タイトル、平成30年10月改定版、東京都障害者差別解消法ハンドブック 〜みんなで支え合い、つながる社会をめざして〜 すけだちくんのイラスト 東京都福祉保健局 はじめに  障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」といいます。)は、我が国が障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」といいます。)を締結するに当たり、国内で進められた法整備の一環として定められたものです。  私たちが暮らす社会には、様々な障害のある方が、色々な施設やサービス等を利用して生活していますが、社会にはそうした方々を想定していない物やサービスがたくさんあり、障害のある方の暮らしにおける障壁となっています。  このため、障害者差別解消法は、行政機関等や事業者に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止しています。  また、障害のある方が直面する社会的障壁について、本人の求めに応じて合理的な配慮の提供を行うことを義務付けています。  このハンドブックは、平成28年4月の障害者差別解消法の施行に当たり、都内の自治体職員や、事業者の方々が、日々の活動の中で配慮すべき事項を分かりやすくまとめ、対応の具体例を提示するとともに、様々な障害の特性についても分かりやすく説明したもので、東京都の職員対応要領を補完する役割も有しています。  また、H30.10改定版では、平成30年10月の東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例(以下「東京都障害者差別解消条例」又は「都条例」といいます。)の施行に当たり、新たに条例で定めた事業者による合理的配慮の提供の義務化や紛争解決の仕組みなどについて、分かりやすい説明を追加しました。  障害者に対する差別を無くしていくためには、皆様一人ひとりが、障害のある方のことを「知らない」「分からない」とせず、自分たちの職場や地域で起こり得ることとできることを考え、障害のある方と対話をし、具体的に行動することが大切です。 多くの方々にこのハンドブックを活用していただき、それぞれの立場から取組を進めていくことで、東京に暮らし、東京を訪れる全ての人が、障害の有無によって分け隔てられることなく、支え合う共生社会を実現していきたいと考えています。 目次 第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律とは 1 法の概要 1ページ 2 行政機関など及び事業者に求められること 4ページ コラム 改正障害者雇用促進法について 6ページ コラム 社会的障壁とは 7ページ コラム 障害の社会モデルとは 8ページ 第2 障害者差別を解消するには 1 不当な差別的取扱いの禁止 9ページ 1 基本的考えかた 2 不当な差別的取扱いの具体例 3 正当な理由の判断の視点 2 合理的配慮の提供 11ページ 1 基本的考えかた 2 意思の表明の方法 3 建設的対話について 4 過重な負担の考慮事項 第3 東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例とは 1 条例制定の背景 15ページ 2 事業者による合理的配慮の提供の義務化 15ページ 1 都条例における事業者とは 2 都内で事業を行う事業者に求められること 3 相談体制について 17ページ 1 広域支援相談員による相談受付 2 広域支援相談員の業務 3 相談体制における区市町村との関係について            4 紛争解決の仕組み 18ページ 1 あっせん 2 勧告 3 公表 5 共生社会実現のための基本的施策 20ページ 1 情報保障の推進 2 言語としての手話の普及 3 教育の推進 4 事業者による取組の支援 第4 様々な場面における対応の例 1 対応の基本と考えかた 21ページ 2 様々な場面における対応の例 24ページ 1 行政機関などや店舗などにおける対応の例 24ページ 1 案内、誘導 2 相談、説明 3 手続 コラム 知っていますか、手話通訳者などの守秘義務について 29ページ 4 情報アクセシビリティ コラム 開催通知などの例、参加申込書の例 32ページ 5 緊急時の対応 コラム 配慮の例、カードルールの導入 34ページ 2 生活場面ごとの合理的配慮の提供等の例     35ページ 1 学校など 2 病院、福祉施設など 3 交通、(鉄道、バス、タクシー、飛行機など) 4 住まい 5 銀行など 6 小売店、飲食店など コラム 障害者差別解消法、合理的配慮とうの好事例集、様々な場面における相談事例からについて 38ページ コラム 身体障害者補助犬とは 39ページ 3 環境の整備     40ページ コラム 音声による情報保障、DAISY、音声コード 41ページ コラム 情報保障の推進に係る各局の取組を紹介 42ページ コラム 福祉のまちづくりの取組を紹介 44ページ コラム ヒアリングループ、かっこ磁気ループについて 45ページ 第5 害特性について 1 視覚障害 47ページ 2 聴覚障害 49ページ 3 盲ろう  51ページ 4 肢体不自由 52ページ 5 構音障害  54ページ 6 失語症   54ページ 7 高次脳機能障害 55ページ 8 内部障害  57ページ 9 重症心身障害、その他医療的ケアが必要な障害者 59ページ 10 知的障害 60ページ 11 発達障害 61ページ 12 精神障害 63ページ 13 難病 67ページ コラム ヘルプマーク 69ページ コラム ヘルプカード 70ページ 第6 相談体制の整備等 1 相談体制の整備について 71ページ コラム 障害者差別解消支援地域協議会とは 72ページ 2 参考情報 73ページ (1ページ) 第1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律とは、 1 法の概要 目的 この法律は、障害のあるかたへの差別をなくすことで、障害のある人もない人も共に生きる社会をつくることを目指しています。 対象範囲等 1 障害者 心身の機能の障害があり、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活や社会生活に相当な制限を受ける状態にある人のことです。障害者手帳のないかたも含みます。 2 行政機関等 国の府省庁や都道府県、区市町村などのことです。 3 事業者 商業その他の事業を行う企業や団体、店舗などのことで、個人事業者や非営利のものも含みます。地方公営企業を含みます。 4 対象となる分野 障害者が日常生活や社会生活で関わる全ての分野が対象です。 障害者雇用に係る分野を除きます。 差別解消のための措置等 1 不当な差別的取扱いの禁止、行政機関等、事業者ともに法的義務 2 合理的配慮の提供、行政機関等は法的義務、事業者は努力義務 都条例では、事業者にも合理的配慮の提供が義務付けられています。 差別解消のための支援措置など、 国や地方公共団体は、相談・紛争解決の体制整備、地域における連携、普及・啓発活動の実施などの取組を行うものとされています。 (2ページ) 1 目的 ○ 障害者差別解消法は、我が国が障害者権利条約を締結する際の国内法の整備の一環として定められたものです。全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を社会において推進することを目的に制定されました。 2 対象範囲など 1 障害者 ○ 障害者差別解消法において障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)そのたの心身の機能の障害(以下、障害と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものとしています。 ※ 障害の社会モデルの考え方を踏まえた障害者基本法における、障害者の定義と同じ定義です。 ※ 障害の社会モデルとは、 障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能の障害のみならず、社会における様々な障壁(バリア)と、相対することによって生ずるものとする考え方です(「障害の社会モデル」の詳細は、8ページ参照)。 ○ また、例えば女性の障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があること等にも留意が必要です。 2 行政機関等 ○ 行政機関等とは、国の府省庁や独立行政法人など、都道府県や区市町村といった地方公共団体(地方公営企業を除く。)及び地方独立行政法人をいいます。 3 事業者 ○ 事業者とは、商業そのたの事業を行う者のことです。事業の分野や目的の営利、非営利、個人、法人の別を問わず、同種の行為を反復継続する意思をもって行う者であり、個人事業者や、対価を得ない無報酬の事業を行う者も対象となります(地方公営企業を含む)。 (3ページ) 4 対象となる分野、 ○ 障害者差別解消法は、障害者の日常生活及び社会生活全般に係る幅広い分野を対象としています。ただし、行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う措置については、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)の定めるところによります。(障害者雇用促進法の詳細は、6ページ参照)。 ○ なお、障害者差別解消法における差別は、一般のかたが個人的な関係で障害者と接するような場合や、個人の思想、言論等は対象にしていませんが、差別の解消を進め、障害のある人もない人も共に支え合う共生社会を実現していくためには、都民の皆さまの理解、協力が欠かせません。 3 差別解消のための措置など ○ 行政機関等や事業者は、不当な差別的取扱いが禁止され、合理的配慮の提供が求められます。次ページ以降で詳しく解説します。 4 差別解消のための支援措置など ○ 差別解消のための措置に対応するため、国が策定した基本方針に基づき、行政機関等では、対応要領を策定することとされ(地方公共団体等は努力義務)、事業者に対しては、主務大臣が事業分野ごとに対応指針(ガイドライン)を策定しています。(対応指針の詳細は、5ページ参照) ○ なお、事業者における取組が適切に行われるための仕組みとして、同一の事業者によって繰り返し障害者の権利侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合などには、その事業者の事業を担当する大臣が、事業者に対し、報告を求めたり、又は助言、指導若しくは勧告を行うといった行政措置を行うことができることとなっています。都条例では、公表の措置まで定めています。 (4ページ) 2 行政機関等及び事業者に求められること 行政機関等 不当な差別的取扱いの禁止(法的義務)、合理的配慮の提供(法的義務)、職員対応要領を遵守。 事業者、 不当な差別的取扱いの禁止(法的義務)、合理的配慮の提供(努力義務)、 分野ごとの対応指針を遵守、 都条例では、事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられています。 1 行政機関等の職員に求められること ○ 東京都や区市町村といった地方公共団体は、国と同様、障害者差別の解消に率先して取り組む主体として、「不当な差別的取扱いの禁止」、及び「合理的配慮の提供」が法的義務とされています。