トップページへ


○ 各委員からの「問題提起」(第2回〜第4回協議会より)

(5)「働きながら育児や介護を行いやすい環境づくり」 【夏井孝子委員より】

 私の方は問題提起というよりは、今、私がここの場にいるのも富士ゼロックスがファミリーフレンドリー企業表彰を受けたということで、企業の立場からというお話でしたので、富士ゼロックス――弊社がどんな取り組みをしているのかをお話しさせていただいて、何らかのご参考にしていただければと思っております。
 設立は1962年、本社は赤坂にございます。従業員は1万4,835名で1万5,000弱、女性社員が一見多そうなイメージがあるんですが、実は9%でして1,300弱になっております。主な取り扱い商品は、オフィスにおけるカラー複合機であるとか、複写機、プリンター等でございます。
 仕事と家庭の両立が、今、盛んに言われて、日々インタビューや取材があったり、他企業からのヒアリングがあったり、あるいは大学生さんの卒論のレポートにしたいということで非常に問い合わせが多くて、私は人事部ですが、半分ぐらい広報のような感じで、世の中の関心が今こういったことに高まっているんだなと。それからもっと言うと、子育て支援に熱心な富士ゼロックスさんとまで言われ、少子化時代の企業のあり方が求められているということがよくわかります。
 ところが、富士ゼロックスのスタートというのは、必ずしも女性社員のためにとか、子育てをしていく女性社員のためにということが原点ではなくて、1988年になって、当時の富士ゼロックスの社長――今、会長です――が、今までの世の中というのはどうも自分を殺して会社のためにすべてをささげるとか、滅私奉公まで言うとちょっと言い過ぎですけれども、個人の生活を犠牲にしても会社にすべてをささげるというような働き方だった。それから、メーカーですので、とにかく効率主義、むだを省こうというようなところで徹底してやってきたのですが、これからの時代はそれだけじゃ立ち行かないんじゃないか、という話がありました。
 もっと個人一人ひとりを尊重して、それから、その個人の発想を発揮できる仕事のあり方とか、環境づくりが必要なんじゃないかとトップの方から提言がございました。それが1988年で、弊社の中では「New Work Way活動」という形で取り組みを行ってきたわけです。そこから一人一人が自由に働けるような企業風土をつくっていこうとか、人事であれば各種制度をつくっていこうという取り組みが始まりまして、それが着実にきちっと運用されて、結果として仕事と家庭を両立しやすい環境ができていって、昨年度のファミリーフレンドリー企業の厚生労働大臣優良賞に結びついたという経緯になっております。
 育児休業制度が1988年、「New Work Way」開始の年に入り、その年に育児や介護だけではなくて、ボランティア休職や、教育休職など、個人の成長やライフスタイルを認めるというようなところでのいろいろな制度が入ってきております。90年には家族介護休職、92年に育児のための時短、93年に介護のための時短という形で、また、93年の積立有休の取得条件緩和というのは、今、法律で言うところの看護休暇に相当するもので、初年度に有休を使わなかったのは翌年持ち越しですが、その持ち越ししたものを使い切らなかった場合は、本来ならば失効になるのですが、それを60日まで積み立てておける。それによって家族介護やお子さんの急な病気のときの家族のヘルスケア、ボランティアであるとか、そういったものに使える制度でございます。
 ですから、仕事と家庭を両立させるための制度は大体90年前後に入ってきていて、それが10年ぐらいたって、今、会社の中にしっかり根づいていると、そういう状態だと思います。
 例えば育児休職も法律では子が満1歳までですが、満1歳までですと、お誕生日が例えば2月何日とかというと、とても公立の保育園は入れませんので、保育園に入れるまでということで最長半年間延長可能であるとか、復帰をしまして勤務時間の短縮がございますけれども、30分単位、最長2時間まで短縮勤務を使えるようになっています。今、保育園は徐々に保育時間を延長して、わりと充実はしてきていますが、小学校に入ってからの方がむしろ学童クラブは早く終わってしまう、あるいは地区によっては学童クラブにお迎えにいかなければならなくなってしまう。保育園は7時までやっているけれども、学童は5時半で終わりですというような現状がいろいろあることもわかり、勤務時間短縮も小学校入学後半年まで使えるようにしましょうとか、わりと使う人のニーズに合わせた、とりやすい、使いやすい制度にもっていっております。
