防災のことを考えてみませんか



  (目の不自由な方のための災害時初動行動マニュアル)



目次

はじめに

1 大規模な災害が起こると目の不自由な方はどんなことに困るのでしょうか

2 支援してくださる方へお願いしたいこと

(1)日ごろの支援について
(2)誘導(移動の手伝い)する時
(3)避難所で

3 目の不自由な方へ
(1)日ごろの備え
(2)災害が起きたら
a 地震が起きたら
b 火災や津波が起こったら
(3)避難所で

4 災害時に役立つ情報
(1)ヘルプカード(防災カード)
(2)見え方説明カード
(3)避難セット
(4)非常食などの備蓄

おわりに(大切な命を守るために)


付記
◆災害用伝言サービスとは・・・
A.災害用伝言ダイヤル(171)について
《操作手順》
《利用できる電話》
B.災害用伝言板について
C.災害用伝言サービスをもっと詳しく知りたい方は

◆福祉避難所(2次避難所)について

◆Word版マニュアルの活用方法について

◆イラスト入りWord版マニュアルがひつような方は


はじめに


 目の不自由な方が大災害に備え適切な行動をとることによって、命を守り、必要な支援を受けられるための手助けになることを願ってこのマニュアルを作成しました。
このマニュアルを目の不自由な方に繰り返し読んでいただき、災害に対する心構えを知り、できることから準備を始めてください。
 「視覚障害」についてよく知らない周囲の方々に、目の不自由なことで災害時にどのようなことに困り、どのような支援や介助が必要なのかを自ら発信し、伝えるための参考にしていただけたら幸いです。
 あなたの大切な命を守るのは、あなただということを理解していただき、このマニュアルを活用してください。


1 大規模な災害が起こると、目の不自由な方はどんなことに困るのでしょうか



■周囲の情報が入らず、適切な判断につながりません。
■被害状況がわからないため、避難場所に一人で移動することは困難です。
■建物に閉じ込められた時に捜索者の存在に気づかず、救出につながりにくくなります。
■体育館のように、広くて大勢の人がいる避難所では、一人で動くことができません。
■白杖、音声時計、視力を補うための特殊レンズなどの入手が困難になります。
■断水になると、手を洗うことや特殊コンタクトレンズを清潔に保てません。
■弱視の場合、障害(見え方)の状況がうまく説明できないために誤解され、避難所で孤立してしまうことがあります。


東日本大震災では・・・

「仮設トイレの使い方や断水時の使用方法など、トイレのことで困った」という声がとても多くありました。
その他には「いつも服用している薬や点眼薬の名前がわからず、薬が手に入らなかった」
「音声時計などがなく、時間の確認が困難だった」
「掲示物からの情報が入らなかった」
「自宅が無事だったものの、食料や水を備蓄していなかったために避難所に行ったが、誰もが混乱してサポートをお願いできる状況ではなかった」という方もいました。

  イラストの説明
イラスト1:慣れない場所では、移動に誘導が必要です。
配給の列ができているのに、並んでいる場所がわからないで困っているイラスト。
「体育館の入口前で、11時半から配ります」の張り紙。
 
イラスト2:初めてのトイレでは使い方がわかりません。
トイレの個室内でどうやって流すのかしらと水洗レバーを探している女性のイラスト。
「水はバケツからくんで流します」「トイレットペーパーは流さないでください」の張り紙あり。
使ったトイレットペーパーを捨てるゴミ箱が便器のすぐ横に置いてあります。


2 支援してくださる方へお願いしたいこと   


東日本大震災では、近隣の方の手助けが大切な命を救う大きな力となりました。
目の不自由な方は、自分から支援を頼める人をみつけることができません。
声だけでは、相手が誰か判別することができないこともあります。
支援者から名前を名のり、「お手伝いできることはありますか?」と声をかけてくださることが大切です。

(1)日ごろの支援について
・近所に住む目の不自由な方やその家族と交流を図り、コミュニケーションをとっていただけると、目の不自由な方が助けを求めたい時、支援依頼がスムーズにできるようになります。
・地域の防災訓練などへ、目の不自由な方やその家族の参加を呼びかけてください。
災害時の支援方法などについて、事前に話し合っておくことはとても大切なことです。

(2)誘導(移動の手伝い)する時                    
・どのように誘導すればよいか、目の不自由な方に確認してください。
・支援者の肩や肘などにつかまってもらい、支援者が半歩前を歩いてください。
・どこを歩いているのか、道路や周囲の危険箇所などを伝えながら誘導してください。
・目の不自由な方から離れる時は、本人の立っている場所とどの方向に何があるのかを説明し、安心してつかまっていられるものがある場所や座れる場所で誘導を終了してください。
※盲導犬ユーザーの場合も、これと同様の方法で誘導してください。
※目の不自由な方の腕や白杖をつかんだり、ひっぱったりすることや肩や背中を後ろから押して誘導しないでください。