(詳細は、9ページから14ページ参照)、 ○ 東京都では、職員の服務規律の一環として、職員対応要領を定めており、本ハンドブックは、これを補完するものです。9ページ以降に記載している対応の考えかたや具体的な事例を踏まえ、東京都職員は適切な対応を取らなくてはなりません。 ○ 東京都が設置する施設や、事業所等で、主務大臣が定める対応指針の分野に係る事業者として、事業を行う場合やこれに類似する事業を行う場合等は、本ハンドブックだけでなく、該当分野の対応指針にも従う必要があります。 ○ また、行政機関等が施設の運営や事務、事業を事業者に委託する場合等には、事業者が、適切に合理的配慮を提供するよう留意が必要です。 ○ 区市町村においても、職員対応要領を作成し、障害者差別の解消に向けた取組を行う際の参考として、本ハンドブックを御活用ください。 事業者に求められること ○ 事業者には、不当な差別的取扱いの禁止が義務付けられる一方、その事業内容や規模により、障害のある方との関わり方や求められる配慮も多種多様であることから、合理的配慮の提供については、法においては努力義務とされています。ただし、都条例においては、事業者についても合理的配慮の提供を義務としています。事業者は、対応指針に従い、積極的な取組が求められます。 (5ページ) ○ 障害のある方への合理的配慮の提供を行うことは、障害者への理解を深め、障害者差別を解消するとともに、施設などの利便性やサービスの質を向上させ、誰にでも優しく使いやすい施設等やサービスを提供することにもつながります。 ○ 本ハンドブックには、行政機関等のみならず、事業者にも共通する考え方や、具体例を盛り込んでいますので、実際の場面での参考として御活用ください。 ※対応指針とは、 各府省庁において、所管する事業分野ごとに、事業者の適切な対応、判断に資するために、主務大臣が作成した指針(ガイドライン) をさします。 例 ○内閣府(認定こども園) ○文部科学省(教育分野、スポーツ分野、文化芸術分野など) ○国土交通省(不動産関係、設計等業関係、鉄道事業関係、旅行業関係等) ○厚生労働省(福祉事業者、衛生事業者、医療関係事業者等)等 なお、各府省庁の定める対応指針は、内閣府ホームページで確認できます。(URLは、73ページ参照) 【障害者差別解消法の概要の図】  1、差別を解消するための措置  差別的取扱いの禁止  国、地方公共団体等、民間事業者、法的義務  合理的配慮の提供  国、地方公共団体等、法的義務  民間事業者、努力義務  具体的な対応  1 政府全体の方針として、差別の解消の推進に関する基本方針を策定(閣議決定)  2 国、地方公共団体等→当該機関における取組に関する要領を策定(※地方の策定は努力義務)  民間事業者→主務大臣が事業分野別の対応指針(ガイドライン)を策定   実効性の確保  ●主務大臣による民間事業者に対する報告徴収、助言、指導、勧告  2、差別を解消するための支援措置  紛争解決、相談  ●相談・紛争解決の体制整備→既存の相談・紛争解決の制度の活用、充実  地域における連携  ●障害者差別解消支援地域協議会における関係機関などの連携  啓発活動  ●普及・啓発活動の実施  情報収集等  ●国内外における差別及び差別の解消に向けた、取組に関わる情報の収集、整理及び提供 (6ページ) コラム 改正障害者雇用促進法について 事業主の障害者に対する差別の禁止、及び合理的配慮の提供義務を規定した、 改正障害者雇用促進法が、平成28年4月から施行されています。 改正のポイント 1 雇用の分野での障害者差別を禁止 障害者であることを理由とした障害のない人との不当な差別的取扱いを禁止 2 雇用の分野での合理的配慮の提供義務 障害者に対する合理的配慮(雇用分野における障害者に対する差別の禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置)の提供を義務付け 3 相談体制の整備、苦情処理・紛争解決の援助 障害者からの相談に対応する体制の整備を義務付け 障害者からの苦情を自主的に解決することは努力義務 【差別の主な具体例】 1 募集・採用の機会 ・ 身体障害、知的障害、精神障害、車いすの使用、人工呼吸器の使用等を理由として、採用を拒否すること 等 2 賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用 障害者であることを理由として、以下のような不当な差別的取扱いを行うこと ・ 賃金を引き下げること、低い賃金を設定すること、昇給をさせないこと、 ・ 研修、現場実習を受けさせないこと ・ 食堂や休憩室の利用を認めないこと 等 合理的配慮の提供の主な具体例 1 募集・採用の配慮 ・ 採用試験の問題用紙を、点訳・音訳すること、試験などで、拡大読書器を利用できるようにすること、試験の回答時間を延長すること・回答方法を工夫すること 等 (7ページ) 2 施設の整備、援助を行う者の配置 ・ 車いす使用者に合わせて、机や作業台の高さを調整すること ・ 文字だけでなく、口頭での説明を行うこと、口頭だけでなく分かりやすい文書・絵図を用いて説明すること、筆談ができるようにすること ・ 手話通訳者や要約筆記者を配置・派遣すること、雇用主との間で調整する、相談員を置くこと ・ 通勤時のラッシュを避けるため勤務時間を変更すること 等 ※詳しくは、厚生労働省のホームページを参照してください。 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html コラム 社会的障壁とは 社会的障壁については、法において障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念そのた一切のものをいう。と定義されていますが、具体的にはどういったものになるでしょうか。 社会的障壁の例 ・事物、通行や利用がしにくい施設、設備等(例:入口の幅が狭く、車いすで通れない) ・制度、利用しにくい制度(例:障害があると加入できない会員規約 等) ・慣行、障害のあるかたの存在を意識していない、慣習や文化等 (例:講演会の申込み先が、電話番号しか示されていないため、聴覚・言語障害者が申し込めない 等) ・観念、障害のある方への偏見等 (例:障害のある方は、まるまると思うに違いない 等) (8ページ) コラム 障害の社会モデルとは 障害の社会モデルとは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能の障害のみならず、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるという考え方です。 具体的にはどういったものでしょうか。7ページにある「社会的障壁」と関連づけて考えてみましょう。 障害の社会モデルの例 1 講演会の申込先が電話番号しか示されていないため、聴覚・言語障害者が申し込めない。 →「慣行」による「社会的障壁」があるケース。 2 入口の幅が狭く、車いすで通れない。 →「事物」による「社会的障壁」があるケース。 上記のケースについて、どのような解決策が考えられるでしょうか。 例えば、1については、申込方法についてメールでも受け付けることで解決できます。                                  また、2については、工事により入口を広げるといったハード面での対応や、荷物搬入口など幅の広い別の入口を案内するといったソフト面での対応が考えられます。                                                          障害者権利条約では、障害の社会モデルの考え方に基づき、社会の側に障壁を取り除く責任があり、不当な差別的取扱いと合理的配慮を提供しないことは、どちらも差別に当たるとされています。 障害の社会モデルの考え方に立つことで、社会の中で見過ごされている差別に気付くことができるかもしれません。そのような差別に気付き、どのようにすれば取り除くことができるか、考えていきましょう。 (9ページ) 第2 障害者差別を解消するには 1 不当な差別的取扱いの禁止 ・不当な差別的取扱いとは、障害を理由として、正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為をいいます。 ・行政機関等又は事業者は、正当な理由なく、障害者の権利利益を侵害してはなりません。 ・障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別な措置を行うことは、不当な差別的取扱いには当たりません。 ・正当な理由に相当するか否かは、個別の事案ごとに判断することが必要です。 1 基本的考えかた ○ 障害者差別解消法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、サービス等の提供を拒否する、サービス等の提供に当たって、場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付すなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。 ○ なお、障害者を障害者でない者と事実上平等にするために、障害者に対して特別な対応をすることは、不当な差別的取扱いではありません。 ○ 障害者を障害者でない者と事実上平等にする対応は、下記のような対応を指します。 ・ 障害者に対して障害者でない者と平等な機会をつくるために、必要な範囲で、障害者を障害者でない者よりも優遇すること(いわゆる積極的改善措置)。 ・ 障害者差別解消法に規定された合理的配慮の提供により、障害者でない者と異なる取扱いをすること。 ・ 合理的配慮を提供するために、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認すること。 ○ つまり、不当な差別的取扱いとは、事務・事業の諸事情が同じ状況において、正当な理由なく、障害者を障害者でない者より不利に取り扱うことを指します。 (10ページ) 2 不当な差別的取扱いの具体例 ○ 次のような取扱いをすることは不当な差別的取扱いとなるおそれがあります。 ・ 障害があることを理由に、窓口での対応を拒んだり、本人の同意なく、対応の順番を後回しにする。 ・ 障害があることを理由に、書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。 ・ 障害があることを理由に、説明会、行事等への参加を拒んだり、施設等の利用を制限する。 ・ 事務、事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害があることを理由に、来庁等の際に、付添者の同行を求めるなどの条件を付ける。 ○ なお、具体例はあくまで例示であり、また、個別の事案において正当な理由が認められるときは、不当な差別的取扱いと判断されない場合があります。 3 正当な理由の判断の視点 ○ 障害者に対する各種行為が、不当な差別的取扱いであるかどうかは、正当な理由の有無により判断されます。 ○ 正当な理由に相当するのは、それが客観的に正当な目的(例:安全の確保、財産の保全、事務又は事業の目的、内容、機能の維持、損害発生の防止等)のもとに行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。 ○ 正当な理由に相当するかどうかは、事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益の保護等の観点から、具体的場面や、状況に応じて総合的、客観的に判断することが必要です。 ○ 客観的に判断するにあたっては、その主張が、客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような、客観性があることが必要です。 ○ 各主体において、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが必要です。 ○ なお、正当な理由があることを根拠に、対応しないというのは、障害者差別解消法の趣旨に照らし合わせて適当ではありません。例えば、単に事故の危険が想定されるといった不確実な理由によりサービスを提供しないことは適切ではありません。他に何か解決する方法はないか、障害者とも話合いを行うなどしながら、柔軟に考え、取り組んでいくことが必要です。 (11ページ) 2 合理的配慮の提供 ・ 合理的配慮の提供とは、障害者から社会的障壁の除去(「社会的障壁」の詳細は、7ページ参照)を必要としている旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときに、社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組を行うことをいいます。 ・ 行政機関等は、合理的配慮の提供が法的義務です。事業者は、法においては努力義務ですが、都条例においては、合理的配慮の提供が義務付けられています。 ・ 合理的配慮の提供の方法は一つではなく、申出のあった方法では対応が難しい場合でも、建設的対話を通じて、代替措置の選択も含め、柔軟に対応することが重要です。 ・ 過重な負担については、個別の事案ごとに行政機関等及び事業者が、事務・事業への影響の程度等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断し、障害者に説明することが必要です。 ・ なお、合理的配慮の提供は、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置であるため、不特定多数の障害者を主な対象として行われる措置である「環境の整備」(環境の整備の詳細は、40ページ参照)とは異なります。 1 基本的考えかた ○ 障害者差別解消法は、行政機関等に対し、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮、以下、合理的配慮、といいます。を行うことを求めています。 ○ 事業者については、法においては、合理的な配慮をするように努めなければならないとしています。なお、都条例においては、共生社会の実現に向けた取組を一層進めるため、事業者による合理的配慮の提供を義務化しています。 (12ページ) ○ 合理的配慮の考え方は、障害者権利条約の他の物との平等の考え方が重要です。障害のある方は、ある目的に対して、障害の特性に応じて、障害のない方とは異なる手段や方法を選択することで、障害のない方と平等な結果を得られるようになります。 ○ 合理的配慮の提供は、障害の特性や具体的場面によって異なる、多様で個別性の高いものです。障害者が実際に置かれている状況を踏まえ、選択し得る手段や方法について、「過重な負担」を伴うものかどうか、様々な要素を考慮することが必要です。 そして、双方の建設的対話による相互理解を通じ、代替措置の選択も含め、柔軟に対応がなされることが必要です。 ○ なお、いわゆるバリアフリー化や情報保障のための機器の導入を行うことなどは、「環境の整備」として、「合理的配慮の提供」とは異なる概念になります(環境の整備の詳細は、40ページ参照)。 ○ また、合理的配慮の提供にあたっては、下記事項に留意することが必要です。 ・事務又は事業の目的、内容、機能の本質的な変更には及ばないこと。 ・合理的配慮の内容などは、当事者に直接確認していくこと。 ・合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化などに応じて変更すべきものであること。 ○ 合理的配慮の提供の具体例については、第4、様々な場面における対応の例 (21ページ以降)で詳しく説明しています。 2 意思の表明の方法、 ○ 意思の表明の方法は、言語(手話を含みます。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサインなどによる合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含みます。)によって行われます。 ○ また、障害者本人からの意思の表明だけでなく、知的障害や発達障害を含む精神障害等により本人からの意思の表明が困難な場合には、障害者の家族、支援者・介助者、法定代理人など、コミュニケーションを支援する者が、本人を補佐して行うものも含まれます。 ○ なお、障害者などから意思の表明がない場合であっても、障害者が、社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときには、当該障害者に対して、適切と思われる配慮を行うために、各主体から障害者に対しが、建設的対話を積極的に働きかけるなど、自主的に取り組むことが望ましいといえます。 (13ページ) 3 建設的対話について ○ 合理的配慮の提供に当たっては、障害者からの社会的障壁の除去についての申出の内容(社会的障壁の詳細は、7ページ参照)と、その申出に対し過重な負担のない範囲でできる対応について、障害者と事業者が対話を重ね、解決策を検討していくことがとても重要です。このような双方のやりとりを建設的対話といいます。 ○ 合理的配慮の方法は、一つではありません。申出のあった方法では対応が難しい場合でも、お互いが持っている情報や意見を伝え合い、建設的対話に努めることで、目的に応じて代替となる手段を見つけていくことができます。    ○ なお、事業者が次ページ4、過重な負担の考慮事項に照らし合わせ、過重な負担に当たると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、障害者の理解を得るよう努めることが必要です。 ○ このような、建設的対話を通じて、様々な障害のある方や、その方を取り巻く社会的障壁を理解していくことが、差別のない社会の実現につながります。 (14ページ) 過重な負担の考慮事項 ○ 合理的配慮の提供は、ここまでしなければならない、という一律の考えかたは馴染みません。過重な負担については、以下の視点を踏まえ、個別の状況などに基づき、総合的・客観的に判断することが必要です。  1 事務・事業への影響の程度 ・ 事務・事業の目的、内容、機能を損なうか否か ・ 当該措置を、講ずることによる、サービス提供への影響、その他の事業への、影響の程度 2 実現可能性の程度(物理てき・技術てき制約、じんてき・体制上の制約) ・ 施設の立地状況や、所有形態等、当該措置を講ずるための機器や技術、人材の確保、設備の整備等の制約に応じた実現可能性の程度 3 費用の程度 ・ 当該措置を講ずることによる費用の程度 4 事務・事業規模 ・ 当該事業所等の規模に応じた負担の程度 5 財政・財務状況 ・ 当該事業所等の財政・財務状況に応じた負担の程度 (15ページ) 第3 東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例とは 1 条例制定の背景 ○ 東京都では、社会全体で障害者への理解を深め、差別を無くす取組を一層推進するため、平成29年3月より、障害のあるかた、事業者や学識経験者など様々な立場のかたで構成される委員会において、条例制定の検討を行ってきました。 ○ 東京都は、障害者権利条約、障害者基本法及び障害者差別解消法の理念のもと、障害を理由とする差別を禁止するとともに、建設的対話等を通じて、差別を解消していく仕組みを定めることにより、東京に暮らし、東京を訪れる全ての人が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指し、平成30年に東京都障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例を制定しました。 2 事業者による「合理的配慮の提供」の義務化 1 都条例における事業者とは ○ 都条例の対象となる事業者は都内で事業を行うものです。 ○ 例えば、事業者の本社や事務所が都内にあっても、都内で事業を行っていなければ、都条例の対象とはなりません。一方で、都内で事業を行っていれば、事業者の本社や事務所が都外であっても、都条例の対象となります。 2 都内で事業を行う事業者に求められること ○  障害者への制限は、社会における様々な障壁と相対することで生じているという、障害の社会モデル、障害の社会モデルの詳細は、8ぺージ参照、の考えかたに基づき、都条例では、事業者の合理的配慮の提供を義務化(法においては努力義務)し、いわゆる法の上乗せをしています。 ○ 「合理的配慮の提供」として求められることは、障害者差別解消法で求められていることと変わらず、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置であり、環境の整備、とは異なります、(合理的配慮の提供の詳細は、11ページから14ページ参照・環境の整備の詳細は、40ページ参照)。 (16ページ) ○ なお、合理的配慮の提供に当たっては、「過重な負担がなく」できることは何か、障害者・事業者の双方が対話による相互理解を通じて、代替手段の検討も含めて問題の解決を図ることがとても重要です。 すけだちくんふきだし、すけだちくんのイラストあり 問題の解決方法は1つではありません。 「建設的対話」などを通じて、障害者・事業者双方が理解し合い、柔軟な解決方法を探していくことが必要です。 【障害者差別解消法と都条例の比較】 障害者差別解消法、 不当な差別的取扱い、行政機関、してはいけない、事業者、してはいけない。 合理的配慮の提供、 行政機関、しなければならない、事業者、するように努力する。 都条例 不当な差別的取扱い、行政機関および事業者、してはいけない。 合理的配慮の提供、行政機関および事業者、しなければならない。 (17ページ) 3 相談体制について 都条例では、行政機関等、事業者による不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供等について、新たに相談体制を設けました。 相談体制の図 障害者と事業者、行政機関などで障害者差別に関する事案があった場合、 区市町村、身近な相談機関などや広域支援相談員へ相談できることを示した図 1 広域支援相談員による相談受付 ○  東京都及び区市町村において、既に障害者差別解消法に係る相談体制を整えていますが、都条例制定に伴い、知識経験のある広域支援相談員を東京都に配置しています。 ○  障害者御本人や周りの関係者の方からの相談はもちろんのこと、事業者からの相談も含め、幅広く相談を受け付けます。 2 広域支援相談員の業務 ○  広域支援相談員は、区市町村と連携し、相談者への助言や調査、情報提供及び関係者間の調整などを行います。 3 相談体制における区市町村との関係について ○  東京都では、障害者の権利擁護の観点から、重層的に相談を受け付ける体制が望ましいと考えています。 ○ そのため、お住まいの区市町村窓口でも東京都の広域支援相談員でも、相談者が望む相談先に相談していただくことができます。 (18ページ) 4 紛争解決の仕組み 都条例では、広域支援相談員に相談しても、なお紛争事案が解決されない場合の紛争解決の仕組みとして、あっせん、勧告及び公表の手続を設けました。 手続に当たっては、公正中立な東京都障害を理由とする差別解消のための調整委員会、以下調整委員会といいます。が関わり、解決を目指します。 紛争解決の仕組みの図  障害者差別に関する事案について、事業者、障害者が、広域支援相談員に相談する。 相談しても解決しない場合、障害者より あっせんの求めのやじるし。 あっせんは調整委員会がかかわる、従わない場合、勧告、従わない場合、公表、の図。 1 あっせん ○ 広域支援相談員に相談をしても、障害者・事業者の間の問題が解決されない場合、紛争事案の当事者である障害者は、東京都に「あっせん」を求めることができます。あっせんとは、公正かつ中立な第三者機関である調整委員会による解決を目指すものです。 ○ あっせんを行うことが適当である場合、東京都から調整委員会へあっせんを求め、調整委員会は公正かつ中立に審議・事実調査を行った上で、紛争事案の当事者にあっせん案、つまり解決案、を示します。 ○ なお、都内の行政機関(国、独立行政法人、地方公共団体及び地方独立行政法人)については、地方公務員法などによる紛争解決の手段があるため、あっせんの対象外です。 2 勧告 ○ あっせんを行っても問題が解決されず、それが特に悪質な事案である場合、調整委員会は、知事に対し勧告を行うよう求めることができます。 ○ 勧告とは、東京都から、事業者に対し、事業者による不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供など必要な対応をするよう求めるものです。 (19ページ) 3 公表 ○ 勧告を行っても、事業者が正当な理由なく勧告に従わないときは、東京都はその旨を公表することができます。 ○ なお、公表は社会的影響が大きいため、実施に当たっては、あらかじめそのことを事業者に通知し、意見を聴取するなど、慎重な手続を行います。 ○ 勧告も公表も、事業者を対象としており、事業者の従業員を公表することはありません。 すけだちくんのふきだし、 東京都では、平成30年3月に「障害者差別解消法 合理的配慮とうの好事例集(様々な場面における相談事例から)」も作成しているので是非ご一読ください。 (20ページ) 5 共生社会実現のための基本的施策 東京都は、以下のとおり、共生社会実現のための基本的施策に取り組みます。 1 情報保障の推進 ○ 障害者への理解を深め共生社会を実現する上で、障害者が必要な情報を取得することは必要不可欠です。また、情報保障を行うことで、障害の有無に関わらず全ての人の間で相互理解やコミュニケーションを促進することができます。 ○ そのため、東京都は、障害者のみならず都民及び事業者にとっても重要であると考え、情報保障の推進に引き続き取り組んでいきます。 2 言語としての手話の普及 ○ 障害者権利条約や障害者基本法では、手話は言語として規定されており、東京都は、手話は一つの言語であるという認識に立ち、この認識を広げることは重要であると考えています。 ○ そのため、東京都は、手話は音声言語と対等であるという「言語としての 手話」の認識を広げることや、都民及び事業者において手話の利用が進むよう取り組んでいきます。 3 教育の推進 ○ 障害のある人もない人もともに暮らす社会の実現に向け、すべての教育関係者、幼児、児童、生徒が、障害、障害者及び障害の社会モデルや差別の解消に関する理解を深めることは重要です。 ○ そのため、東京都は、幼児、児童、生徒に対し、障害などへの理解を深める教育を推進するとともに、引き続き教育関係者に対し、人権課題について正しい理解と認識を深める研修などを実施していきます。 4 事業者による取組の支援 ○ 合理的配慮の提供の義務化は、事業者が過重な負担のない範囲で取り組むべきものですが、どのように取り組むべきか迷うことが想定されます。 ○ そのため、東京都は、障害者と事業者の間で生じた相談解決に向けて支援を行うとともに、研修等を通じて、合理的配慮の提供に関する考え方や好事例などを広く周知することにより理解促進を図っていきます。 (21ページ) 第4 様々な場面における対応の例 1 対応の基本と考えかた、 1 相手の「人格」を尊重し、相手の立場にたって対応します。 2 困っている方には進んで声をかけます。 3 コミュニケーションを大切に、柔軟な対応を心がけます。 4 言葉遣いやプライバシーにも配慮します。 ・ 障害者だからと特別扱いをするのではなく、まずは接遇の基本に立ち返り、丁寧な対応を心がけることが大切です。 ・ 障害者差別解消法が求める対応は、特に新しいものではなく、従来から様々な場面で行われてきた配慮などもたくさん含まれています。 ○ 障害者差別解消法は、全て一律の対応ではなく、様々な場合や、障害のある方の状況に応じ、柔軟に対応することを求めています。 ○ また、障害者に対し、障害に関する配慮は必要ですが、それ以上に、一人の個人として対応することが大切です。 ○ 障害者との対話を通じて、日常生活や社会生活を送る中で生じる、障害を理由とする困難さを、少しでも軽減するため、以下を参考に、これまでの取組を振り返ってみてください。 1 相手の人格を尊重し、相手の立場に立って対応します。 ・相手の立場に立ち、明確に、丁寧に、分かりやすい対応を心がけます。 ・介助者や手話通訳者等ではなく、障害者に、直接対応するように心がけます。 ・思い込みや押し付けにならないよう、どのような配慮が必要か、本人が必要と考えていることを確認します。 (22ページ) 2 困っている方には進んで声をかけます。 ・窓口などを訪れる方の障害の有無や種類は明確ではないため、常に、訪問者の中には、障害者がいるかもしれないことや、自分から合理的配慮の提供を申し出ることが難しい場合もあることを念頭に置いて、困っているような様子が見受けられたら、お手伝いしましょうか?等、こちらから声をかけるようにします。 ・その際、障害の種類や内容を問うのではなく、どのような手助けが必要かを本人に尋ねます。 ・体力低下により、息切れや疲れやすいといった外見からは障害があることを分かってもらえない方や、足の不自由な方には、椅子を用意するなどの配慮が大切です。 ・なお、座位から立ち上がることが困難である場合、立ったままの姿勢のほうが楽なかたもいることに留意しましょう。 イラスト 住民係の職員のコメント、どんなご用件ですか 障害者の方のコメント、えー、そのー、 障害者の方の心の中、住民票 ・ 状況に応じて はい、いいえ で答えられる質問を使い、相手の意思を確認します。 ・ 言葉が出ずに困っているときは、具体的な選択肢を挙げて質問しましょう。 ※本人がヘルプマークやヘルプカードを持っているときは、書かれた内容を確認し、必要な支援や、緊急連絡先への連絡を行います。 (ヘルプマーク、ヘルプカードの詳細は、69、70ページ参照) 3 コミュニケーションを大切に、柔軟な対応を心がけます。 ・ こちらから、挨拶や自己紹介をします。 ・ 会話が難しいと思われる場合でも、敬遠したり分かったふりをしたりせず、 ゆっくり、丁寧に、繰り返し、相手の意思を確認し、信頼感の持てる対応を心がけます。 ・ 聞き取れなかったり、分からなかったりした場合は、分かったふりをせず、相手を傷つけないよう、尋ね方に留意した上で確認します。 ・ 対応方法は一つではないことに留意し、建設的な対話を通じて、個々の場面や障害特性に応じ、柔軟な対応を心がけます。 ・ 対応方法がよく分からないときや想定外のことが起きたときは、一人で抱えず周囲に協力を求めます。 (23ページ) 4 言葉遣いやプライバシーにも配慮します。 ・ 差別的な言葉はもとより、子供扱いした言葉は使わず、相手の年齢に応じた言葉を使って話してください。幼児に対するような話しかたや態度は、非常に失礼です。馴れ馴れしい態度をとらないようにします。 ・ 相手に不快を与えるおそれのある言葉・表現を、自分では気付かずに使ってしまうこともあるかもしれません。そのような指摘を受けたときは、厳粛に受け止めてお詫びし、今後の対応に生かすことはもとより、職員間で気づいた場合にも見過ごさず、お互いに注意し合うようにします。 ・ 障害の原因や内容について、必要がない場合は聞かないようにします。 ・ 仕事上知り得た個人情報については、守秘義務を徹底します。 ※このほか、障害を正しく理解し、障害特性に応じた対応を行えるよう、 第5 障害特性について(47ページ以降)も参照してください。 なお、本章は、あくまでも一般的な障害特性を紹介するものであり、必要とする配慮は、一人ひとり異なります。実際の対応に当たっては、一人ひとりと向き合うことが重要です。 ※あらかじめ障害者が多く利用することが見込まれる場合や、対応に迷ったときなどは、障害当事者の意見を聞いてみることも大切です。 (24ページ) 2 様々な場面における対応の例  障害のあるかたへの合理的配慮の提供については、既に各主体において、様々な工夫がなされていると思いますが、ここでは改めて、各場面における好ましい対応を例示します。これらの例を参考に、よりよいサービスを目指していきましょう。 1 行政機関等や店舗等における対応の例  ここでは、行政機関などの窓口、事業者の店舗などにおいて、よくある場面ごとに、障害のあるかたにとって、障壁(バリア)となることが想定される事例と、望ましい配慮等の対応の例を示します。 1 案内・誘導 共通事項 ・ 入口付近で困っていそうな方を見かけたら、お手伝いしましょうか?等、積極的に声をかけます。 ・ 障害の特性に応じた方法で、明確に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明します。声かけは、相手のペースに合わせて丁寧に行います。 ・ ドアの開閉が困難な方には開閉をお手伝いします。 ・ 受付の手順等については、障害の特性と必要性に応じ、慣行を柔軟に変更します。 建物やフロアの入口付近 ・車いすを使用している、杖をついているなどにより、手動の扉を開けられず、中に入れない。 <対応の例> 扉の開閉を手伝う。 ・視覚障害者や知的障害者などが、目的地の建物までたどり着いたが、受付や目的の場所(窓口、部屋など)が分からない。 <対応の例> 職員から声をかけ、どのように誘導しますか?などと誘導方法を確認し、訪問先まで案内、誘導する。 ・聴覚障害者が、手話で職員に行き先を伝えようとしたが、手話が通じず、分かってもらえない。 <対応の例> 筆談、紙に書くなどで、行き先を確認して案内、誘導する。 ・高次脳機能障害などにより、少し前のことを記憶するのが難しいかたなどが、建物まで来たものの、どこのフロアに行くのか、何をしに来たのか用件を忘れてしまった。 (25ページ) <対応の例> 行き先や用件、連絡先の書かれたメモなどを持参していないか、確認する。 受付付近 ・ 聴覚障害などにより、名前や受付番号を呼ばれても、呼ばれたことが分からないことがある。また、視覚障害や知的障害などにより、次の方と呼ばれただけでは自分のことを呼ばれているのか分からないことがある。 <対応の例> あらかじめ本人と呼び出し方法等を確認し、順番が来た際には、直接本人を呼びにいく。 ・ 知的障害や精神障害、発達障害などにより、周りの物音等が気になってしまい、混雑した場所などで順番を待つことが難しい。 <対応の例> 落ち着いた場所で待てるよう、別室やカームダウンエリア(気持ちを落ち着かせる場所)等を案内する。 <対応の例> 他の利用者の合意を得た上で、待ち時間が短くなるよう順番を変更する。 その他一般的な合理的配慮の提供の例 物理的環境への配慮の具体例 ・ 車いす使用者が、段差で困っている場合、車いすのキャスター上げ等の補助をしたり、携帯用スロープを渡す等を行う。 ・ 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、左右・前後・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 ・ なお、座位から立ち上がることが困難である場合、立ったままの姿勢のほうが楽な方もいることに留意する必要がある。 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 ・ 移動に困難を伴う方について、送迎バス等の車両の乗降場所を、施設などの出入口に近い場所へ変更する。 ・ 障害者の来客が多数見込まれる場合、障害者専用とされていない駐車区画を一時的に障害者専用の区画に変更する。 ・ 建物の入り口に段差がある等により、車いす使用者が、通常の入口から入館するのが困難な場合、車いすが利用できる別ルートからの入館を案内する。 (26ページ) 2 相談・説明 共通事項 ・ 訪問にきた方の、話をよく聞き、訪問目的を的確に把握し、たらい回しにならないよう努め、安心して話ができる信頼関係を作ります。また、相談内容の把握が難しい場合は、必要に応じて、複数の職員で対応します。 ・ 説明が的確に伝わるように、はっきりした言葉で、ゆっくり、丁寧に、繰り返し、話します。 ・ 伝えることや理解することに配慮が必要な方に対しては、必要に応じ、絵、図、写真等も使って説明します。 ・ 事前に訪問が分かっている場合は、障害特性に応じた方法で説明できるよう、あらかじめ説明資料等の準備をしておきます。 ・ 専門的な用語を避け、ポイントを明確に、文章は短く、一般的な分かりやすい言葉、説明します。 ・ 視覚障害者が、窓口で職員に書類の説明文を読んでもらいたいと頼んだが、職員に内容を読み飛ばされてしまい、十分に理解できない。 <対応の例> 記載されている内容は、勝手に判断して省略せず、本人が必要とする情報を正確に伝える。 ・ 職員が聴覚障害者に対して筆談を行う際、内容を全て文字に書いて説明すれば、情報を伝達できると誤解している。 <対応の例> 長い文は前後の関係が複雑になり、理解しにくくなるため、長文で書かず、要点をまとめる。必要に応じて、図など言葉以外の情報もあわせて使用する。 良い例、チケット申込み→15日開始、※申込み方法は、5日以降に問い合わせる、問い合わせ先、まるまる株式会社 悪い例、チケットの申込みは15日から始まりますが、申込み方法については5日に発表されますので、5日以降に当店に問い合わせてください。 ・ 知的障害や精神障害、発達障害などにより、伝えることや、理解することに、配慮が、必要な方などは、急かされているように感じると、緊張してうまく話せない。また、一度に説明されても理解が難しい。 <対応の例> 用件を分け、用件ごとに理解度を確認しながら説明する。 (27ページ) その他、一般的な合理的配慮の提供の例 物理的環境への配慮の具体例 ・ 車いすを使用している等により、書棚の高い所に手が届かない方に対して、必要に応じ、パンフレット等を取って手渡す。 意思疎通の配慮の具体例 ・ 本人の障害の特性を踏まえ、筆談、読み上げ、手書き文字(手のひらに、指先等でひらがなやカタカナ、漢字等を書いて言葉を伝えること)、手話、点字、拡大文字などのコミュニケーション手段を用いる。 ・ 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 ・ 比喩表現等が苦手な方に対し、比喩や二重否定表現などを用いずに分かりやすく説明する。 申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら対応する。また、馴染みのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく、午前、午後で表記するなどの配慮を念頭に置き、必要に応じて適宜、メモ等を渡す。大事な内容を伝えるときは、復唱してもらうと良い。 ・ 知的障害の方から申出があった際の対応として、紙等に書いて伝達したり、書面を示す場合には、必要に応じてルビを付した文字を用いたり、ひらがなを用いたり、分かち書き(文を書くとき、語と、語のあいだに空白を置く書きかた)を行ったりする。 ・ 筆談器や、簡易な白板・マジック等を用意しておく。 筆談器(磁気式のメモボードが一般的です。)の写真 手話を紹介したハンドブックの写真 (28ページ) ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 ・ エレベーターのない建物の2階で開催する講演会、イベント、説明会等に車いす使用者から参加の申込があった場合に、1階の会場が用意できる場合には、会場を変更して開催する。 3 手続 共通事項 ・ 書類の記入方法については、記入例も含めて文書で大きく分かりやすく表示しておきます。 ・ 書類の記入の仕方が分からない方には、お手伝いしましょうかと声をかけます。 ・ 自筆が困難な場合には、本人の意思を確認した上で、可能な限り代筆を行い、代筆した内容を本人に確認するとともに、その旨を記録しておくことが必要になります。自署する場合は、署名欄の部分だけを切り取った枠(サインガイド)を別途用意することで、位置が明確になり、署名しやすい方もいます。 ・ 代筆する時は、周りの人に住所等プライバシーを知られないように配慮しましょう。 ・ 視覚障害者や、知的障害などにより理解することに配慮が必要な方などは、書類が読めなかったり、文章が難しく内容が理解しにくいことがある。 <対応の例> 書類を読み上げたり、記入場所が分かるように定規等の目印になるものを準備する。 <対応の例> 記入例を作成し、どこに、何を記載すればよいのか分かりやすくする。 <対応の例> できるだけ分かりやすい言葉で説明する。 <対応の例> 必要に応じてひらがなやルビを活用し、丁寧に説明する。 ・ 手や腕の不随意運動等により書類な等を押さえることが難しい方の場合、書類等が動いてしまい、記入する際にうまく書けない。 <対応の例> バインダー等を用意し、書類が動かないように固定する。 <対応の例> 本人の同意のもとに代筆し、記入内容を確認する。 (29ページ) その他、一般的な合理的配慮の提供の例、 意思疎通の配慮の具体例、 ・ 電話、電子メール、ホームページ、ファックスなど、多様な媒体で、情報提供、利用受付を行う。 ルール・慣行の、柔軟な変更の具体例、 ・ 順番を待つことが苦手な障害者の場合、周囲の人の理解を得た上で、順番を入れ替える。 ・ 立って列に並ぶのが難しい障害者に対して、周囲の人の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 ・ 他人との接触や他人数の中にいることによる緊張により、自分の意志によらない不随意の発声等がある場合、当該障害者に説明の上、施設の状況に応じて別室やカームダウンエリアを準備する。 ・ 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報がきちんと守られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 ・ 体調の変化が大きい方などは、急に体調が悪くなり、動くことができなくなることがあるので、本人に確認し、休憩できる椅子やスペースを用意する等、必要な支援を提供する。 ※ 本人がヘルプカードやメモ等を持っている場合には、状況に応じて、本人に了承を得た上で、書かれた内容を確認し、緊急連絡先への連絡や必要な支援を行う。ヘルプカードの詳細は、70ページを参照。 コラム 知っていますか?手話通訳者等の守秘義務について 聴覚障害者の暮らしをサポートするため、都内には多くの手話通訳者、要約筆記者が活躍しています。一般的に、手話通訳者等は、聴覚障害者個人のプライバシーや、企業内の情報など、業務上知り得た情報を第三者に提供することがないよう、守秘義務が課されています。 障害者差別解消法は、行政機関等や事業者に対し、個々の場面において、代筆・代読等を行うといった、合理的配慮の提供を求めています。 代筆、代読等を行う場合も、守秘義務を念頭において、対応することが必要です。 (30ページ) 4 情報アクセシビリティ 共通事項 ・ 情報アクセシビリティとは、年齢や障害の有無等に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できることをいいます。 ・ 行政機関等の広報やお知らせ、事業者の営業活動等においては、様々な方法で情報伝達が行われていますが、障害特性によっては、一つの情報伝達方法だけでは伝わらない場合があるので、障害者の状況を想定し、複数の情報伝達方法を用いる等、必要な配慮を行います。 ・ 問合せ先等を記載する場合は、電話、FAX、メールアドレス等の複数の情報を盛り込みます。 ・ 行政機関等は、法の趣旨を踏まえ積極的に対応することが望まれます。 【説明・通知文書、冊子などの印刷物】 ・ 視覚障害がある場合、通常の紙の印刷物では内容が分からない。 <対応の例> 説明文書や通知、封筒について、点字版、拡大文字版、テキストデータ、音声データ(カセットテープやデイジー、音声コード化したものを含む)など、対象となる方の状況を踏まえ、様々な手段による情報提供を行う。 ・ 知的障害や発達障害などにより、理解することに配慮が必要なかたの場合、専門用語や漢字の多い文書の内容が理解できないことがある。 <対応の例> 必要に応じて、漢字に、ひらがなのルビをふった資料や、図やイラストを使用した資料、分かりやすい版の資料を作成する。 【ホームページ】 ・画像データとして、目立つように文字の色を変えたり、文字が動いたり、点滅したりするホームページを作成した場合、視覚障害の方などがホームページの読み上げソフト等を利用する際に、うまく読み上げができず、内容が分かりにくいホームページになってしまうことがある。 <対応の例> 画像等を張り付ける場合は、説明用のテキストを作成する。 <対応の例> 誰にとっても、利用しやすいホームページとなるよう、ウェブアクセシビリティのジス規格、高齢者・障害者等配慮設計指針、ハイフン情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス、第3部:ウェブコンテンツ(ジス  X  8 3 4 1  ハイフン3 )、を参照し、レイアウト等をおこなう。 (31ページ) 【講演会、イベント、説明会】 ・ 聴覚障害がある場合、説明者の話が聞こえないので、内容を知ることができない。 <対応の例> 講演会等の申込みの際に、必要な配慮の有無を確認し、東京手話通訳等派遣センター等に連絡して、手話通訳や要約筆記者の手配をする。特に、行政機関等は、法の趣旨を踏まえ、積極的に対応することが望ましい。  なお、手話通訳等を行う際、手話通訳者の立ち位置や照明の加減などの配慮も必要となる。(開催通知などの例及び参加申込書の例は、32ページ参照) <対応の例> 聴力を補うためのヒアリングループ、(磁気ループ)、を設置する。ヒアリングループの詳細は45ページ参照 ・ 知的障害や発達障害などにより理解することに配慮が必要な方などが、説明の速さについていけず、混乱してしまうことがある。 <対応の例> 説明内容を要約したり、分かりやすい言葉に置き換えて、補足説明を行う。また、必要に応じて、事前に口頭で説明し、意見を聞く場を設ける。なお、必要に応じて、イエローカードを用意する。(イエローカードの詳細は、34ページ) ・ 視覚障害者は、会議資料などの確認に時間を要する。 <対応の例> できるだけ確認しやすい形式で、事前に資料を送付するよう配慮する。 その他、一般的な合理的配慮の例 意思疎通の配慮の提供の具体例 ・ 会議資料等は、資料や資料の項目に番号をつけ、どの部分の話なのか、すぐに探せる工夫をする。また、視覚障害のかたに向けて点字、拡大文字等で作成する際に、各媒体でページ番号などが異なり得ることに留意する。 ・ 資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚障害、聴覚障害のある委員や、知的障害のある委員がいる会議では、ゆっくり、丁寧な、進行を心がけるなどの配慮を行う。 ・ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障害の特性に合ったサポートを行う等、可能な範囲での、配慮を行う。 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例、 ・ 視覚障害などにより、遠くが見えにくい方に対して、申出に応じてスクリーンや板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席などを確保する。 (32ページ) コラム 開催通知等の例 講演会の御案内等の通知の作成例 【記載例】 ※ 点字資料、拡大文字資料や手話通訳、要約筆記等を希望される場合は、事前に下記担当までお申し出ください。 ※ 当日、介助者等の同行があり、座席が必要な場合、あらかじめ御連絡ください。 上記の文章等を追加することで、必要な配慮について事前に確認することができます。 参考 参加申込書の例 まるまる講演会参加申込書 参加申込書の備考欄に、以下について、必要がございましたら、印をつけてください。として、対応可能な配慮を列挙します。 車いすスペース、手話通訳、要約筆記、磁気ループ、点字資料、その他、 事前資料配布(点字資料、テキストデータ、音声コード、墨字) ※ なお、参考例であり、対応可能な配慮以外は、削除することも必要になります。 介助者の欄、(同行する、同行しない) 欄外に、※ お申込みの個人情報については、本事業以外の目的には使用いたしません。 ※ 状況により、お申し出いただいた御要望に対応できない場合がございます。その場合は、あらかじめご連絡をさせていただきます。ご了承ください。 (33ページ) 5 緊急時の対応 共通事項 ・ 火災等の緊急時には、障害の特性に合わせたコミュニケーション方法により、情報を的確に伝達し、迅速に避難誘導します。 ・ 日常的な避難訓練において、障害のある方を交えた上で、車いすやアイマスクを用いた疑似体験を実施し、安全な避難方法を確認するなど、自力での移動が困難な方の補助体制を確保できるように努めます。 ・ 避難路の段差を無くし、荷物等で通路をふさがないようにします。 ・ 急病時に本人がかかりつけの医療機関への連絡を希望する場合は、協力します。 ・ 聴覚障害がある場合、発災時等は、緊急放送が流れても聞こえないので、何が起こったのか、どのような状況にあるのか分からないことがある。また、その後の避難時においては、食事や物資の提供等、必要な情報を得ることができないことがある。 <対応の例> 今起きていることなど、必要な情報は、音声だけでなく紙に書いて渡したり、掲示したりするなど、複数の手段で伝える。 ・ 視覚障害などがある場合、避難口が分からない。 <対応の例> 職員等で、避難誘導を行う。 ・ 体調の変化が大きい方などは、急に体調が悪くなり、動くことができなくなることがある。 <対応の例> 本人に確認の上、必要な支援を提供する。 ※本人がヘルプカード等を持っている場合があるので、その場合は、書かれた内容を確認し、緊急連絡先への連絡や、必要な支援を行う。ヘルプカードの詳細は、70ページ参照 その他一般的な合理的配慮の提供の例 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 ・ 災害時において、障害のある方を円滑に避難・誘導できるよう、障害のある方の視点に立った避難誘導の想定や、当事者参加の訓練などを実施する。 (34ページ) コラム 配慮の例 カードルールの導入 平成21年12月、障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備などの障害者に係る制度の集中的な改革を目的として障害者制度改革推進本部が設置され、このもとで、障害者施策の推進に関する意見をまとめる障害者制度改革推進会議が発足しました。 この会議には、多くの障害当事者が参加し、様々な合理的配慮の提供が行われました。その取組の一つに、カードルールがあります。 カードルール、で使われるのは、レッドカード(ストップしてください)、イエローカード(ちょっと待って、もう少しゆっくり分かりやすく)、ブルーカード(同意します、分かります)の3種類のカードで、レッドカードとイエローカードは、パーの手の絵、ブルーカードは、指が、グッドサインを示しています。 知的障害のある参加者が、このカードを出して、会議の進行を止めたり、分かりやすい表現に言い直してもらったりするカードルールは、国際的な知的障害者団体などでは以前から使われていましたが、日本の政府の会議としては初めて導入されました。このように、様々な配慮を行うことで、知的障害の方も形式的な参加ではなく、障害のない人と平等に会議に参加することができました。 このような「カードルール」は、日頃の打ち合わせも含め、活用できる配慮の一つと言えるでしょう。 なお、会議等を開催する際に、事前に会議の内容についての説明を行うことや、進行に当たって、物理的な配慮だけではなく、意見表明をしやすい雰囲気づくりに努めることなども重要になります。 イエローカードのイラスト、手と、はてなマークのイラストとともに、もうすこし、ゆっくり、わかりやすくのコメント。 (35ページ) 2 生活場面ごとの合理的配慮の提供等の例 ○ 事業者は、各主務大臣が定める対応指針を参考に、主体的に取り組むことが期待されています。 ○ ここでは、主務大臣が作成する対応指針をもとに、各業種における固有の対応などの例として、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮の提供」の事例を載せています。対応する上で御参照ください。 ○ なお、客観的に見て、正当な理由がある場合は、不当な差別的取扱いに該当しないことがあります。また、過重な負担が伴う場合には、合理的配慮の不提供に該当しないことがあります。 ○ 以下の事例は、あくまでも例示で、これらに限定されるものではありません。合理的配慮の提供は、個別具体的な状況によって、柔軟に取り組まれるべきものであることに留意いただき、本ハンドブックや主務大臣が作成する対応指針などを参照し、実際の対応に当たってください。 1 学校など 【不当な差別的取扱いの例】 × 学校への入学出願の受理、受験、入学、授業などの受講、研究指導、実習など校外教 育活動、入寮、式典参加を拒否したり、正当な理由のない条件を付加する。 ×試験などにおいて、合理的配慮を受けたことを理由に、試験結果を評価対象から除外したり、評価に差をつける。 【合理的配慮の提供の例】 ○ 聴覚過敏の児童生徒のために、机・いすの脚に緩衝材をつけて、教室の雑音を軽減する。 ○ 視覚情報の処理が苦手な児童生徒のために、黒板周りの掲示物の情報量を減らす。 ○ 支援員等の教室への入室や、授業・試験でのパソコン入力支援等を許可する。 ○ 意思疎通のために、絵や写真カード、ICT機器(タブレット端末など)を活用する。 ○ 入学試験において、本来の目的を損ねない範囲で、別室受験、時間延長、読み上げ機能等の使用を許可する。 (36ページ) 2 病院・福祉施設など 【不当な差別的取扱いの例】 × 本人を無視して、介助者・支援者や付添者のみに話しかける × サービスの利用に当たって、仮利用期間を設けたり、他の利用者の同意を求めるなど、他の利用者と異なる手順を課す 【合理的配慮の提供の例】 〇 施設内放送を文字化したり、電光表示板で表示したりする 〇 車いす使用者が利用しやすいよう、カウンターの高さに配慮する 〇 障害者に配慮したナースコールの設置を行う 〇 障害の特性に応じた休憩時間の調整など、申出に応じてルール、慣行を柔軟に変更する 3 交通(鉄道・バス・タクシー・飛行機など) 【不当な差別的取扱いの例】 × 障害があることをもって、乗車を拒否する × 身体障害者補助犬の同伴を理由に乗車を拒否する 【合理的配慮の提供の例】 〇 券売機の利用が難しい場合、操作を手伝ったり、窓口で対応する(鉄道) 〇 停留所名表示器の設置のほか、音声による案内をこまめに行う(バス) 〇 車いす等の大きな荷物のトランクへの収納の手助けを行う(タクシー) 〇 障害のある利用者が化粧室に行く際に、移動を手伝う(飛行機) 〇 障害の特性を理解した上で、適切な接遇・介助を行えるよう教育・研修を行う 4 住まい 【不当な差別的取扱いの例】 × 「障害者不可」「障害者お断り」と表示・広告する × 障害者向け物件は扱っていないと門前払いする × 障害者の希望に対し、必要な調整を行うことなく仲介を断る × 障害を理由とした誓約書の提出を求める 【合理的配慮の提供の例】 〇 視覚障害者に対して、最寄駅から一緒に歩いて確認したり、住居内の様子を手を添えて案内する 〇 障害者の求めに応じてバリアフリー物件等があるか確認する 〇 物件案内時に携帯用スロープを用意したり、車いすを押して案内する (37ページ) 5 銀行など 【合理的配慮の提供の例】 〇 自筆が困難な障害者からの要望を受けて、本人の意思確認を適切に実施した上で、代筆対応する 〇 「筆談対応いたします」などのプレートや、主な手続を絵文字等で示したコミュニケーションボードを用意する 〇 ATM操作が困難な顧客に声かけし、適切な対応をとる 〇 取引、相談等の手段を、非対面の手段を含めて複数用意する E小売店、飲食店など 【不当な差別的取扱いの例】 × 身体障害者補助犬の同伴を拒否する × 保護者、介助者の同伴を条件とする 【合理的配慮の提供の例】 〇 エレベーターがない施設の上下階に移動する際、上階にある商品を持ってくる等、代行可能な用件であれば代わりに行う 〇 ホワイトボードを活用する、盲ろう者の手のひらに書く(手書き文字)など、コミュニケーションにおいて工夫する 〇 メニューを分かりやすく説明したり、写真を活用したりする 〇 食券販売機の利用が難しい場合、操作を手伝ったり、希望のメニューを伺う 〇 困っていると思われるときは、まず声をかけ、手伝いの必要性を確かめてから対応する 〇 障害者用の駐車場について、健常者が利用することのないよう注意を促す 〇 注文や問合せ等に際し、インターネット画面への入力によるものだけでなく電話等でも対応できるようにする 〇 精算時に金額を示す際は、金額が分かるようにレジスター又は電卓の表示板を見やすいように向ける、紙等に書く、絵カードを活用する等して示すようにする 〇 お金を渡す際に、紙幣と貨幣を分け、種類ごとに直接手に渡す 〇 商品宅配時において具体的要望があった際に、品物を家の中の指定された所まで運ぶ (38ページ) コラム 「障害者差別解消法 合理的配慮等の好事例集(様々な場面における相談事例から)」について 東京都では、共生社会・ダイバーシティの実現に向け、「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」について、都民や事業者の理解を深め、様々な取組を進めることを目指し、平成30年3月「障害者差別解消法 合理的配慮等の好事例集(様々な場面における相談事例から)」を作成しました。 