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○ 各委員からの「問題提起」(第2回〜第4回協議会より)

(4)「出産・子育てに優しい経済社会の実現に向けた経済団体の意見」 【市原敏委員より】

 「少子高齢化対策の考え方―背景」については、背景ですとか原因はいろいろ論じられていますので、きょうはそこは省略させていただいて、「対策」についてお話します。
 対策については2つ課題があるでしょう。1つは、若い世代に結婚し子どもを持ちたいという要求は広く存在しているのですが、それにもかかわらず現実には未婚化、晩婚化か進んでいるという実態にあります。これを阻害している経済的、社会的要因を解決するため、出産、子育てに優しい経済社会をつくること。
 2番目は、少子化対策ということですが、もう21世紀半ばには確実に人口減少社会が到来しますので、この備えを今から講ずること。これは、現在の経済社会システムを見直して、現実に訪れる少子化社会に対応できる構造改革に着手すること、この2つの面から考えなければいけないと考えております。
 次、経済界でも少子化対策は極めて重要だということで、各団体がいろいろな検討を従来からしております。日本商工会議所、東京商工会議所、経団連、同友会等々、今までいろいろな提言、意見書を出しております。現在日本商工会議所、東京商工会議所でかなり論議が煮詰まってきておりまして、間もなく公表する意見書があります。本日はそれをベースにお話しさせていただくとともに、日本経団連、経済同友会の考え方についても少し触れさせていただくというふうにさせていただきます。
 対策としてですが、先ほど白石副会長からもお話がございましたが、短期的、中・長期的、分けて考える必要があるでしょう。
まず短期的な対策、大きくは4項目あります。
まず「『子育てと仕事の両立』への支援」ということで11項目、かなり網羅的に出ています。「保育所の整備・充実」。ここでは、例えば東京都で行っている認証保育所の制度を全国的に広げるですとか、企業内保育所を設置した場合税制上の優遇策を講じるとともに、競争原理を導入すべきであると考えております。2番目、「幼稚園・保育所の一元化の推進」。これについても、幼稚園における預かり保育、逆に保育所における幼児教育の実施、その辺のニーズがありますので、規制を緩和して一元化し、一体的運営を推進すべきであると。3番目は「託児所や保育所などの第三者評価機関の設置」ですが、子どもの保育にかかわる専門職の質ですとか、保育環境を均一な水準に保つための仕組みとして、第三者評価機関を設置したらいかがだろうかと。4番目、「学童保育の充実」。これは設置数を増やすとともに、延長保育を拡充する。5番目、「保育士の資質の向上」。例えば再教育プログラムを充実させる等を考えるべきである。
6番目、ここが極めて切実なお話です。「親が働いている子どもの病気への対応の充実」。これが相当大きな問題です。既に病気になった方の保育所もあるようですが、設置されていない市町村も多いようですので、その充実。それから、登録制のヘルパー等によって、急に看病が必要になった場合お願いできるというシステムの整備を行ったらどうか。それから、看護休暇をする場合に、公的給付制度の検討も考えていただけたらどうだろうか。7番目、「病院の経営効率化から小児科を削減したり統合する動きが進んできているようですが、このことについて行政は重大な関心を持つべきであろう」と。例えばということですけれども、小児医療に対する診療報酬単価の引き上げ、あるいは財源の問題はあるかもしれませんが、医療費の無料化等々を検討したらいかがだろうかと。8番目、「育児休業制度について」。中小企業に対する支援策ということで、助成金等も考えていただいたらどうかということ。それと、有給休暇を時間単位で取得できるように規制緩和も考えていただけたらいいのではないかと。9番目のところは、時間外業務ですとか、育児時間勤務制度等もありますが、例えば子どもの夏休みに合わせた長期休暇の制度化等も、これは企業だけではないでしょうけれども、雇用主のほうでも考えたらどうだろうかと。10番目、「女性労働力の活用」ということで、これも常に声がたくさん出ています。育児のため退職された方への再就職の支援ですとか、出産後のスムーズな職場復帰の支援、それから、一たん退職してしまったがために非労働力化した女性に対する職業教育への支援、この辺を考えたらどうでしょうかと。11番目、「結婚の環境づくり」ということで、個人生活を楽しめる時間をつくるための施策ということで、これも例えばということですけれども、サマータイム制度の導入等によって、仕事優先の人の価値観を変えるということも、そういう意味合いでもサマータイムというのを検討したらどうでしょうかと。
 次に、「『子どもを持つことの経済負担』の軽減」。先ほど白石副会長も強調されておりましたが、ここのところはかなり重い問題です。「児童手当の充実、扶養控除の見直し」。特に、給付額を増やすだけではなくて、一人頭幾らということではなくて、1人目は幾ら、2人目、3人目と、子どもの数に応じて、例えば扶養控除の控除額を増やしていくですとか、逆に支援金をお支払いするですとか、加速度的に増やしていく、逓増していくような考え方が必要だと考えております。「奨学金」のところですが、特に大学在学中の子どもを持つ親の教育費の負担が多いので、ここを考えていただきたいということ。3番目の「年金制度」。ここも子育てのための仕事をしていない期間を一定の収入があったものとして加入期間に参入するという声は出ていますが、さらに、子どもの数に応じて給付額に差をつける。つまり、年金制度においても子育てを評価するということも検討すべきであると。
