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社会福祉法人○○会の基本理念について  ・社会福祉法人○○会が期待する職員の姿
社会福祉法人○○会 職員行動規範

資料 【1】A法人(知的障害者通所授産施設)の取組

社会福祉法人○○会の基本理念について

社会福祉法人○○会の理念は、
私たちは知的障害を持つ方たちが、地域社会で幸せに暮らすことをめざします
です。

1.知的障害の障害特性が福祉の本質を示す

 情報を理解する能力、判断する能力に障害があるため、本人の幸せをまわりの人が考えなければならないことが知的障害者への援助の特徴です。本人の判断や医療などの専門機関の判断に基づいて援助を行なうのでは、本人の幸せを実現することが出来ません。関わる者自身での判断と責任が求められることになります。
 相手にとっての幸せを考え、行動し、その考えや行動が適したものであったかどうか判断し、責任を持つことになります。
 これは、福祉の本質を示すものです。福祉は相手の幸せを目標とするのであって自分の幸せを第1目標とするのではありません。そして行動が伴なうものです。また、自分が判断し行動した結果は、相手にとってどうであったのかを基準に評価が決まります。決して自己満足が基準であってはならないものです。さらに、無責任な関わり方であってよいのではありません。
 このように知的障害という障害特性のゆえに知的障害者を対象とする福祉活動は、福祉の本質を踏まえたものとなります。

2.活動の対象を知的障害に限定するものではない

 知的障害という言葉は日本独特のものです。国際的には精神遅滞(Mental Retardation)という言葉が使われています。

(中略)

 ○○会は自己判断が困難な方たちへの福祉活動を中軸にすることで、福祉の本質を踏まえた質の高いサービスを提供することに意義を見出しています。したがって、知的障害の定義が変更されるにともなって活動対象が変更されなければならないと考える必要はありません。さらに、基本理念は○○会の活動対象を知的障害に限定することを意味しているのでもありません。
 現状は知的障害者を対象とした活動しか行なっていませんが、そもそも知的障害は精神障害に包括されるものですから精神障害とは関係しています。また、
様々なライフステージにある利用者を対象とすることで児童福祉、高齢者福祉との関係もでてきます。このような関係の広がりを基本理念が限定することはありませんし、児童や高齢者、そして精神障害者を対象とした福祉事業を行なわないとしているのでもありません。

 また、この解釈は、むやみに事業を拡大するといっているのでもありません。経営戦略を立てて理念の遂行を目指すことになります。

3.知的障害者本人の幸せを実現することが目的

 職員や保護者の幸せが本人の幸せよりも優先されることはありません。知的障害者本人のために行動しているつもりで、自分自身のやりたいことを実現しようとしている人達がいます。当事者の幸せの実現よりも障害者運動をしたくて福祉に携わる職員もいます。問題があると自己防衛する事を優先して当事者の抱える問題の解決を先送りする職員もたくさんいます。当人への援助を理由に家族がエゴを出す場合もあります。しかし、これらのことは程度の差はあれ、誰の心にもあることです。自らを厳しく見つめ、決して自己満足せずに自己変革を目指す姿勢がこの仕事を担う資格となります。

4.知的障害者の幸せとは何かを考え、サービスを向上させ続ける

(1)ノーマリゼーションとの関係
 ニィリエは、「ノーマリゼーションの原理は、諸君が知的あるいはその他の損傷あるいは障害のある全ての人々に、彼らのコミュニティの生活の状況や仕方に可能な限り近いあるいは実にそれと同じ生活のパターンと日常生活の条件を使えるようにする時にまさに行っていることを意味する」とノーマリゼーションを定義しました。そのニィリエによる「ノーマライゼーションの8つの原則」は次のようになっています。

(中略)

 多くの社会福祉施設や団体はノーマリゼーションの理念を掲げています。ハンディキャップを持つ方たちが普通の生活を味わえるようにする事業を考えるとノーマリゼーションは、事業理念として適しています。しかし、本人の幸せを目指す○○会の理念には適しません。

