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○ 各委員からの「問題提起」(第2回〜第4回協議会より)

(3)「『少子化』への対応策」 【白石真澄副会長より】

 私からの話は、「『少子化』への対応策」ということです。私自身も現在中学1年生の息子と小学校5年生の娘がおりまして、子どもが生まれて以降、ずっと仕事を持っておりました。この少子化に対するいろいろな既存研究、私自身の経験なども踏まえて問題提起をさせていただきたいと思います。
 まず、東京都ということではないですけれども、「日本の少子化対策をめぐる現在の問題」というふうにタイトルを打たせていただいておりますが、私が考えますに、1990年に「1.57ショック」という言葉が出て以降、一貫して合計特殊出生率というものは下がり続けております。この際いろいろな手当てがされてまいりました。島嶼部などでは、子ども3人を産むとそれぞれに100万円ずつ出すということも一時やっておりまして、政策の見直しもされてきました。この間行われた政策の中で効いてきたものは何なのか。いろいろやってきたものの、そのメニューがほとんど方向性が間違っていたもの、ユーザー側の目指すレベル、利用者の満足度を満たすようなレベルに達していなかったのではないかという政策検証がほとんど行われていないわけです。新規施策は出ておりますけれども、過去の施策についての検証がなされていないということです。
 2点目には、人口問題研究所が高位、中位、低位というふうに人口推計を出しております。50年後は2,600万人減りまして約1億人ということですけれども、スウェーデン3カ国分が50年間に減っていく国というのは、世界でも日本だけでございます。こうした少子化や人口減少の議論を聞いておりますと、確かに社会保障制度などを維持していく上では、人口減少ということは悲観的にとらえる側面もあろうかと思いますが、果たしてそれだけの議論で終わっていいのかどうか。1億人という人口で今の日本の国土を維持し、産業構造を支えていくことが不可能なのかどうかという現実的な議論が行われていないわけでございます。1億人という人口でどういうふうに勝負していくのかという国の姿が全く見えてこず、一方的な不安ばかりがあおられているという気がいたします。こうした風潮の中で、私が教えております18歳から22歳の学生というのは将来に対して非常に悲観的な考え方を持っております。ヨーロッパやアジアで調査をしますと、ヨーロッパはおじいちゃん、おばあちゃん世代、親世代、子世代と、何代続くトレンドにあっても安定した考え方を持っております。中国や韓国といった成長を遂げておりますアジアの若い人たちは、親の世代よりも自分たちの世代、おじいちゃん、おばあちゃんの世代よりも親の世代のほうがいいという右上がりの価値観を持っておりますが、日本の若者は特異に右下がり、これからますます社会は悪くなっていくだろうという漠然とした不安を持っております。
 3点目には、「少子化は困る」。これは、だれにとっても異論はないことだと思うんです。人口が減っていくということは、国の経済成長というのは1人当たりで換算しますので、経済成長は維持もしくは低下傾向ということを仮定するならば、少子化は困る。しかし、これについて今行われていることの整合性がとれているのかというと、私はそうであるとは思いません。皆様もご存じのように、いろいろ国連の調査などでは、家庭や企業における伝統的な制度が根強い雇用慣行が著しいほど、つまり女性の社会参画ができていない国ほど出生率が下がっているということを考えれば、まず女性の社会参加を進めてみる。
 家庭の中をダブルエンジンにして経済的な安定を図るということが大命題だとすれば、これに水をかけるような制度というものが維持されていると思います。私自身も13年前に長男を産みましたときに、約半年間にわたり降格という扱いを受けました。その当時は男女雇用機会均等法というものがありまして、それが違法行為だったわけですけれども、1枚の紙が送られてまいりまして、研究員という役を剥奪するという一方的な通告を受けました。私も子育てでいろいろ悩んでおりまして、会社といろいろ協議する時間もなく半年間が過ぎてしまいました。「それでは、出るところに出てお話し合いをしましょうか」と申し上げた翌日から、私の身分はもとに戻りました。さまざまな制度はできておりますが、それがきちんと運用されているのかという点や、来年からなくなりますような配偶者控除、さらに世帯主でなければつかないような企業内の手当など、女性の働く意欲を阻害するような諸制度が余りにも残っているのではないかと思います。
 かつて国が右上がりの時代というものは、企業が社員を安定的に雇用して、企業の存続が社員の生活向上につながると。したがって、政府の規制で企業を守るといった日本の社会メカニズムというものがよく機能してきましたが、今それががたがたと音を立てて崩れております。こうした企業の慣行を支えるような税や社会保障制度というものをもう一度見直していく必要があるのではないかと思います。
 来年から配偶者控除がなくなります。この配偶者控除がなくなるといって、今家にいらっしゃる方が働けるかどうかというと、そうではないわけです。これをやるのであれば、女性の再就職支援とセットではないかと思いますが、差別用語ですが、片手落ちという政策がとられているわけでございます。