 次に、「子育て不安の解消」。まず、「『集いの場』の形成促進」は、前回も話題に出ています。「複数世代の同居、あるいは近くに住むこと」。これは後ほど経団連のほうのお話でも申し上げますが、このために住宅ローン優遇等々、賃貸住宅についてもこういうことを促進するようなインセンティブを与えるべきであると考えております。それから、特にこの数年大変NPOの評価が高くなってきていますが、「NPOによる柔軟性のあるサービスや情報の提供活動についても、政府による支援が検討されるべきである」と考えております。
 次に中・長期的対策。
まず、「『子どもを産み、育てる』価値観の育成」。この場合、よく言われることではありますが、もう一度押さえておかなければいけないのは、結婚や出産は個人の自由に当然ゆだねられるべきであって、国や社会が干渉するということは極力排除する配慮が必要であるという前提です。1番目、「結婚や子育ての楽しみを伝える」。今の若い人たちに見られる考え方、価値観は、今までの大人の生き方が反映されたものという面もあるのですが、学校教育や地域、職場、いろいろな場面で子育てを通じて親が成長する様子ですとか、子どもの面白さ、育児の楽しさ等を伝達する機会をつくることを推進すべきであると。あるいは、学生の地域活動への参加促進ですとか、乳幼児に接する機会を学校の生活に組み込んだらどうだろうかと。2番目、「結婚や子育ての社会的意義を認識する」ということ。これは先ほどのお話で、東京都のほうではかなりきっちりした取組をされているようですが、親の学習会、あるいは地域や職場等でも子育て中の人を評価し、応援する姿勢が大事でしょう。
 次に、「少子化を含めた日本社会の長期ビジョンの策定」。新しい社会構造の中でどういうグランドデザインを描いて少子化対策を行うのか。少子化を前提として活力を失わない社会、経済の仕組みや政策を考えていく、そういうビジョンを策定していく。これも大事でしょう。
 そして、「多様な労働力の活用」。1番は「女性の労働力化」。現実問題として、一度やめてしまうと生産性の低いパート労働に甘んじているという実態があるわけですが、この辺、再就職の障害を取り除くことが必要だと。企業にとっても今までの雇用慣行ですとか仕組みでは不合理になっているところもあるのではないかと。そこのところは企業としても精査して、変えていく必要があるのではないかと考えています。2番目、「高齢者」ですが、今日本は一定年齢で60歳とか65歳とかいうことで年齢によって区切っていますが、この考え方を、健康であって、労働意欲があって、そういう方であれば能力に応じて何歳でも働き続けられるような環境。これに対応して、例えば退職金や年金の制度も考え直していくということを検討しなければいけない。それから、「外国人労働力の選別的受け入れ」ということですけれども、これもよく論議になっていますが、諸外国の例を参考にして混乱が生じないように、そういう押さえをした上で受け入れるということを検討していくことが必要であると考えております。
 先ほど白石さんからもお話がありましたが、「社会保障給付費の高齢者と子どもの比率の見直し」。高齢者の比率と子どもの比率が、ご案内のとおりで高齢者のほうに非常に高くなっていますので、このアンバランスを、子育て支援の比率を、これも例えばということですが、スウェーデン並み程度の比率にウエートを変えるということを検討したらどうだろうか。
 「職住接近の環境整備」。これは先ほど来話が出ていますが、子育てと仕事の両立の観点からそういう環境整備を考えなければいけないでしょうと。それで、商工会議所としては、できることから自分たちでもやりましょうということで、海外の子育て支援策事例調査というのをやっています。例えばミラノというのは5、6人ぐらいの中小企業が非常に多い町だそうで、ミラノの事例調査ですとか、パリというのは商業都市なので、この辺の事例調査も行っています。この辺、もう少し時間がかかりますが、いずれ結果を発表します。
 それから、東京商工会議所、日本商工会議所では、年内に中小企業の子育て支援ガイドブックというのを出しまして、来年の2月以降、支部・地域単位でそのテキスト等を使ってセミナーを行うことを計画しています。もちろん企業経営者の啓発、意識改革の推進ということで、その辺の取組も行うというふうに決めております。
 次に、日本経団連のほうにいきます。ここでは今年の1月1日で『活力と魅力溢れる日本をめざして』という冊子をつくって、いわゆる奥田ビジョンと言われているものを発表しています。その中の3番目に「家庭を持ち、子育てをする生き方が不利にならないという社会を実現すべきである」というビジョンを出しております。
 それをもう少し細かく言うと、地域としては「仕事と子育ての両立をしやすい環境の整備をしましょう」と。企業は「女性だけではなく、男性の働き方の見直しも必要である」と。参考資料、図2−8ということで、「県庁所在地別の合計特殊出生率と往復通勤時間」という調査をしたようです。これを見ますと、職住が近接している都市は出生率が高いというのがはっきりと見てとれると。それから図2−9「日中子どもの世話は誰がしているのか」と。保育園が多いんですが、同居、別居両親も合わせると23%ということで、保育園と両親を合わせると約9割がこれらによって日中の世話がされていると。この辺からも職住近接の対策と、自分の親、おじいちゃん、おばあちゃんと同居、もしくは別居ですけれども近いところに住むという政策を進めるべきであるという提言をしております。
 またもとに戻って最後のところですが、経済同友会も「21世紀宣言」ということで、経済同友会としての活動の基本方針といいますか、指針の中で、「多様な能力を最大限に活かす」と。そのためには年齢ですとか性差別等をなくして、能力、成果がある人は活用していきましょうと。「家庭人としての責任を考慮した雇用を実現すること」ということを宣言しております。

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