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○ 各委員からの「問題提起」(第2回〜第4回協議会より)

(6)「子育て支援について−保育・育児の現場から」 【岡田晴奈委員より】

 私はベネッセコーポレーションという会社で保育園の運営と「こどもちゃれんじ」というゼロ歳から6歳児向けの通信教育講座の統括をしておりますので、日々いろいろなお母様、お父様方からの声とか、それから、実際に保育園に通われているお子さんの様子とか、そういったようなものを見聞きしておりますので、そういった現場の中から感じている問題意識とかといったことを中心にお話をさせていただこうと思います。
 3点問題意識として出します。1点目は実際に企業として保育所の運営をしておりますので、そういったところで感じているところ。2点目に、幼保問題というところで2点目を書いております。3番目に、「こどもちゃれんじ」といったようなところで、親子相談室という相談機能を持っておりまして、こちらに日々入ってくるお母様方の個別の悩みといったようなものが経年で見たときにどうなのかとか、年齢別に見たときにどうなのかといったようなところもご説明をさせていただこうと思っております。
 では、最初のところですが、「企業が福祉事業である保育所の運営をする意義」というところを私たちなりに考えているところを3点入れております。
1点目は「サービスの質の向上」と入れておりますけれども、企業というものの発想というのは、お客様あっての企業ですので、お客様方、つまり、ご利用者の方々が我々の園を選んでいただいて、そして安心してお子さんを預けていただくためには、それなりの質の確保が必要だろうと考えておりますので、そこについては一生懸命やっているという実情についてご理解いただきたいなと思っております。
 まず、保育の質とは何なのかというところでグラフを入れております。やはり保育者の経験に基づく質というところを課題にされる方が多いわけなんですけれども、実際にご利用者の方々に対してアンケートを毎年実施しております。そういった結果、一番上に「保育者の質」と書いてありまして、一番点数が高かったのは、ちょっと手前みそなんですけれども我々の園でした。他は決して保育者の質が悪いということではなくて、それぞれの得意分野というのがあると思うのですけれども、我々は、園の基盤である保育者の方々への研修であるとか、それから、保育の専門性を高めるための勉強会であるとか、そういったようなものを随時開催しながら、また、保護者の方々とのコミュニケーションといったようなところも非常に留意しながら園の運営を進めているというところで、我々がとらえているのは単なる福祉ということではなくて、サービス業という考え方が入っておりますので、利用者の満足というのを一つの軸として運営をしていかなければならないと考えているということです。
 次に、顧客満足、保育の質というところをもう少し細分化した図を入れておりますけれども、お客様、利用者の方々が何を基準にそういったものを感じるかといったことを細分化しております。保育者、保育内容、環境、安全衛生、そしてシステムというところかなと思うわけですけれども、そういったそれぞれの項目について一つずつ自分たちの園はどうなっているのかというところと、それから、利用者の方々にとってそれは届いているのか、届いていないのか、不満になっているのかどうかといったようなところを毎年、毎年チェックしながら進めているというところです。
 さらに、保育理念、考え方を基盤に、先ほど申し上げましたような実行項目のところを積み上げて、全体として保育サービス、価値を積み上げる仕組みをつくっているというところです。
 第三者評価というのが導入されることが決まっておりますけれども、これについてはやはりなかなか、その情報をディスクローズするというところが難しいのかなと思いますけれども、できるだけそういった第三者の評価を導入して、それを利用されようとしている都民の方々に公開することによって、利用する人が主体的に園を選ぶというような道筋を積極的につけていただけるようにしていただくことが重要なのではないかなと思っておりまして、利用者の方々も主体的に園選択ができるようになれば、その選択に対してまた厳しい目を持って園の運営を見守っていくということになると思いますので、そういった意味から第三者評価というのを中途半端な形にせずに、しっかりしたシステムとして確立していくことが必要なのではないかなと思いますし、それによって我々もまたより質の高い保育、園運営をしていけるように、それぞれどういう成り立ちの園であっても、そういう努力のベクトルが向くというふうに考えますので、そういうふうなシステムを導入されるといいのではないかなと思っております。
