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第3期東京都児童環境づくり推進協議会「中間報告」

「子どもが輝くまち東京−生きること、
 育てること、働くことに喜びを−」

(概 要)

第1章 基本的な考え方と視点

 1 子どもが輝くまち東京であるために
 2 最重要課題としての職場・雇用環境の整備
 3 社会の子育て責任

第2章 現状と課題

 1 子育てと仕事に関する
   環境整備の状況
 2 東京都の現状

 

第3章 施策の提言

 施策の方向性1
  子育てをしやすい仕組みにかえる
 施策の方向性2
  日常のゆとりある子育て時間を確保する
 施策の方向性3
  親子の絆を強め、
  子どもの成長を見守る期間を確保する
 施策の方向性4
  子育ての楽しみをひろげる
 施策の方向性5
  子育てを応援する気運を高める

第1章 基本的な考え方と視点

1 子どもが輝くまち東京であるために

 少子社会到来を期に、子どもを健やかに生み育てる環境づくりへの関心が高まる中、「子育てと仕事の両立」のための意識変革と施策やサービスの充実は、きわめて重視される施策の柱となった。これを積極的に進めるために欠かすことのできないのが、職場・雇用環境の整備である。このための施策については、行政のみならず、経営者関係団体からもいくつもの提言がなされ、その必要性は言い尽くされたといっても過言ではない。

 しかし、その実施状況をみると、まだ普及している状況にはない。しかも、日本経済の低迷が続く中で、特に女性の雇用環境への配慮が二の次になったり、徐々に風穴が開きつつあった企業の子育て支援への関心と関与が全く後退してしまいがちな現状にある。

  また、この課題の解決については、必ずしも国民、都民、市民の高い関心を得ないままに経過している。たとえ、子育てと仕事の両立への関心が向けられても、母親・妻にとっての両立への関心が主であり、今日一層子育てを担う役割が重視されている父親・夫にとっての両立への指向は、まだ、マイナーな状態にある。とりわけ、「男は仕事、女は家庭」というパラダイムに代表される社会参画や自己実現を可能とするための意識改革は、遅々たる歩みをたどっている。このような状況からみても、「子どもが輝くまち東京」への道のりはまだ険しいものがある。

2 最重要課題としての職場・雇用環境の整備

 しかし、それ故に、本協議会は今ここであらためて、児童環境づくりのための最重要課題として、職場・雇用環境の整備の重要性を指摘し、その実現・充実に向けて積極的に提言する。

 それは第一に、こどもを生み育てることに魅力や喜びを感じることができる社会、子どもたちが生まれ育つことに喜びと充足感を覚えることができる社会を実現していくためには、父親、母親が安心してゆとりをもって子育てにエネルギーを注げる環境が整うことがきわめて重要であり、そのために優先すべき課題として、職場・雇用環境の整備が全く重なるからである。

 第二に、少子高齢社会の到来の中、労働力確保の面から、女性労働力の確保が重要な課題となることが予想されており、男性・夫・父親と女性・妻・母親がともに安心して子どもを生み育てることのできる職場・雇用環境が整うことが、安定した労働力確保の上からも極めて重要な要件となるからである。

 重要なのは、母親にとっての「子育てと仕事の両立」にかたよることなく、父親にとってもそれが両立できるような職場・雇用環境を整えることである。それがなかなか進まなかった背景には、この面での意識改革が、男性のみならず女性にとっても徐々にしか進んでいないことがあげられる。また、それ以上に、この面での職場や経営者の意識改革が進んでいないことをあげることができる。

3 社会の子育て責任

 このような考え方と視点から、以下に、東京都における子育てと仕事の両立の現状と課題並びに提言を述べていく。ここに示す提言は、東京に所在する企業、事業所等の職場の経営者・被雇用者、東京都、区市町村の行政関係者、すべての都民の方々にお読みいただきたい。

 21世紀を展望した雇用環境の整備は、職場や雇用環境にとって、様々なメリットをもたらすといえる。現今の厳しい経営環境の中で、これらの体制を整備し、促進することが何らかのメリットをもたらすかどうか、近視眼的に見た場合には把握しにくいかもしれない。しかし、即座のメリットがない遅々として進まないという状況が続くならば、それはやはり根本的に職場・経営者の意識を問わざるを得ないのではないか。