 一方で、若者世帯、子育てをしている世帯が非常に不況の中で逆風を感じているのに比べまして、例えば介護保険が導入されて、保険料免除という高齢者の優遇が行われている。すべて政策の脈絡がない。こうしたことについても、非常に若い世代は閉塞感を感じているというふうに思います。
 こうしたことを受けて、一体何が本質的な問題なのかということを議論していく必要があると思います。政策の優先順位をどうつけていくのかという、これが国として示されていないと思います。先日発表されました国の少子化対策でございますけれども、少子化社会対策基本法ができまして、これも読んで朝から笑ってしまいました。子どもを産むということに焦点を当てることはやめて、自治体がお見合いをさせるとか、不妊治療にまでお金を出すということが検討され始めていると聞いております。
 こうした政策の優先順位、ほんとうに必要なところに光が当たっていないということが、今、全体としての問題ではないかと思います。
 さて、そうしたことを受けまして、「東京都の実際の施策に望むこと」という話をさせていただきたいと思います。東京都とほかの地域、ほかの都道府県との違いは何なのかということを考えてみますと、やはり都市部であるがゆえの高コストでございます。若い世代、子どもを産み、育てるべき世代が生活をしていく上で非常にコストが高い。住宅費や、最近では物価の格差なども地方とやや縮まっていると思いますけれども、都市部であるがゆえの生活コストをどう是正していくかということです。
 また、地方と違って人間関係が非常に希薄である。亡くなっていて1カ月後に発見されるという地域社会の中で、このような人間関係の希薄さを近隣の力でどう埋めていくかということ。
 さらに、24時間都市、これはメリットでもあるかもしれませんけれども、24時間活動している上で、24時間働いている、深夜働いているような女性が安心して子どもを預けられるような保育所が整備されているかというと、私はまだまだ不十分ではないかと思います。この東京都の高コスト、人間関係の希薄さ、24時間都市が活動していくということにどう焦点を当てていくかどうか。
 また一方で、生かせるべき資源としては職住近接ということです。かつて横浜などで調査をさせていただきましたときに、非常に父親の通勤時間が長いわけです。先ほど発表がございましたように、お父さんが家で子どもとご飯を食べるというのは大体1、2回。土日も丸々食べていないわけです。ゴルフに行ったりしているのかと思いますが、非常に通勤時間が長いがゆえに、家庭に参画することを阻害している。最近では、通勤時間に残業時間というものがかわってきているというふうに思いますが、ほかの1都3県の中で、3県に比べまして、職住近接が可能になっているということです。また、ありとあらゆる多様な企業が中心部に集積をしていて、企業の力が借りていける強みがあるのではないかと思います。
 こうした中で、少子化対策として、女性の社会参加をどう進めるか。そのために企業の中で男女が公平に働けるような環境をどうつくっていくのか。これは賃金格差の問題もありますし、今の休暇制度の問題もあります。さらに、女性が働き続けていく、仕事か家庭かという二者択一をせずに済むような育児支援をどう行っていくのか。この二つぐらいに焦点が当たっていくと思います。
 私はこの二つの焦点だけでは不十分で、外堀を埋めるような総合的な対策も同時に行っていくべきだと思います。ちょっと前後しますけれども、私は少子化対策というのは、まず今やるべき短期的な対策と中・長期的な対策に分かれるのではないかと思います。
待機児童が多い中で、私も保育園のときには残業が多く、6時に迎えに行かなければいけないわけですけれども、ほんとうに迎えに行ってくれるのならば誰でもいいというふうにせっぱ詰まった思いで6年間を過ごしてきました。残業であれば、今日声をかけて行っていただけるような人がいるのかどうか。ファミリー・サポート・センターも出てきましたけれども、こうした今の既存のメニューで果たして十分なのかどうかというような、現在の政策メニューを再検証し、そこをどう方向転換していくのか、質を上げていくのかということをまずやっていくべきだと思います。
 また、子育て支援、待機児解消といった短期的なメニューだけではなく、中・長期的な対策も必要です。依然として教育の中で、特に家庭教育ですけれども、男の子は勉強してしっかり家庭を担うような学歴をつけて一生懸命働くのよと、女の子はいいお嫁さんになってサポートをするのよという教育が行われていることも事実でございます。こうしたジェンダー教育とか、子どもを健全に産み育てる――今児童虐待防止法ができまして、全国の児童相談所に駆け込まれる相談件数は数万件と聞こえておりますけれども、今いる子どもたちが健やかに育っている姿を見て、これからの世代が子どもを産んでいい社会なんだという安心感を植えつけるということを考えれば、今いる子どもたちをどう健やかに育てていくか、いじめの問題や不登校の問題、引きこもりの問題や児童虐待の問題、こういった社会不安をどう解消していくのか――これは迂遠ですけれども、非常にこれからの世代にとって明るい展望を開いていくような重要な施策ではないかと思います。