(2)本人の幸せをどのように考えていけばよいのか
 基本的には本人の幸せは本人が幸せに感じるかどうかで決まるものです。
 本人が考えている理想の幸せが、現実の自分の置かれている状況や現実の自分とかけ離れていればいるほど、「不幸」ということになります。逆に、理想の自分と現実の自分が近くなるほど幸せも大きくなります。特に、本人にとって大切な事柄について理想と現実のギャップがせばまる事、そして本人の持っている能力を最大限、発揮した結果であることがより幸せを大きくすることになります。この事は曖昧であった「幸せ」という目標の実現にむけて、心理学的見地からの具体的な視点と方法を示すことになります。
 しかし、本人が本当に幸せと感じているかどうかはすぐにわからない場合があります。また、先々の見とおしが持てる範囲が狭いため、本人が選択したことでも少し時間がたつと本人自身が苦しむ結果になる場合もあります。このような状況においては、本人以外の誰かが、本人の立場にたって本人の幸せを考えて行動を起こし、そのことが適切であったか、不適切であったかを判断していく必要があります。判断する人が1人では、本人の生活範囲を網羅するのは困難であり、情報不足となります。また、判断に偏りも生じると思います。したがって、本人の生活状況を把握できる複数の人達の合議によって判断するのが最善策であると思います。

(3)サービスを向上し続ける
 誰もが「今日よりは明日をよくしたい」と考えています。しかし、知的障害を持つ方の中には自分で「よりよい暮らし」を考える事が困難な方がいます。また、本人が考えたとしても認知能力や判断能力の弱さから必ずしも本人の暮らしがよりよくなるとは限りません。ですから、本人に関わる誰かが「今日よりは明日をよりよくするには・・・」と考え行動を起こして行く必要があります。つまり、私達は絶え間なくサービスの向上を目指すことになります。

5.知的障害者がより豊かな文化を享受して幸せとなることを目指す

 基本理念には「地域社会で幸せに暮らすこと」という表現があります。この事は入所施設を完全拒否するものではありません。入所施設を利用する事が適した状態の知的障害者もいます。そして、無人島でもない限り完全に地域社会から隔絶された状況は考えにくいです。遠く離れた入所施設であっても何らかの形で地域社会との関係を持ちます。
 この表現で問題としているのは、「地域」か「入所施設」かという暮らしのスタイルではなく、「どういう方向性を持つのか」です。○○会は、より豊かな文化の中で暮らすことをめざします。本人の状態に適したサービスを提供するところからスタートしますが、本人が安定すればよしとするのではなく、より豊かな文化を享受できる状況を作り、導きます。
 ただし、3つ目の項目で示したように豊かな文化を提供することで満足してはならず、文化を提供した結果が本人の幸せに貢献する限りにおいて言うことになります。


社会福祉法人○○会が期待する職員の姿

平成14年  月  日

社会福祉法人○○会の基本理念を実現していく上で、職員にもとめる姿勢が次の3点である。

1 責任をはたす

 責任をはたすことは期待に応えることである。責任を放棄することは、期待を裏切ることである。期待されないことは、大切な意味を失うことである。

(1)自分に与えられた業務を遂行する。
 すぐに諦めて言い訳、愚痴を言うのではなく、解決方法を考える。解決方法を見出せるように自己研鑽する。

(2)経過、結果を上司に報告する。
 記録の提出期限を守る。
 上司からの与えられた業務については経過と結果を報告する。口頭で説明するのに時間がかかるもの、記録として残した方がよいものは文章で行う。

例:休みをとる場合
 「有給休暇等届」を提出(極力事前に提出する)した後も、休暇がのびる場合には経過を上司に報告する。代行体制を作る必要があるので、休暇の見通しを示すことが、責任を果たすことになる。
 突然休暇を申し出る場合には、自分が休むことで生じる問題を解決するためには、どうしたらよいかを上司に伝達する。