 また、復帰したときは、フルタイムでやるのか、時間短縮でやるのか、それぞれの状況に応じてフレキシブルに選択できるようになっております。今、フルタイムで復帰される方と時短で復帰される方の割合は、大体フルタイムが3、勤務時間短縮が7ぐらいになっております。
 介護につきましては、本日のテーマとは直接関係ありませんが、家族介護が必要になった場合も、先ほど申し上げました積休であるとか、あるいは時間短縮であるとか、一日介護休業という制度もあるのですが、そういったものをいろいろ使って、それでも立ち行かなくなると、今度は休職に入ろうということで、介護の必要度に応じていろいろな選択肢が用意されている形になっております。
 さて、今、弊社の場合の出産に際しての選択ですが、この3年間の実績をとってみますと、出産退職が35名、育児休職をとられる方が201名、産休のみで復帰される方が10名ということで、数字を見ていただきますと、出産なさる方の86%が仕事を続けるという選択をしております。出産でやめたいという方ももちろんいらっしゃいますので、そういう方に関しては特に会社として続けるべきだということではなくて、個の尊重ですので、オーケーなんですが、女性社員も子どもを産むことによって退職しないというのが、当たり前の形になってきております。
 当然のことながらですが、ワーキングマザー率というのも、今は24%ですので、大体女性社員の4分の1はワーキングマザー、既婚率が半分ぐらいという形に変化してきております。
 育児休職の実績につきましては、89年から徐々に増えてきておりまして、今、大体毎年5〜60名という形で、第2子出産という方も多くなってきております。それから、介護もコンスタントにいるのですけれども、介護休職の場合は、取得者の6割ぐらいが男性ですので、このあたりもファミリーフレンドリー企業表彰のときの表彰理由の一つになったようです。介護の場合は、男性管理職も含まれております。
 そして、女性社員の勤続年数になりますが、当然のことながら、育児を理由にやめておりませんので、90年ぐらいから見ますと、今、大体倍ぐらいの勤続年数になってきておりまして、多分、伸びていくのではないかなと思います。それによって平均年齢も伸びていっております。会社としては多分いいことだと思うのですが、先般の協議会でも少しお話しさせていただきましたように、であれば、女性社員も、本当にキャリアを磨いていける、長いレンジでの働き方というのが求められてくると思いますし、今企業の中で必ずしもそれがスムーズにいっているとは言い切れませんので、女性社員のキャリアアップなど、勤続年数が伸びてきたことによっていろいろ考えていかなければならない問題も出てきていると思います。
 それから「男性の働き方の見直し」ということが言われており、男性の育児休職も10%目標という数字も出ております。富士ゼロックスの中の数少ない例ですが、どういうとり方をしているのかというと、産休明けにいきなり男性がとるということはまずなくて、奥様が働いていらして、離乳の時期に入ってきているという時期に後半1、2カ月とるというようなパターンがわりとスムーズなのかなということを教えてもらっている実例だと思うんです。
 男性の育休取得者をふやしていくためにどうしていくかというと、一つには、育休というとやはり産後休暇明けで、休職明けで満1歳までというイメージが非常に強いのですが、そうではなくて前半は母親でいいと思うんですが、後半、短期間であれば、それほど家計に影響があるということもないと思いますし、こういったとり方であればぜひとれるんじゃないか。実際にとった人の声をインタビューしますと、非常に充実していたとか、自分自身のライフスタイルを見直すいい機会だったというような肯定的な意見なので、こういったメニューの紹介というのが必要ではないかなと思っております。
 それから、今の規程では、夫婦の同時使用は、富士ゼロックスではできなかったのです。それから、奥様が専業主婦の場合や、家に子どもを見る方がいらっしゃる場合は育休をとれなかったんですが、その規程を見直しまして、奥様が専業主婦であっても育休をとれるという形に持っていくことにしました。そうしましたら、早速、妻は専業主婦だけれども、自分はやっぱり1か月か2か月とりたいというような声も出てきました。