 最後、「CSとESの相関図」ということで、CSというのは顧客満足で、ESというのは従業員の満足ですけれども、保育に携わる従業員の方々が満足というか、やる気を持ってやっていただくということが結果的に利用者の方々の満足を導くという、やはり保育の現場というのは人対人の仕事ですので、ここのESの満足というのが最も大事だろうと考えております。それはもちろん、給与といった待遇の面もございますけれども、それ以外にも、その仕事の社会的意義であるとか、それから、日々のお子さん方の笑顔であるとか、保護者の方々からの感謝の言葉であるとか、そういったようなことも含まれると思いますので、いかに従業員の方々、園長を初め、スタッフの人たちが誇りと自信を持って園の運営に当たれるかというようなところを企業として考え、サポートしながら、そういった仕組みづくりをしているし、やはり人というのは日々変わるものですので、今年よかったから来年もいいということではないと思いますので、利用者も変わりますし、毎年、毎年、それをきちんとチェックしていくことによって、よりよい、より高いESと、より高いCSを目指しているというのが企業ならではの――ならではのというか、現在、我々が使っている園運営の一つのシステムであります。
 それから、2点目に「サービスコストの低減」ということを言っておりますけれども、こういったお仕事の場合は、場のコストと人件費というのが全体のコストの多くを占めるものでありますので、先ほども申しましたように保育の質を担保するために、その経験というのは非常に大切なものだろうと思っておりますけれども、それだけではなくて、そのスキルと経験が発揮されることによって、先ほど言ったようなCSが高まっている状態というところをかんがみて給与を決定するというようなシステムを当社の方ではとっています。実際に、これはもう公表されているものですのでいいかなと思って入れておりますけれども、東京都の場合、区部と市部、私立というのは社会福祉法人の方の区部と市部、そして企業でコストの比較をしておりますけれども、都の区部のところを100%としますと、企業は53%のコストで運営することができるという数字になっておりますので、これは当然、公立の場合は大切な税金が使われるわけですから、コストは安い方がいいのではないかと思いますので、一概には言えないかと思いますけれども、そういった事実があるということで、コストの低減にも企業参入というのは、ある一定の役割を果たせるのではないかなと思っております。
 3番目に「ニーズに呼応した展開が可能である」ということなんですけれども、こちらは働き方そのものが非常に多様化しておりますので、その働き方の多様化に応じたサービスの多様化というのが求められているのではないかと思います。そういった意味で、その多様化に呼応するかどうかということの意思決定が早くて、柔軟性の高いのが企業なのかなと思います。園を選択する上で何を重視しますかということで、とても重視したと答えた人の割合というのを入れております。一般の方々にとっては、「園が自宅から近い」というのを一番重視する。その次に「保育時間が利用したい時間と合っている」というのが2番目です。ですので、何時から何時まで預かってもらえるのかというところが一番肝になるだろうと思っております。それ以外でも、今、仕事を持って働いていらっしゃるお母様、お父様方というのも、意識の高い方々も非常に多いですので、それだけではなくて、例えば環境はどうなのかとか、スタッフの方々の人柄とか、接し方とかはどうなのかとか、それから、極端なことを言うと、カリキュラムはどうなのかとか、そういったようなことも当然入ってきているわけですけれども、園と自宅が近いということの次に保育時間というのが重視する項目として挙がっていて、それに対してどうなのかというところを検証していかなきゃいけないだろうと思いますけれども、次のところに一般のフルタイムで働く人たちの時間帯を入れていまして、就業が20%になる時間帯というところですが、平日で8時15分から6時45分で、通勤+通園時間を前後に1時間ずつとると、朝は7時から、夜は8時ぐらいまで預かってくれるところがあれば非常にいいというのが本音なのではないかなと思われます。そういった意味で言うと、早くに終わってしまう保育園というのは、フルタイムではなかなか厳しいのかなと思います。もちろん企業の方も、時短制度とか、そういった企業努力でもって働きやすい環境づくりというのをしている企業も多くあると思いますけれども、そういうことを言うと、続けられないという人も現実的には多いだろうと思います。そうなったときにやはり安心して子どもを持って働くためにはそれなりの時間の確保が必要なのではないかなと思うわけです。
