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食の発見インタビュー

私たちが生きていくために欠かせない「食」。
その「食」について幅広い知識をお持ちの服部幸應先生に、ご自身のライフワークともなっている食育のことをはじめ、日常の食生活の中で身につけたい力や意識などについてお話を伺いました。


食育と食の安全

●食育のきっかけ

服部幸應さん

今から20年以上前、当校の新入生に1週間分の食事日記を書いてもらったことがあります。調理師や栄養士などを目指している学生たちの食実態がどのようなものか調べてみようと、いわば思いつきで、最初の授業日に宿題としたのです。


ところが、提出された日記を見て愕然としました。朝食抜き、バランスの悪い食生活で、無理なダイエットをしている学生がとても多かった。そこで「食のプロになろうとしている者がこれではいけない。卒業するまでにきちんと改善しなさい」と言って聞かせたのですが、2年後の卒業前、もう一度食事日記を提出させたところ、改善率はたったの6%。しかし、彼らは理想的な献立を作るテストなどでは高得点が取れているのです。つまり、頭で分かってはいても、生活習慣は簡単に変えられないということなんですね。同じ調査をほかの大学、短大、専門学校でも実施してみましたが、改善率はやはり5〜6%。幼児期から身についてしまった習慣は、18〜20歳になると変えられないことを痛感したのです。この出来事が、私が食育について考え、その重要性を訴え始めたきっかけです。


●食育の3本柱とは

「食育基本法」が2005年7月15日に施行されてから5年たち、食育という言葉を知っている人は増えましたが、食育を「親子料理教室」や「農業体験」だと思っている人も多いようです。これも一つの施策ではありますが、食育の範囲はもっと広いものです。大きく分けると3つの柱に集約できます。


1つ目は「選食力」。これは、安全・安心・健康のために、どのような物を食べたらよいのかを判断し、選ぶための知識を身につけることです。農薬や添加物、遺伝子組み換え食品、食品表示の見方、個々の食材の特徴や栄養素のことなど、さまざまな知識が必要になります。


2つ目が「衣食住の伝承」。箸を正しく持つことや「いただきます」「ごちそうさま」をきちんと言うなどの食生活の基本をはじめ、人間としての素養を養うことです。


3番目は「食料問題と環境問題」。日本の食料自給率や今後の食料生産力を高める方策のことや、世界中には飢えている人々がたくさんいること、それに対し日本では大量の残飯を捨てていることなど、食をグローバルな視点で認識し、考える必要があります。さらには、環境問題やリサイクルなども関わってきます。


これらは本来、幼少の頃から家庭においても教えられるべき事柄ですが、家庭の食が乱れていたり、親が十分に躾をできていない傾向もあるため、 食育を国民運動として広げていくことが必要なのです。


●食中毒予防のために

食育の1つ目の柱である「選食力」を養うためには、農薬や添加物、食品表示の見方、栄養素のバランス、旬のことなど、いろいろな知識が必要になりますが、ここには食中毒に関する知識も含まれてきます。近頃は食中毒への警戒心が薄れているようですが、毎年2万人以上の患者が発生しているのですから軽視はできません。近年被害が増えているカンピロバクターをはじめ、サルモネラ菌黄色ブドウ球菌ノロウイルスなど、それぞれの食中毒菌の特徴を知って、しっかり予防してほしいと思います。


当校は現在もさまざまなテレビ番組に協力していますが、食中毒を出さないために毎回細心の注意を払い、予防に努めています。たとえ1度でも事故が起きれば、その番組に出演しているタレントさんをはじめ多くの人が倒れてしまう。それは絶対にあってはいけないことなのです。ですから、食材選びには2重、3重のチェックを重ね、運搬にも冷蔵車や冷凍車を使うなど慎重に慎重を重ねてやっていますし、たとえ相手からリクエストがあっても、その食品に何らかの危険性があれば、「万一のことがあるといけないからやめましょう」と説得しています。


しかし、その一方で、食中毒に関する知識を持たずに食材を扱っている飲食店も多いのが残念です。例えば、昔から淡水に住む川魚や池の魚には寄生虫が多いため、生で食べない方がいいとされてきました。しかし、今はグルメ志向の影響か、生で食べさせてしまう店もあったりしてびっくりします。


みなさんが日頃から食中毒のことをはじめ、食材に関する正確な知識を身につけておくことは大切です。また、体力をつけることも肝心。体力や免疫力が弱いと食中毒菌に打ち勝てず発症しやすいからです。



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