 「今後の育児関連制度について」ということで、この10月から改定を予定しているんですが、育休制度や、時短制度、深夜業及び時間外勤務制限制度が夫婦同時で使用できるようになった。それから、配偶者が常態として子の養育ができる場合――多いのは専業主婦だと思いますが――の制度使用も可能にいたしました。声としては、配偶者の状況にかかわらず、ある一定の時期や期間、育児に多くの時間を使いたいという声があったわけですね。今までは、子育てはお母さんがやるものと考えていたことが、今後は、必ずしも母親一人で行うものではないという考え方から、こういったことを改めました。
 それから、勤務時間短縮制度(育児)の適用期間延長ということで、育休をとった方で復帰して、お子さんが小学校に近くなってきたり、小学校に入ってくると、最初の半年だけの延長期間だと9月で終わるんですが、それですごくよかったという方もいらっしゃるんですが、9月だと日が短くなってちょっと不安だとかいう声が幾つか聞かれたので、それでは小学校入学後半年ではなくて、1年生終わりまで勤務時間短縮制度を延長しましょうということにいたしました。
 それから、勤務時間の短縮制度は、今まで弊社の場合は、一日の中でそれを清算するという形で、どちらかというと時差出勤の形で短くしていたのですが、そうではなくて月度清算という形にいたしました。これは一見大したことなさそうなんですが、考え方自体はかなり前進したと思います。私はこの10年で進歩したなと思うのは、前は、「育児というのは毎日必ず行うものでしょう。だから、一日で大体来る時間も決まっているし、帰る時間も決まっていて、保育園に行くんだから一日清算でいいでしょう。月度清算する必要はないでしょう。」という考え方が人事の考え方だったのですが、今は毎日の短縮は必要ないけれども、月度で見たときは短縮が必要とか、家族の協力が得られるときにはできる限り仕事で能力を発揮したいということで、育児は一人で、特に母親一人で行うものだったのが、家族責任が求められ、家族全部で行うものだという考え方に基づいて本制度が変わったということで、随分進展があったと思っております。
 そして、育児関連諸制度が社会全体に根付くことは、仕事と育児を両立させていくために、企業であれば制度が当然必要だと思うのですが、弊社の場合は幸い風土があって、現実としては結構とりにくい雰囲気があるとか、制度はあるけれどもとれないといった声をいろいろ聞く中では非常に恵まれているなと思っています。もちろん、法律で当然育児休職制度というのはあるのでだれでもがとれるのに、なかなかとりずらいといったときに、じゃあ、どうしたら法律が生かされて取得できるのだろうかというようなことを改めて考えた場合に、ただ制度があるというだけではなくて、使いやすい、使える制度があること。それから、利用者の立場に立ったきめ細かい制度であること。例えば育児休職で、もちろん満1歳で戻る方もいらっしゃいますけれども、早生まれのお子さんであったり、保育園の空きがないといったときに非常にせっぱ詰まっていたりするわけですが、そこで延長が認められるというようなこと。あるいは時間短縮勤務も、当初、弊社の場合は1時間単位だったんですが、1時間も必要ない、私は30分でいいんだという声もあったので、そこも30分単位で認められるとか、そういったきめ細かい配慮で随分違うと思っております。
 それから、利用しやすい雰囲気がある。ここが最も大きいと思うのですが、人事を中心として、管理職の意識、あるいは経営者の意識というのが非常に大きいんじゃないかなと思います。弊社の場合は、これは義務づけているわけではないですが、育休に入る前、入った後にその本人と本人の上司と、それから人事を入れて三者面談というのも行っているところもありますし、なるべく上司を巻き込んでうまく休職をとって、そのとられる本人にとって有効であるように人事が働きかけてあげるというようなことは必要ではないかなと思います。
 あと、管理職研修のようなところで、育児だけではないんですが、介護であるとか、障害者であるとか、あるいは外国人であるとか、そういった多様性、いろいろな立場の方がいらっしゃるということを管理職研修などで少しわかってもらえるような形にもっていったりとか、そういう努力も必要ではないかと思います。