イラストの説明
イラスト1: 誘導の基本。 
支援者の肩か肘につかまってもらい、支援者が半歩前を歩いているイラスト。

 イラスト2:手や白杖を掴まない、引っ張らない。
目の不自由な方の手を引いている不適切な誘導のイラスト。

 イラスト3:肩や背中を押さない。
目の不自由な方の背中を支援者が押して歩いている不適切な誘導のイラスト。

(3)避難所で                               
・現在いる場所や周囲の位置関係が把握しやすい場所で過ごせるよう配慮してください。(例えば「入口近くの右の隅」)トイレに行きやすい場所であることも重要です(例えば「壁伝いに移動できる場所」)。
・初めて利用するトイレへの誘導を頼まれたら、トイレの入り口ではなく個室まで案内し、水の流し方、便器の向き、トイレットペーパーの位置など中の様子を説明してください。
・掲示物は、必ず読み上げてください。
・必要な食料や救援物資などが手渡しで届くように配慮してください。
・盲導犬ユーザーと盲導犬が一緒に過ごせること、盲導犬の排泄場所について配慮してください。
・申込書などの記入を頼まれた時は、必要に応じて代筆をお願いします。


3 目の不自由な方へ



(1)日ごろの備え                             
地域の人たちに自分の障害について知ってもらうことが大切です。
・視覚障害者だと理解してもらうには、白杖を持つことが一番です。
・「災害時要援護者名簿登録制度」について、住まいのある区市町村に確認する。
・地域の防災訓練に積極的に参加する。担当者と援護方法などを話し合う。
・避難方法や連絡手段を家族などと話し合う(災害用伝言サービスの利用など)。
・災害時に役立つグッズ(携帯電話とアダプター・携帯ラジオ・ホイッスル)を使い慣れておく。
・自宅での事故やけがを防ぐために、窓ガラスなどに飛散防止フィルムを貼る。家具や家電製品に転倒防止器具をつける。

(2)災害が起きたら                            
a 地震が起きたら
・あわてた行動は絶対にしないこと。
・安全な移動手段が確保できるまでは、その場に待機する。
・揺れが落ち着いたら、家族や近所の人に自宅内や外の状況を可能な限り確認してもらう。
・すぐ持ち出せるよう、避難セットを手元に置く。(見出し4の災害時に役立つ情報 の4-3避難セット 参照)
・水道が使えるようなら、断水に備えて、容器や風呂に水を貯めておく。
・職場や外出先にいる時は、「自分の見え方(障害状況)」を説明して、 周囲の人に積極的に支援を求める。

b 火災や津波が起こったら
大声で助けを求め、支援者に安全な場所への誘導を依頼する。
・一人で、消火活動をするのは危険です。
・より高い、安全なところに逃げられるように、日ごろから「津波避難ビル」などを確認しておく。

(3)避難所で                                  
「見えないこと」やどのような支援を希望するかについて、 周囲の方や避難所の責任者に積極的に伝えることが重要です。
・避難所で一番コミュニケーションをとりやすい人にサポートを依頼し、トイレの場所や使用上の留意事項を確認する。
・支援者と相談しながら自分でできることや役割を見つけ、動かないことによるエコノミークラス症候群を予防する。


4 災害時に役立つ情報



(1)ヘルプカード(防災カード)
■あなたの命を守る大切な情報を、カードに記入して携帯しましょう。
(記入内容の例)
名前
生年月日
血液型
緊急連絡先
かかりつけ病院の連絡先
服用している薬の種類や量
医療的な配慮が必要なこと
健康保険証(種別、記号、番号)
身体障害者手帳番号など

(2)見え方説明カード
■弱視の場合、その見え方は様々です。自分の見え方を具体的に記入した説明カードを作って、いつでも誰にでも理解してもらえるように用意をしておくことは大切なことです。
(説明文の例)
・視野が狭く、中心の視力はあるので視野に入ったものは比較的遠くまで見えますが、真横や足元が見えず、一人で歩くことが困難です。
・色弱のため同系色の見分けができず、木漏れ日のような光や、石段などのような不規則な階段が苦手です。
・明暗順応が悪く、急に明るいところや暗いところにいくと、全く見えなくなってしまいます。
・視線や顔の向きを相手に合わせられず、誤解されてしまうことがあります。

(3)避難セット
■自分に必要なものを持ち出せるように準備しておきましょう。
(避難セットの例)
白杖のスペア
特殊レンズや特殊コンタクトレンズのスペア
身体障害者手帳や健康保険証や「お薬手帳」のコピー       
常時服用している薬の予備(5日分)
「防災カード」
「見え方説明カード」
飲料水・非常食
携帯ラジオ(手回し充電式、電灯、非常サイレンなどの機能付きのもの)
音声時計
生理用品・タオル・下着・ティッシュペーパー・ウェットティッシュ
軍手・乾電池・簡易カイロ
雨具・上履きなどの靴
現金(小銭を多めに)
その他必要と思われるもの(盲導犬用のドックフードなど)