ですので、そういったところで、今後、もちろん企業の方もまだまだ経験が浅いですので、こういった仕事の経験をしっかり積んでいくことによって、安心して利用していただけるような質の高いサービスを実現していくということとともに、もっと規制緩和されることによって利用者にとって選択肢の多い状態というのがつくられていくべきではないかなと思っております。もちろん大切な小さなお子様を預かる機関ですので、すべて企業がやればいいということではないと思いますので、公的なセクターがしっかりリードして、方向性や仕組みというのをつくっていただきたいと思いますし、それが大切な役割の一つだろうと思いますけれども、すべてをやるということではなくて、うまく企業をリードしていただいて門戸が広がるようにしていただければなと思っております。
 また、人を一人育てるというのは非常にお金がかかるわけです。大学まで子ども一人出そうと思うと、大体2,000万ぐらいはかかると言われております。当然、一人当たりの生涯賃金というのは大体2億から3億と言われておりますので、その賃金の10%、子どもの育児、育成に充てるわけです。ですから、そのためにはやっぱり仕事が必要なわけで、仕事を選べるようなワークシェアの制度であるとか、それから、職業教育など仕事への道筋をつけるための支援もしくはお金そのものの支援というのもやはり行政の役わりとして必要なのかなと考えております。
 2番目に幼保の問題なんですが、「幼稚園数およびその利用者数の推移」というのを入れております。右肩下がりになっているのが幼稚園で、上がっているのが保育園です。今は完全にクロスして逆転しておりますけれども、女性の社会進出に伴って待機児童数が増えている。保育所も増えているわけですけれども、そういう現状がある一方、少子化が継続しております。昨年、115万人という出生数でしたけれども、本当に減ってきていると思いますけれども、そういったことで幼稚園は減少しているという現象がありますので、現状どおり保育園と幼稚園というその二つの制度でこれからもやっていくのかどうかといったようなところの根本的な議論が必要なのではないかなと思っております。
 幼児期というのは人間形成の本当の礎をつくる大切な時期ですので、そこの時期に一体どういう教育及び生活の環境が必要なのかといったようなことは、行政の縦割りということもあるのでしょうけれども、そういったことではなくて、本当にどういう環境を用意してあげるのがいいのかということを抜本的に考える時期に当たっているのではないかなと思います。私も仕事で中国等に行くことが多いんですけれども、中国などではもうほとんどの方が共働きです。ほとんどの子どもが朝9時から4時か5時ぐらいまで、本当にそれは国家の――まあ、私立も最近増えてきていますけれども、同じようなカリキュラム、システムの中で教育をされております。最近はいろいろ園ごとに特徴づけようということで、いろいろなカリキュラムが用意されているようですけれども、根本的な考え方というのはやっぱり統一されていると思うんです。保育に欠ける子どもが保育園に行き、そうでない子どもは幼稚園に行く、そういったようなところから脱却すべきだろうと考えています。
 最後、育児支援サービスのところですが、こちらは「親子相談室」というシステムを持っておりまして、専門家ではなくて先輩のお母さん、先輩ママが個別の悩みにお手紙で回答をお返しするというサービスをここ何年もやっておりますけれども、そういった中でわかっていることです。そこに年齢別に書いてありますけれども、子どもの性格について悩んでいるというお母さん方は非常に多いです。あとは近年の傾向として就学前に出てくるのがお友達関係ということで、友達とうまくやっていけるかとか、いじめられないだろうかとか、そういったようなお悩みが非常に多いです。年齢別に傾向を簡単にですけれども入れておりますのと、それから、「親子関係」に関するものの相談傾向ということで、例えば「父親になつかない・なつかなくなった」「母親になつかない」とか、そういったようなところ、具体的にどういう悩みなのかというところを知っていただきたいと思います。