 それから、情報提供とか社内広報が充実しているということでは、社内で社内イントラネットとか、ガイドブックなどで、育児のみならず、いろいろな制度がわかりやすく案内されているとか、多分、どこの企業さんでもそういう努力はなさっているかと思いますが、弊社でも社内イントラから制度の概要を知らせたり、あるいはそこから帳票関係が全部ダウンロードして引き出せるような形になっております。
 あとは、制度を利用しても不利にはならないというところ、先ほどの説明もありましたが、処遇であるとか、制度をとったことによって不利にならないというようなところ、そして、そのことははっきり目に見える形、認識できているということも必要ではないかなと思います。職場に先輩、ロールモデルがいるということも大事で、ですから、それがいい循環で回ってくると、育児休職が根付いてくると思います。
 キーワードとして、やはりここは「安心」で、安心して制度が使えることが不可欠です。
 それから、「少子化対策プラスワン」で、「男性を含めた働き方の見直し」ということが盛んに言われています。これも「男性を含めた働き方の見直し」と口にするのは本当に簡単なのですが、じゃあ、どうするんだといったときに、よくわからないわけです。何かやっぱり掛け声だけのような気がして仕方がないんです。
 ここは、行政に進めてほしいこととして、ちょっと乱暴な言い方なのかもしれませんけれども、よく人事労務担当を対象にした行政主催の啓蒙のためのプログラムがあるんですけれども、そういったものを人事労務担当のみならず、ぜひ経営トップを巻き込んで啓蒙活動をしていっていただきたいなと思うんです。「経営課題への位置づけ」と書きましたが、今、企業トップは10年後の日本がどうなっているかよりも、今期の利益を出すことの方に躍起だし、プライオリティーが非常に低いわけです。ですから、そういうときにどうしたら重要な課題として組み入れられるのか、ISO14001で環境などは結構いい形で企業の中に課題として入ってきているのかなと思います。あとは、CSRといって企業の社会的責任も言われており、何かそういった中に少子化の対策というのか、仕事と家庭の両立なのか、男性を含めたいろいろな働き方の見直しなど、うまく位置づけられるように、プライオリティーを少しでも上げられるような努力をぜひ行政にしていっていただければと思います。
 それから、男性育児休職取得率アップとか、育児参加を促すためにということで、もちろん広報もお願いしたいところですが、行政みずからも行動をとっといただきたいです。「取得方法のきめ細かな広報&啓蒙」とありますが、まず1か月の休職、あるいは保育園の送り――今、保育園の送りは、うちの部も、私のすぐそばに座っていらっしゃる男性で、2歳のお嬢さんがいらっしゃる方は、毎朝保育園にお子さんを送ってから出社されるんですが、今、その保育園で3分の1ぐらいが朝の送りはお父さんだっておっしゃっていました。そんなところから参加してくださいという広報があったらいいなと思います。
 それから、これも少々乱暴で、「行政からお手本を!」と書いたんですが、例えば東京都の職員の男性育休取得率はどれぐらいあるのかわからないのですが、そこが3割とか5割ぐらいになってくると随分流れが違ってくるのではないかなと。その「男性育休取得率、平成11年0.55%」というのは、全体ということで厚生労働省の発表の数字ですけれども、ぜひ、みずから男性が育休取得を進めていただければ随分違うのではないかなと思います。
 一気にガラッと変わることは、あり得ないと思うのですが、小さなことからでもあきらめず言い続けるとか、先般、東京都のセミナーに参加させていただいたんですが、そのときに成城大学の奥山先生は、今、企業の中では認識が薄いかもしれないけれども、常にずっとあきらめないで言い続けることが必要なのですということをおっしゃっていました。3歩進んで2歩下がるでもいいから、少しずつ進めて、行政ももちろん、企業の中でも進めていければいいのではないかなと思います。
 これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

次のページへ     目次に戻る