 なぜ子どもを産まないのか、理想の子どもを産まない原因には経済的な理由が来ております。今までは女性が社会参加をしたから子どもの数が減ってきているのだという議論がございましたけれども、それは間違いで、去年、おととしぐらいの出生率というものは、つまり専業主婦が産んでいるのか、有職女性が産んでいるのかということを見れば、有職女性のほうが子どもを産んでいるわけです。これはやはり経済的な自信に裏づけられたことではないかと思います。シングルエンジンでは社会不安があって産めない。ダブルエンジンであれば、どちらかが止まっても片方のエンジンが回っているわけでございますから。こうしたことを考えれば、子どもを早期に家から出していく、つまり、子育てにお金がかからないためには、いかにパラサイトしている子どもを18歳の時点で自立させ、外に出していくか。親の責任は15まで、高校以降は奨学金を借りて自分でやっていくのよという社会通念をつくる。これには今、年金の審議会などで議論されているような、必要であればだれもが親元を離れて自分で暮らしていけるような奨学金制度の充実、こうしたことも回り道でありますけれども、経済的な不安を感じている親にとっては非常に安心できる制度になっていくのではないかと思います。かつていろいろ少子化に関する研究者が、なぜ子どもが減るのかということを研究しております。結婚できる女性が子どもを持つ数、何人産むかということを決める要因として、まず子どもを育てる家庭全体の収入、家族の収入、お金があるかどうか。子育てをするために母親が仕事を離れる、これは機会費用と言いますが、子どもを産むことをあまり経済的に考えてはいけないのですが、母親の賃金が幾ら損失されるかどうか。
 さらに、母親にかわって育児を行ってくれる家族の協力、代替要員がいかにいるかどうか。大都市であれば、これに住宅事情の制約が強まるというふうに聞いております。今申し上げたことをまとめますと、子育てのハンディキャップを社会的に埋める制度。住宅を含む子育てコストをいかに引き下げていくかということではないかと思います。
 具体的な例をお話ししますと、住宅。これも横浜などでさせていただいた調査では、広い住宅に住んでいて世帯収入が高いほど子どもの数は多いわけです。かつて貧乏人の子だくさんというふうに言いましたけれども、お金があって広い住宅に住んでいれば子どもはたくさん産んでいるんです。とりわけ民間賃貸住宅に入っている20代後半から30代前半の世帯の住宅費のプレッシャーというものは家計に対して3割ぐらいを占めているわけです。そして、単に住宅のコストだけではなく、遊び場がない、そして子どものたてる物音がうるさいという中で、息をひそめるように子育て世帯が暮しているわけです。こうした住宅一つとっても、子どものライフステージに合わせて住みかえができるかどうか。ファミリー向けの住宅が都心に十分に供給されているかどうかということも検証していかなければならないと思います。これは1例でございますけれども、横浜などでは性別問わず中学生の子ども、住宅事情が悪いがゆえに13から15歳の子どもの大体4人に1人ぐらいが母親と同室就寝をしております。これはプライバシーの問題もありますけれども、住宅事情の制約が大きく、夫婦の寝室が確保できないということなのです。
 もう一つ、ぜひお願いしたいことは、少子化を一括りにとらえてはいけないということです。子どもが1人から増えるときに、本人の賃金水準が高いか低いか、子育ての支援があるかないかによって、1人から2人に移行するかということが決まるわけです。つまり、こうしたことを考えれば、子どもの今の数が何人であるかによって政策的な対応が異なるんです。0から1、もう全く子どもを産まない、私は仕事に命をかけていくのだという人に産めよ増やせよと言っても、これは聞きません。1から2に行けない理由というのは、今申し上げたように賃金水準、もう1人産んだことによって果たして仕事が続けられるのかどうか。1人でもこれだけ大変だったのに、周りにサポートしてくれる人がいなければ仕事は続けられないという不安感をどうやって取り除くかということなのです。2人から3人に行くときに、これも経済的な問題があるとも聞いてきておりますけれども、住宅などの問題もかかわってきているわけです。つまり今の少子化の議論というものは、0人から1人、1人から2人、2人から3人という理由をすべてまぜこぜにして、単に子どもが減る不安であるいろいろなメニューを総花的にやっていく、やってだめなら違う方向にということに流れているようで、私は非常に懸念をしております。
 最後に申し上げたいのは、東京都でも、いろいろ民間活用して認証保育所制度というものができてきたり、今全国的に展開されておりますファミリー・サポート・センターというのができてきたりしています。しかし、やはり財政状況がこの厳しい中では、公的なセクターが何もかもということは非常に難しいと感じております。これは皆さんも共感していただける部分ではないかと思います。まず、一旦政策のメニュー出しをして、過去の政策の検証をしていただいて、何を公がやるのか――クーポンなどを出して民間活用をしていって、行政はそれのチェックしていくのだ、質的向上のために指導、監督権を強化していくのだ――、という役割分担を、最終的なところではお考えいただければと思う次第でございます。

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