(3)組織全体における責任を考えること
 自分の与えられた業務が組織全体の中でどのような意味をもっているのかを考えること。

2 効率のよい仕事

(1)経営資源を無駄にしない。資金、労力、時間、情報
例:会議においては、課題にそった発言を簡潔に行なう(資金、労力、時間)
例:ガイド、マニュアルの活用(資金、労力、時間、情報)

(2)組織の混乱を引き起こさないこと。
 指示系統を守る。
 提出期限を守る。一人の遅れによって全体にマイナスの影響が出る。
 出来なかった事を報告する前に打開策を事前に報告する。

(3)orではなくandの発想
 AかBかのどちらかという発想では効率は向上しない。AとBの両方を達成する工夫が必要。

(4)土俵際で相撲をとらない。土俵の真中で相撲を取る。
 常にゆとりを作り出す仕事の仕方。ゆとりを作り出すことで不測の事態に対応できる状態を維持すると共に、次の課題にむかうことが可能となる。

3 チャレンジする姿勢

(1)基本理念そのものがチャレンジである。
 ○○会の進めてきた事、そしてこれから行なおうとしている事、それ自体がチャレンジであったし、これからのチャレンジである。
 職員が○○会の理念実現よりも自己防衛を優先した発言をすること、行動をとる事は○○会の理念に反することである。

(2)知的障害者の幸せは職員の自己満足ではなくチャレンジから始まる
 自分で自分の幸せを考え、実現していく事が困難なのが知的障害者である。職員が実践に自己満足したときに、知的障害者の幸せはストップする。
 知的障害者を持つ子の親や兄弟でも、当人の55歳の時の暮らしを思い描く事はできない。それは社会システムが未整理、不充分で将来のことを描く材料があまりにも少なく曖昧だからである。そして、いつまでも社会システムは充実していかない。家族は不安を抱えながら誰にも当人の幸せを託せずに家庭機能は低下していく。そして本人の暮らしは家庭機能の低下に伴ない家族との距離が離れた生活に変わっていく。誰も本人の人生を受け止めて真剣に考えてくれる人はいない、自分でも考えられない。これが知的障害者の未来の姿である。職員が自らの仕事に満足したときに知的障害者の幸せはストップし、この未来へ向かって時が流れていく。

(3)チャレンジが自滅を救い、進化をもたらす
 危機は成長のエネルギーである。
 一方、危機において自らの変化・成長から目をそむけたり、他者を批判するとともに他者に期待し依存する姿勢は自滅の道を選ぶことになる。
 MBA(経営管理学修士)達は、どんな組織でも「成功した時が、危ない」といっている。同じ企業の中で2グループを作り互いに競争して自ら危機意識を作り出す企業すらある。武田信玄が「5分勝ってよしとする、7分勝つのでは驕りが生じ、全て勝つのでは次が危うい」という言葉を残したのは、この事を言おうとしているのであろう。
 成功しても決して自己満足しない姿勢が求められる。


社会福祉法人○○会 職員行動規範

【前文】

 知的障害者は長く、社会から差別的な待遇を受け、多くの権利が無視されてきた。この間、本来ならば彼らを支え、待遇の改善を進めるべきはずの施設並びに施設職員のなかには、それを怠るどころか、残念ながら権利を踏みにじるような対応をしてきた事例があることを忘れてはならない。私ども○○会の歴史においても、常に利用者の権利が守られてきたと断言できるか、改めて自戒すべきことである。
 その前提に立ち、私たちは改めて○○会の基本理念「知的障害をもつ方たちが、地域社会で幸せに暮らすことをめざします」の実現を職員一同で共有するとともに、職員として日々の責務、並びに利用者と接するにあたっての指針として本文を行動規範としてあきらかにすることとした。

【基本姿勢】

  1. 利用者の人間としての人格・尊厳を尊重し、その権利擁護に努めなければならない。
  2. 支援者としての立場を自覚し、利用者の主体性、個性を尊重しなければならない。
  3. 日頃から利用者の信頼を受け、かつ模範となるべき態度・行動を心がけなければならない。