 簡単にまとめとして、全体を通しての考察をします。平均とか正解を求める傾向が非常に増えているということなんですが、今の親御さんたちはマニュアル世代と言われた人たち、ちょっと下に当たるのかなと思いますけれども、どうやればいいのか、何が正解なのですかというところで、自分なりに工夫して試行錯誤しながらやっていこうということよりは、正解を教えてほしいというような声が多いなと感じているのと、それから、相談をしてくださる方というのは、ほとんどが専業主婦の方々です。ですので、専業主婦の方々に対する育児支援というのは手薄なんだろうと思います。
その一番大きな不満というのは、私はこんなに頑張っているのにだれにも認めてもらっていないという、そういった漠とした思いなのかなというふうに思うんですが、そういった自分の子育てを認めてもらえる場とか、それから、「それでいいのですよ、あなたなりのやり方でいいんですよ」と言ってもらえる場が必要なのかなと思います。                                                        
それから、子どもの発達については、今、情報が非常に、どんなところからも、いつでも取り出せるようなネットの環境とかも整えられてきていますのであるんですけれども、それは一面的な部分があって、言ってみればマニュアル的というか、自分の子どもがどう感じるのかとか、そういうときには親としてどう考えて対処していけばいいのかといったような一歩突っ込んだ考え方というのがなされなくて、やはり早急に答えを求めてしまうという傾向があるのかなと思います。
 幼児期の親子であっても煩わしいかかわりは避けたいという傾向があるのかなと思うんです。主にしつけに関する相談を見ていますと、「子どもが泣いて嫌がるのを無理やりやらせるのはどうかと思う」と、本来であれば、しつけというのは各ご家庭の育児方針というのがあって、そのために、毎日毎日根気づよく教え、伝えていかなければならないことの一つであると思うんですが、そういったようなことを親子でも、子どもに非常に気を遣う。よく言えば子どもを一つの人格として扱っているということにもつながるのかもしれないんですが、「彼はこういう人だから」とか、「彼女はこういう人だから」という、そういった言い方も増えてきているんです。例えば絶対に人に迷惑をかけてはいけないという我が家のしつけの方針に対して力づくでもそうさせるみたいなところの軸があまり見られなくて、とりあえずお菓子をあげてその場をやり過ごすというか、直接的な対決とか煩わしい関係というのを避けたがる傾向にあるのかなと思います。
 全体としてはそういったご報告ですが、一部飛ばしました東京都の方の東台保育園と認証保育所についてですけれども、東台の方は公設民営という事業モデルでして、こちらは先ほど門戸を開いてほしいと言ったんですか、なかなか場のコストというのが企業の中では解決できない問題としてあります。それを解決した非常に画期的なモデルだと思うんですけれども、公の方で園を建てていただいて、運営の方を受託するということです。これによっていい施設、広い施設が提供され、運営の方は低コストでできるということで、利用者、都民の方々にとっても非常にいいモデルだろうと思うわけですが、これがなかなか、まだまだ広がっていなくて、今、全国で10件ぐらいだと思うんですが、なかなか企業参入というのは認められていないような自治体も数多くあるわけなので、この辺は、なぜ企業がプロポーザルにも参加できないのかというところは、ぜひイメージだけではなくて実態を見ていただいた上で判断していただきたいなと考えております。
 前は保育料を認可の保育園の倍いただいていたのにCSは非常に低かったところが、保育料が一緒になってCSは非常に高まったという例もあります。
 認証保育所についてですが、こちらも本当に目の前の子ども、ゼロから2歳というのは非常に無認可の保育園に入りにくいですので、ここの問題解決に非常に役立つモデルだろうと思っております。ここはまだまだ私たちも実際赤字ではあるんですけれども、これから何とか企業努力でやっていける一つの突破口かなと思っております。
 企業の考え方に偏った発表になってしまい申し訳ございませんが、このようなことを考えております。以上です。

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