(4)非常食などの備蓄                      
災害直後は誰もが混乱しています。
避難所で、障害者に配慮した支援体制が整うまで、ある程度の時間が必要なこともあります。
避難セットとは別に、1週間から10日くらいは自宅で生活できるように非常食(一度試食して、食べやすい物)・飲料水・簡易携帯トイレなどを準備しておきましょう。


おわりに(大切な命を守るために)


 大きな震災での不幸なできごとを教訓に、いつ起こるかわからない大災害に備え、私たち一人ひとりが防災に対して高い意識を持ち、できる限りの準備をすることが、あなたとあなたの家族の大切な命を守ることにつながります。
 今日から少しずつできることを準備する、小さな一歩から始めてみませんか?

作成:東京都心身障害者福祉センター
 東京都新宿区戸山3−17−2
 рO3−3203−6141



付記

◆災害用伝言サービスとは

 災害発生時などにおける通信手段で、災害用伝言ダイヤル・災害用伝言板・災害用ブロードバンド伝言板(web171)などがあります。
 地震などの大きな災害が発生すると、被災地への電話が大量に殺到し、回線が大変混雑するためつながりにくくなります。東日本大震災の直後も、携帯電話事業者によっては、最大で平常時の約50倍以上の通話が一時的に集中しました。
 通信各社では、こうした通信の混雑の影響を避けながら、家族や知人との間での安否の確認や避難場所の連絡等をスムーズに行うため、固定電話・携帯電話・インターネットによって、それぞれ「災害用伝言サービス」を提供しています。
 ここでは災害用伝言ダイヤル171の利用方法のみをお伝えします。

A.災害用伝言ダイヤル(171)について

 被災地の方が、自宅の電話番号宛に安否情報(伝言)を音声で録音(登録)し、全国からその音声を再生(確認)することができます。

《操作手順》
1. 1 7 1 をダイヤルします。
2. ガイダンスに従って、録音の場合は 1 を、再生の場合は 2 をダイヤルします。
 (暗証番号を付けて録音・再生を行うこともできます。)
3. ガイダンスに従って、自宅(被災地)の電話番号、または、連絡をとりたい被災地の方の電話番号を市外局番からダイヤルします。
4. 伝言を録音・再生することができます。

《利用できる電話》

 災害用伝言ダイヤルは、加入電話(プッシュ回線、ダイヤル回線)、公衆電話、ISDN、IP電話(050の電話番号から始まるIP電話は除く)からも利用可能です。
 詳細はご利用の電話会社にお問い合わせください。
* 提供の開始、登録できる電話番号、伝言録音時間や伝言保存期間等の運用方法・提供条件については、状況に応じてNTTが設定し、テレビ・ラジオ・インターネット等で告知されます。

B.災害用伝言板について

 携帯電話・PHSのインターネット接続機能で、被災地の方が伝言を文字によって登録し、携帯電話・PHS番号をもとにして全国から伝言を確認できるサービスです。
 提供の開始、登録可能地域等の運用方法については、状況に応じて各電気通信事業者が設定し、テレビやラジオ、インターネットで告知されます。
 災害用伝言板は携帯電話・PHS5社が個別に運営しているため、利用方法や預かった伝言の管理などの詳細についてはそれぞれの事業者ごとにお問い合わせをお願いします。

C.災害用伝言サービスをもっと詳しく知りたい方は
 総務省の次のホームページで確認をお願いします。
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/dengon.html

◆福祉避難所(2次避難所)について


 一般の避難所で過ごすことが難しい、障害を持たれた方々のために区市町村独自で指定した避難所があります。指定された福祉避難所の場所や対応についてはそれぞれの区市町村に問い合わせてご確認をお願いします。

◆Word版マニュアルの活用方法について


1.Word版は目の不自由な方が支援してくださる方に見せることによって「目が見えないとどんなことに困るのか」「安全な介助の仕方」などを支援してくださる方に 理解してもらいやすくするために文章だけでなくイラストも使用しています。
2.Word版は支援者に見せることを主眼においていることと、紙面上の制約から 「目次」「はじめに」「災害用伝言サービスについて」「福祉避難所」「Word版の活用方法については」は掲載していません。
3.Word版は支援者用(見出し1と2)目の不自由な方用(見出し3と4)に分けて活用できます。

◆イラスト入りWord版マニュアルが必要な方は

 東京都心身障害者福祉センターのホームページにこのマニュアルのWord版が掲載されています。ご自由にダウンロードしてご活用ください。

 ホームページは http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/index.html
*ご不明な点がある方は直接、東京都心身障害者福祉センターにお問い合わせください。
郵便番号 162-0823 東京都新宿区神楽河岸1番1号 セントラルプラザ
電話: 03-3235-2952

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