 将来の貴重な労働力であり、すべての人が直面する老後の生活や、年金、介護等々を支えるきわめて重要な人々が子どもたちであり、これから生まれ育つ人たちであるということを銘記するならば、子育てや介護などの家族の責任と、それをしっかりと支えて行く社会の責任とが、車の両輪となって果たされていくことが、これから一層重要となることを同時に深く銘記する必要がある。

 このことは、職場・経営者に限らず、国民、都民、市民の意識、男性の意識そして女性の意識を問うことと結びついている。職場や経営者が、そしてすべての人々が子育てに関わる家庭と社会のパートナーシップが求められている現状を深く認識し、子育て家庭への支援という社会的責任をともに担う意識改革が真に求められている。

第2章 現状と課題

1 子育てと仕事に関する環境整備の状況     

 ILO156号条約「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約」の批准(平成7年)、育児休業法の制定(平成4年、平成7年から育児・介護休業法に改正)、育児休業中の社会保険料の従業員負担分の免除や、休業中に休業前賃金の20%、職場復帰後に休業前賃金の5%が雇用保険から支給されるようになる(平成7年)など、仕事を辞めずに、休業という形で育児に専念できる環境が整備されてきている。

 保育所の整備も進められ、平成10年には児童福祉法が改正され、それまで措置制度として位置づけられてきた保育制度は、利用者が選択できる制度に変更され、利用者にとって保育所選択の幅が広がるなどの対応も進んでいる。

2 東京都の現状     

(1)働く人の子育て環境     

1)子育てと仕事の両立の状況 合計特殊出生率が1.05と全国平均の1.39を大きく下回っている背景としていろいろ考えられるが、都の場合、「子育てと仕事の両立が難しい」と考える人が多いようだ。女性労働の特徴として、若年の労働力率が高いために、全体としての労働力率は高くなっている(平成7 年、都50.4%、全国49.1%)ものの、結婚や出産を経験した人が多くなる中年層以上ではむしろ労働力率は低いといえる。子育てと仕事を両立させながら働いている女性は全国と比べて多いとはいえない。

2)働く人の子育て環境

 「三世代世帯」が4.5 %と全国の11.2%に比べて低く、子育ての責任が親、特に母親に集中しがちなことが予想される。また、子育ての悩みや不安の相談相手として一番多い「身内」が周りに少ない都会では、悩みを心おきなく相談できるようなネットワークが少ないことも考えられる。さらに、他の都市部に比べて長い通勤時間の割合が多くなっている。(京浜葉地域の男性雇用者の通勤時間──60〜90分未満が24.2%、90〜120 分未満が8.1 %、120 分以上が1.1 %)その反面、派遣等働き方のバリエーションがみられるなど、両立のためのメリットもある。

3)家庭内での役割分担


 子育てに男性=父親が主体的に関わるのは非常に少ない状況である。(6歳未満の子どものいる世帯の夫婦のデータ:夫が育児に費やす時間は平日で10分、日曜日でも38分)この背景として、一つには、長い通勤時間を含む仕事関連の時間が長時間になっていることが影響していると考えられる。女性の月間労働時間は143.0 時間、男性は163.1 時間。女性に配偶者の帰宅時間をたずねた調査では午後8時までに帰宅する割合は28.9%に過ぎない。子育ての責任が母親に集中しているような家庭の状況が、仕事と家庭の両立を女性の問題に矮小化してしまう原因ともなっている。

(2)子育てと仕事に関する意識     

1)女性の働き方について
 女性の20代、30代、40代では、「就業継続型」を支持する割合が最も高い。男性は女性に比べると「就業継続型」の支持率が低く、若い世代でも「中断再就職型」を支持する傾向が強い。また、夫は妻が働くことについて「条件つきで賛成」とする割合が70.5%、その条件は「家事や子育てに支障がなければ」が74.3%となっており、自分自身の家庭においては、妻に家庭優先の姿勢を求める男性が多い。

2)子育ての責任について

 子育ては母親の仕事という意識は男女ともに根強い。女性の6割、男性の7割が「子育てはやっぱり母親でなくては」という意見について、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えている。一方、女性で現在働いていない人のうち、今後働きたいと思っている人が3人に2人。働いていない理由としては、「育児のため」が最も多い。

3)子育てと仕事の両立の負担感について

 「かなり感じている」「やや感じている」女性が約6割に対して、男性は22.5%。困っていることとして、「子どもが病気のときでも仕事を休みづらい」「子どもと接する時間が少ない」「学校・保育園などの行事に出席できない」等があげられているが、問題として指摘するのは圧倒的に女性のほうが多く、男性の41.2%は困っていることは「特にない」と答えている。(女性は11.2%)