【行動規範】

第1章 利用者の人格・尊厳の尊重

  1. 障害の状況、能力、行動、性格、性別、年齢その他のいかなる理由によっても差別してはならない。
  2. 利用者本人の前のみならず、職員間であっても差別的な用語を使用してはならない。
  3. 個々の利用者の年齢にふさわしい接し方を心がけなければならない。
    ・子ども扱いしない。
    ・あだ名や「ちゃん」付けで呼ばない。「〜さん」と呼ぶ。
    ・上記のことは職員間で利用者の話をするときも同様である。
  4. 利用者の話し方や癖などを真似したり、嘲笑してはならない。
  5. 利用者に対して馬鹿にするような態度を取ってはならない。
  6. 利用者を好き嫌いで判断したり、態度や言葉に表してはならない。
  7. 利用者の人格・尊厳を無視した研究・調査を行ってはならない。

第2章 暴力・威圧の禁止

  1. いかなることがあっても利用者に対して体罰をふるってはならない。
  2. 利用者本人並びに周囲に危険が及ばない限り、いかなる身体拘束も行なってはならない。
    ・ 必要と判断された場合であっても、そうしなくて済む方法を常に考えるよう心がけなければならない。
  3. 食事を抜くなど、人間の基本的欲求に関わる罰を与えてはならない。
  4. 利用者に威圧感を与える態度・行動をとってはならない。
    ・ 命令的な口調、必要以上に大きな声、威圧感を与える表情、威圧感を与える態度(腕組み、腰に手を当てる、など)

第3章 守秘義務の厳守

  1. いかなることがあっても、業務上知りえた利用者及び家族の情報を第三者に口外してはならない。

第4章 支援者としての自覚、利用者の主体性の尊重

  1. 常に利用者の訴えを聞き、真剣かつ迅速に対応しなければならない。
    ・ 利用者の立場・気持ちに立って考える
    ・ 利用者を待たせない。すぐに対応できない時でも、利用者が納得したうえで必ずあとから対応する。
  2. 職員個人の名誉や自己表現などのために利用者を利用してはならない。
  3. 職員の主張をみだりに押しつけてはならない。
  4. 職員の都合で利用者を動かしてはならない。
    ・ 職員の都合で食事や移動を急がせること、職員の私的な用事を言いつけること、など。
  5. 利用者を無視するようなことがあってはならない。
  6. 利用者の前で職員だけで私語や私用の会話をしてはならない。
    ・利用者の前で障害特性や支援内容について話すことも控える。

第5章 利用者の信頼を受けかつ模範となるべき態度・行動

 本章は、日頃から率先して利用者に対して模範となるべき態度・行動を心掛けるべきであることを示したものであり、利用者はもちろん、家族、関係者、職員同士など、誰に対しても常に社会人としての意識をもち、下記のことを守らなければならない。

  1. 気持ちよく挨拶する。
  2. 明るく、やさしく、笑顔で接する。
  3. 日頃から、冷静な対応を心掛ける。
  4. 日頃から、安心感と信頼感を与える態度・行動を心掛ける。
  5. 落ち度がある時には、素直に認め、謝罪する。
  6. 言葉遣いに気をつける。
  7. 服装等身だしなみに気をつける
  8. 整理・整頓を心掛ける。

【運用】

  1. 本行動規範は、職員自らが基本的姿勢を向上させていくシステムのひとつとして活用される。
  2. 上記行動規範を違反したもの、並びに目撃したものは、必ず上司に報告しなければならない。
  3. 違反が甚だしい職員、改善が見られない職員に対しては、「就業規則」の「懲戒」の項が適用される。
  4. 本行動規範は常任理事会において管理し、半期に一度、職員の意見を聞いた上で必要に応じて見直しを行う。

平成14年  月  日 策定

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