員の配置体制の見直しと新たな職員配置体制の創出

  • 現状の職員配置及び業務内容を分析し、本来必要と考えられる人員数を時間単位、フロア単位で検討した。検討の結果、食事の準備、起床、入浴等の人手が特に必要な時間帯に非常勤職員を含め、より多くの職員の配置を行うこととした。

 (2)新たな職員配置体制の効果

  • 新たな職員配置によって、具体的に以下のような効果があった。
    2F(比較的自立度の高い利用者)⇒起床及び就寝時間帯、朝食及び夕食時に職員を配置できるようになり、職員が常駐していないことへの利用者からの不満に少しでもこたえられるようになった。
    3F(痴呆症のある利用者)⇒職員が1人体制になる日中から夜の時間帯にかけて、常時複数の職員を配置できるようになったことで、見守り体制が厚くなり事故予防につながった。
    4F(身体介護、医療的ケアが必要な重度利用者)⇒日中1人体制の時間帯が生じていたのが、常時複数配置になった。人員にゆとりが出た分、重度利用者の居室でのベッドサイドケアにかかわれるようになった。
    5F(一部介助が必要な利用者)⇒朝7時から夜19時30分まで複数配置になり、2Fとのかけもちを解消でき、余暇活動も手がけられるようになってきた。

  • 各階には、非常勤職員がその階限定(フロア限定)で入るため、継続的なケアが行いやすく、落ち着いた雰囲気になった。利用者にとっても、いつでも職員の姿がみえることで安心感が出た。
  • 入浴や夜勤限定の非常勤の存在により、その分、常勤職員が個別ケアにかかわることのできる時間が増えた。
《常勤職員と非常勤職員の割合の変化》
  1999年6月 2001年6月
常勤職員 22人 17人
非常勤職員 8人 18人
非常勤短時間職員 0人 7人
(非常勤職員常勤換算) 5.6人 13.6人
合計 27.6人 30.6人

4 非常勤職員の訓練(教育)

  • 利用者サービスの質を確保する観点から、非常勤職員を導入するにあたっては、いかに非常勤職員を教育していくかという点を重視した。

《非常勤職員の教育プロセスと留意点》

【採用段階】⇒採用者の情報を把握

  • 訓練・教育を効果的・効率的に行うために、採用者の介護資格・介護経験の有無、本人の意向などを十分把握しておく。

【教育プラン】⇒教育プランの作成

  • 採用時に把握した本人情報を基に、採用者一人ひとりについて、いつ何を教えるかという教育計画(期間)の策定(各人のキャリアや就労目的に向けた教育プランの策定)し、教育担当職員(トレーナー)を決定する。
  • 職員は、ローテーション勤務であり、トレーナーだけで実際の教育を行うのは困難であるため、トレーナー以外の職員も含めたチームを編成して、実際の教育を行うこととしている。

【教育の実践】⇒フロア限定で教育することが基本

  • 一度に多くのことを覚えるのは困難であるため、最初は、一つのフロアに限定して利用者の個別ケアを覚えてもらう。

【フロア限定の非常勤として自立】⇒能力に応じて、他のフロア、他の時間帯も経験することで、夜勤対応も可能となる。

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