4)職場における両立支援制度について


 育児休業制度を「利用しにくい」と感じている人が、女性で36.4%、男性で48.1%。理由として、男性は「利用しにくい雰囲気」(31.5%)、「自分の仕事が忙しい」(29.3%)女性は、「利用しにくい雰囲気」(22.7%)、「同僚に迷惑が及ぶ」(20.5%)と職場への気兼ねがみられる。


5)子育てと仕事の両立のために望むこと


 女性が就労を継続するために必要な援助・制度として、都民女性全体では「家族ができるだけ分担・支援する」がトップ。事業所に勤務する人に聞くと、男女ともに、「育児休業中の賃金保障や休業期間の延長」がトップ。女性の場合、「保育制度の充実」「労働時間の短縮」が続く。

(3)企業における子育てと仕事の両立支援策の実施状況

 育児休業制度は、慣行として実施している事業所も含め、61.0%の事業所で制度化されている。ただし、30人以下の事業所では制度化の率が低い。育児休業を利用できる期間は86%が1歳まで。子の年齢が1歳を超えても休業を認めている事業所はごくわずか。休業中に代替要員を配置する事業所は6割。育児・介護休業法で事業主の努力義務として求められている、1 歳から小学校就学前の子育てを容易にするような措置を導入している事業所は少なく、78.8% が「特にしているものはない」。また、育児休業を取得するのはほとんどが女性で、男性の取得率は0.16%にすぎない。

(4)企業の子育てと仕事の両立支援策に対する行政の取組


 都においては、子育てと仕事の両立の必要性について啓発活動等が実施され、制度導入のノウハウ等の紹介が行なわれている。また、現状や課題把握のための調査研究も実施されている。ただし、こうした働きかけは制度定着に向けた啓発的な側面が強く、従業員の育児休業取得に伴う事業主の負担軽減等に結びつくような実質的な対応は十分とはいえない。           


(5)子育てと仕事の両立の課題

 東京都における子育てと仕事の両立のための課題は次のように集約される。

1)子育てと仕事を両立させることを目的とした制度が不備である。

 子どもを産み育てることも、仕事をすることも、本来、当然保障されていい権利であるにもかかわらず、それらを保障する制度が充実していない。たとえば、育児休業期間は1年と短く、取得可能期間も融通がきかず、所得保障も十分でない。このことは、それらを実施していく企業や住民の理解の醸成をも阻害している。将来を担う世代の健やかな成長という意味で、子育て環境の整備に対する社会的な支援の必要性がもっと認識されていいはずである。
2)子育てと仕事についての考え方が固定的である。

 子育ては女性の責任、子どもが小さいうちは母親がそばにいてあげなくてはならない、父親が育児休業をとるのはおかしいといった子育てをめぐる固定的な考え方が、子育てと仕事を両立させようとする個人の選択をとても窮屈にしている。子育てと仕事の両立は、望めば誰もができるものであり、それは当然のことであるという意識の醸成が求められる。
3)毎日の生活に子育てをするゆとりがなく、親子の情緒的かかわり合いがもてない。

 長い労働時間、通勤時間により家庭で子どもと十分に接する時間がとれない。こうした状況は、男性=父親が仕事に専念し、女性=母親が子育てに専念するという役割分担にもつながっている。また、子育てをする上でのゆとりの不足は親子の情緒的なかかわり合いの不足にもつながっているという点で重大な問題である。働き方の見直しが必要である。
4)子育てを長期的なスパンでとらえて支援する仕組みが不十分である。

 子どもの成長の各段階において、親の子育てへのかかわりは常に求められるにもかかわらず、子育てと仕事の両立のための支援制度は、乳幼児期、特に子どもが1歳に達するまでの期間における対応が中心で、学童期以降になるとほとんど支援策はない。子育てを長期的スパンでとらえ、それぞれの時期に応じた支援策が求められている。


5)子育てに希望がもてない

 働きながら子育てをしようとする人にとっては、子育てを楽しむゆとりがなく、仕事をせずに家庭にいながら子育てをしている人にとっても、子育ての責任が自分にかかって精神的に重圧を感じるというようなことで、楽しいはずの子育てに希望がもてず、子育てが負担だと感じたり、不安を感じるような状況にあるのではないか。働く人、働きたい人の子育てをめぐる悩みや不安を受け止め、その不安を取り除き、子育ての楽しさを実感できるような対応が必要である。

  第3章 施策の提言へ続く