本事例集においては、様々な障害のある方・様々な場面についての事例を取り上げ、対応のポイント等も併せて解説しています。是非御参照ください。 なお、合理的配慮の提供は、障害のある方の特性や事業者の事業規模、その状況に応じて提供されるものであり、多様で個別性が高いものです。 そのため、本事例集に掲載されているものは、あくまで例示であることを御了承ください。 ○ 東京都のホームページ 東京都福祉保健局 障害者 障害者施策 障害者差別解消と権利擁護 障害者差別解消法に関する普及啓発 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/sabetsukaisho_yougo/sabekaikeihatsu.html 事例集の表紙イラスト (39ページ) コラム 身体障害者補助犬とは 〇 「身体障害者補助犬」は、目や耳や手足に障害のある方の生活をお手伝いする、「盲導犬」・「聴導犬」・「介助犬」のことです。 身体障害者補助犬法に基づき認定された犬で、特別な訓練を受けています。 【盲導犬】 目の見えない人や見えにくい人が、街なかを安全に歩けるようにサポートします。障害物を避けたり、立ち止まって曲がり角を教えます。ハーネス(胴輪)をつけています。 【介助犬】 手や足に障害のある方の日常の生活動作をサポートします。物を拾って渡したり、指示したものを持ってきたり、着脱衣の介助などを行います。“介助犬”と書かれた表示をつけています。 【聴導犬】 音が聞こえない人や聞こえにくい人に、生活の中の必要な音を知らせます。玄関のチャイム音・FAX 着信音・赤ちゃんの泣き声などを聞き分けて教えます。“聴導犬”と書かれた表示をつけています。 〇 補助犬の同伴については、「身体障害者補助犬法」で、人が立ち入ることのできる様々な場所で受け入れるよう義務付けられています。 【補助犬の同伴を受け入れる義務がある場所】 ・ 国や地方公共団体などが管理する公共施設・公共交通機関(電車、バス、タクシーなど) ・ 不特定多数の人が利用する民間施設−商業施設、飲食店、病院、ホテルなど ・ 事務所(職場)−国や地方公共団体などの事務所−従業員45.5 人以上の民間企業 ※ 事務所(職場)で、従業員45.5人未満の民間企業や民間住宅も努力義務です。 【補助犬の受入施設の方へ】 ● 補助犬は、ユーザーの指示に従い待機することができるので、特別な設備は必要ありません。 ● 補助犬の同伴を受け入れる際に他のお客様から苦情がある場合は、「身体障害者補助犬法」で受入義務があること、補助犬の行動や健康の管理はユーザーが責任をもって行っていることを説明し、理解を求めてください。 ● 補助犬が通路をふさいだり、周りのにおいを嗅ぎ回ったり、その他、何か困った行動をしている場合は、そのことを補助犬ユーザーにはっきり伝えてください。 ● 補助犬を同伴していても、補助犬ユーザーへの援助が必要な場合があります。補助犬ユーザーが困っている様子を見かけたら、まずは声をかけたり、筆談をするなどのコミュニケーションをとってください。 【補助犬を連れていたら】 ● 補助犬を連れている場合は、その犬が仕事中だということを忘れないで、邪魔をせず温かく見守ってください。 (40ページ) (3)環境の整備 ・ 「環境の整備」とは、不特定多数の障害者を主な対象として行われる措置で、「合理的配慮の提供」(合理的配慮の提供の詳細は、11ページから14ページ参照)とは異なり、努力義務とされています。 ・ 例えば、バリアフリー化や情報保障のための機器の導入などのハード面の対応や、職員に対する研修などを行うソフト面の対応が「環境の整備」に当たります。 ・ 合理的配慮を必要とする障害者の利用が多数見込まれる場合や、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、「環境の整備」を行うことで、中・長期的なコストの削減・効率化につながります。 ○ 障害者差別解消法では、個々の障害者に対して行われる合理的配慮の提供を的確に行うために、環境の整備に努めるべきであるとされています。 ○ この環境の整備とは、合理的配慮の提供が必要な障害者の利用が多く見込まれたり、障害者との関係が長期にわたる場合等に、いわゆるバリアフリー化や、情報保障のための機器の導入などの対応を行うことです。 <整備の例> ・ 受付や、相談・手続等の窓口などへの筆談ボードやコミュニケーションボードの設置とその使用方法を学ぶ研修等の実施、簡単な手話のできる職員の配置、受付番号等を表示できる掲示板の設置等を行う。 ・ 行事等で、車いす使用者等の参加が見込まれる場合、あらかじめ車いす対応席等を設定する。 ・ 参加者から申出があった場合に対応できるよう、車いす等の貸出しを行うほか、手話通訳者や介助者等の同行に配慮する。 ・ 新しい施設の建設や施設の改修の際は、「東京都福祉のまちづくり条例」等に基づき、段差の解消やだれでもトイレの設置などのバリアフリー化を行う。 ・ 色の組み合わせによる見えにくさを解消するため、掲示物や案内図等の配色を工夫する。 ・ トイレ、作業室などの部屋の種類や、その方向を示す絵記号や色別の表示などを設ける。 ・ 不特定多数の人が集まるホール等において、聴覚障害者が、補聴器を通じて、 (41ページ) 音声を正確に聞き取ることができるよう、ヒアリングループを設置する。 ○ また、環境の整備は、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれます。 <研修の例>・ 障害当事者等を講師とした研修       ・ 本ハンドブックを活用した研修 等 ○ 「合理的配慮の提供」は、このような環境の整備(障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等)を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置です。したがって、各場面において、合理的配慮の提供の内容は異なります。 ○ 障害者との関係性が長期にわたる場合、障害の状態等の変化を考慮しつつ、その都度の合理的配慮の提供ではなく、環境の整備を行うことで、中・長期的なコストの削減につながる場合もあります。 コラム 音声による情報保障〜デイジー・音声コード〜 【DAISYとは】  Digital Accessible Information Systemの頭文字をとったものです。 音声データを独自の形式で圧縮し、章や節ごとに「見出し」をつけることができる検索性の高い音声媒体です。最長でディスク一枚に60時間程度収録可能です。ただし、通常のCD再生機では聞くことができない方式のもので、専用の再生機や、専用のソフトをインストールしたパソコンが必要になります。 【音声コードとは】 音声コードとは、QRコードと同じ印刷物上の切手大の二次元コードです。漢字を含めた活字文書を約800文字格納できる音声コードは、マイクロソフト社製のワープロソフト「Word」に音声コード作成ソフトをインストールすることで簡単に作成することができ、活字文書読み上げ装置で読むことが可能です。ただ音声コードを印刷しても、視覚障害者がその印刷部に音声コードが添付されていることに気づきません。音声コードを添付した印刷物には、必ず切り欠きを入れ、裏面に音声コードを印刷する際には、左側に音声コードを添付するようにしましょう。 ※音声コード掲載例の写真あり (42ページ) コラム 情報保障の推進に係る各局の取組を紹介 都条例では、東京都が行う「共生社会実現のための基本的施策」の1つとして「情報保障の推進」をあげています(詳細は、20ページ参照)。 庁内各局では、例えば、以下のような情報保障に取り組んでいます。 ○主税局 通知用封筒に、音声コード(音声コードの詳細は、41ページ参照)を付け、希望者に対し、税額や納期などの情報を音声コード化した説明文書を、お送りしています。 1 封筒に、連絡先の音声コードを付けて、対象の方へ納税通知書をお送りします。 2 音声コード化した文書をご希望の場合、連絡先へお電話ください。 3 音声コード化した文書を送ります。 ○水道局 給水契約者で希望されるかたに音声コード付き文書をお送りしています。 1 様々な媒体を活用し広く都民の皆さまに申込方法などをご案内します。 2 音声コード付き文書の送付を希望される方からの申し込みを受け付けます。 3 請求書などの内容をお知らせする音声コード付き文書(※)を定期的に送付します。 ※ お知らせ文書の内容 使用月分、水道ご使用量、請求金額、支払期限などをお知らせします。請求書は、お知らせ文書に同封して送付します。 (43ページ) ○生活文化局 毎月1回発行している「広報東京都」について、点字版・音声版を発行しています。 また、音声ファイルはホームページに公開しています。 ※ 点字版・音声版の申込みについては、電話03-5388-3093までご連絡ください。 広報東京都ホームページ http://www.koho.metro.tokyo.jp/index.html ○議会局 都議会だよりの点字版・音声版を年4回発行しています。また、音声ファイルはホームページに公開しています。 ※ 点字版・音声版の申込みについては、電話03-5320-7126までご連絡ください。 都議会だよりホームページ http://www.gikai.metro.tokyo.jp/newsletter/ (44ページ) コラム 福祉のまちづくりの取組を紹介 東京都では、全ての人が安全で、安心して、かつ、快適に暮らし、訪れることができるよう、ハード・ソフトの両面から、ユニバーサルデザインの視点に立った、福祉のまちづくりを進めています。 区市町村や事業者、都民と協働して、福祉のまちづくりを推進していくため、以下のような冊子などを作成していますので、御参照ください。 ○ 「心のバリアフリー」の実践に向けたハンドブック 心のバリアフリーに対する都民の理解促進や実践につながるよう、まちなかでの具体的な事例を交えながら、その対応策やバリア解消に向けた配慮のポイントを紹介 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/kokoro_handbook.html ○ 区市町村・事業者のための「心のバリアフリー」及び「情報バリアフリー」ガイドライン  学校や地域における学習や事業者内での社員教育、障害者等の理解促進に向けた普及啓発等の心のバリアフリー、また、音声や文字による情報化のほか、点字、拡大文字、手話、筆記、絵文字・記号、多言語による対応等、様々な手段で情報提供を進める情報バリアフリーに向けた取組の考え方と効果的な実例を掲載 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/kokoro_joho/kokoro_joho.html ○ 東京都福祉のまちづくり条例「施設整備マニュアル」 東京都福祉のまちづくり条例で定める「整備基準」について、図解も含めて詳しく解説するとともに、より高い水準である「望ましい整備」についても説明 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/manu26/index.html ○ 店舗等内部のユニバーサルデザイン整備ガイド 店舗等内部※のテーブル配置やカウンターの高さなど、条例に定める整備基準だけでは補いきれない整備の考え方をまとめたもの ※店舗等内部:用品店であれば商品の陳列棚や試着室まで、飲食店であれば飲食を提供するテーブルまで、医療施設であれば診察を受ける席や診察台までの経路や設備などで、条例に定める整備基準の対象とならない部分 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/tenponaibu.html  (45ページ) ○みんながまた来たくなるお店づくり〜だれにでもおもてなしのサービスを〜 バリアフリー整備が困難な小規模店舗などで、「おもてなしのサービス」の対応をする際の具体的なポイントを整理 hhttp://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/omise.html ○障害者等用駐車区画の適正利用に向けたガイドライン 障害者等用駐車区画を整備した施設管理者が、適正利用に向けた対策を実施する際の参考となるよう、効果的な対策事例を紹介 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/machizukuri/kanren/guideline-park.html コラム ヒアリングループ(磁気ループ)について ヒアリングループ(磁気ループ)とは、補聴器を使用している聴覚障害者が、広い空間や騒音の多い場所において、音声を正確に聞き取るために聴力を補うための集団補聴設備の一種で、音声データを磁気に変換し、敷設したワイヤーから発生させた磁気を、ループ内側にある補聴器で受信して音声信号に変えることで、目的の音声を届けることができる設備です。 建物施工時に、ワイヤーを床下や天井に埋設・固定する「常設型」と、持ち運び可能な磁気発生アンプと巻き取り式のワイヤーを用いて必要な場所にループを設置できる「移動型」があります。 ※ヒアリングループの図示あり。 ※46ページは空白のページです。 (47ページ) 第5 障害特性について 障害のある方と接する際には、その方の障害特性や、その方が日常生活・社会生活で相対している「社会的障壁」(社会的障壁の詳細は、7ページ参照)について理解し、その社会的障壁の除去に向けて対応することが大切です。 以下に、代表的な障害特性と、社会的障壁を取り除くための対応時の配慮点をまとめています。 障害者への制限は、社会における様々な障壁と相対することで生じているという「障害の社会モデル」(障害の社会モデルの詳細は、8ページ参照)の考え方に立ち、障害があっても「人」としてのコミュニケーションを大切にしながら対応しましょう。 1 視覚障害 〔主な特性〕 ・ 生まれつき目が見えない場合もあるが、最近は糖尿病性網膜症や網膜色素変性症などで受障される方も多く、高齢者では、緑内障や黄斑変性症が多い ・ 視力障害は、視覚的な情報を全く得られない又はほとんど得られない方と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる方に大きく分けられる(全盲、弱視といわれることもある) ・ 暗い所で極端に視力が落ちる方や、普通では眩しくない程度の光でも、過敏になり眩しさや痛みを感じる方もいる ・ 視野障害は、目を動かさないで見ることのできる範囲が狭くなる ・ ひとことで視覚障害と言っても、様々な見え方がある(まったく見えない、文字がぼけて読めない、物が半分しか見えない(48ページ図A)、筒状の物を通しているようにしか見えない(48ページ図B)など) <例> 【求心性視野狭窄】 ・ 見える部分が中心だけになって段々と周囲が見えなくなる ・ 遠くは見えるが足元が見えず、つまづきやすくなる 【中心暗点】 ・ 周囲はぼんやり見えるが真ん中が見えない ・ 文字等、見ようとする部分が見えなくなる ・ 視力障害、視野障害の状況によって、明るさの変化への対応が困難なため、移動などに困難さを生じる場合も多い ・ このため、文字を読めても、歩くときに障害物にぶつかってしまう方や、障害物を避けて歩くことはできても、文字を読めない方がいる (48ページ) 図1、3人の男女と犬が1匹いるイラスト 図A、半分だけ見えているイラスト、図B、真ん中だけ見えているイラスト ※ 視力をほとんど活用できない方の場合、音声、触覚、嗅覚など、視覚以外の情報を手がかりに周囲の状況を把握しています ※ 文字の読み取りは、点字に加えて最近では画面上の文字情報を読み上げるソフトを用いてパソコンで行うこともあります(視覚障害者全てが、点字の読み書きができるとは限りません) ※ 視力をある程度活用できる方の場合は、補助具を使用したり文字を拡大したり近づいて見るなどの様々な工夫をして情報を得ています ※ 見え方、見えづらさには、個人差が大きく、外見からでは判断できないことに留意が必要になります [主な対応] ・ 声をかける時には前から近づき「何々さん、こんにちは。誰々です。」など自ら名乗る ・ 短い距離であっても、腕や白杖をつかんだり、肩や背中を後ろから押さない ・ 歩行は、介助者の腕や肩をつかんでもらい、歩く速度を相手に合わせ、小さな段差についても情報提供することを基本とする 誘導のイラスト ×後ろから押す、×手でひっぱる ・ 説明する時には「それ」「あれ」「こっち」「このくらいの」などと指差し表現や指示代名詞で表現せず、「あなたの正面」「○○くらいの大きさ」などと具体的に説明する (49ページ) よい例のイラスト 男性が女性に、前方に看板があります。左側に避けられます。と言っている。 悪い例のイラスト 男性が女性に、あぶない右へ、と言っている。 ポイント 方向や位置を説明するときは、視覚障害者の向きを中心にしてください。 向かい合っていると、説明者とは左右が反対になるためです。 ・ 音声や点字表示など、視覚情報を代替する配慮を行う ・ 成人してから障害が生じた場合、白杖を用いた歩行や点字の触読が困難な方も多いため留意する必要がある ・ 普段から通路(視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の上等)に通行の妨げになるものを置かない、視覚障害者が日頃使用しているものの位置を変えないなど周囲の協力が不可欠である ・ 主に弱視の場合、室内における照明の状況に応じて、窓を背にして座ってもらうなどの配慮が必要となる 好事例1 アンケートも多様な方法で(視覚障害) アンケートを取る際に、印刷物だけを配布していました。すると、視覚障害の方から、「電子データでほしい」と要望がありました。「電子データであればパソコンの読み上げソフトを利用して回答できる」とのことでした。 → 紙媒体という画一的な方法ではなく、テキストデータでアンケートを送信し、メールで回答を受け取るという方法をとることで、視覚障害の方にもアンケートに答えてもらえるようになりました。 2 聴覚障害 [主な特性] ・ 生まれつき耳の聞こえない方は、手話でコミュニケーションをとる方も多い (50ページ) ・ 難聴者(少しでも音声が聞こえる方)は、補聴器や人工内耳で聞こえを補うことが多い ・ 補聴器や人工内耳を装用している場合、スピーカーを通じた音等、残響や反響のある音は、聞き取りにくい ・ 聴覚障害は外見上分かりにくい障害であり、その人が抱えている困難も他の人からは気づかれにくい側面がある ・ 聴覚障害者のコミュニケーション方法には手話、筆談、口話など様々な方法があるが、どれか一つで十分ということではなく、多くの聴覚障害者は話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせるなど使い分けている ・ 聴覚の活用による言葉の習得がしにくいことにより、聴覚障害者の国語力は様々であるため、筆談の場合は、相手の状況に合わせる ・ 自らの声が聞こえないことから、発音が不明瞭な方もいる 〔主な対応〕 ・ 手話等や文字表示、手話通訳者や要約筆記者の派遣など、目で見て分かる情報を提示したりコミュニケーションをとるよう配慮する ・ 音声だけで話すことは極力避け、視覚的な具体的情報も併用する ・ スマートフォンなどのアプリに音声を文字に変換できるものがあり、これらを使用すると筆談を補うことができる ・ 補聴器や人工内耳を装用している方に、マイクやスピーカーの音声を伝えるために、代替する対応(ヒアリングループの利用等)も必要に応じて検討する ・ 発音が不明瞭で聞き取れない場合、けげんな表情をせず、分からない時は心情に配慮しながら聞き返す ・ 話をする際は、目や顔の表情等をしっかりと見て、十分に理解できたかどうか確認する 好事例2 研修会等での配慮(聴覚障害) 聴覚障害者のAさんは、ある研修会に参加することになりました。事務局から研修担当者には、Aさんは聴覚障害があるので配慮するよう伝えていましたが、研修担当者はAさんは補聴器をつけていたので問題ないと思い、特段の配慮もなく研修が進められ第1日目が終わってしまいました。 → Aさんは、補聴器をつけていても、全て聞き取れる訳ではないことを事務局に相談したところ、次回以降、手話通訳者か要約筆記者(ノートテイク)で対応してくれることになりました。 (51ページ) 3 盲ろう 〔主な特性〕 ・ 視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいるが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられる(視覚障害、聴覚障害の項も参照) (見え方と聞こえ方の組み合わせによるもの) 1 全く見えず聞こえない状態の「全盲ろう」 2 見えにくく聞こえない状態の「弱視ろう」 3 全く見えず聞こえにくい状態の「盲難聴」 4 見えにくく聞こえにくい状態の「弱視難聴」 (各障害の発症経緯によるもの) 1 盲(視覚障害)から聴覚障害を伴った「盲ベース盲ろう」 2 ろう(聴覚障害)から視覚障害を伴った「ろうベース盲ろう」 3 先天的、あるいは乳幼児期に視覚と聴覚の障害を発症する「先天性盲ろう」 4 成人期以後に視覚と聴覚の障害が発症する「成人期盲ろう」 ・ 盲ろう者がそれぞれ使用するコミュニケーション手段は、障害の状態や程度、盲ろうになるまでの経緯、あるいは生育歴、他の障害との重複の仕方によって異なり、介助方法も異なる ・ テレビやラジオを楽しんだり本や雑誌を読むことなどもできず、家族といてもほとんど会話がないため、孤独な生活を強いられている方もいる 〔主な対応〕 ・ 盲ろう者関係機関に相談し、対応に関する助言を受ける ・ 障害の状態や程度に応じ視覚障害や聴覚障害の方と同じ対応が可能な場合があるが、同様な対応が困難な場合が多く、手書き文字や触手話、指点字などの代替する対応や移動の際にも配慮する ・ 言葉の通訳に加えて、視覚的・聴覚的情報についても意識的に伝える <例> 状況説明として、人に関する情報(人数、性別等)や環境に関する情報(部屋の大きさや机の配置、その場の雰囲気等)など (52ページ) 好事例3 盲ろう者とのコミュニケーション(盲ろう) 盲ろう者であるBさんは、通訳・介助者を同伴し、パソコン訓練を実施する施設に相談に行きましたが、盲ろう者との特殊なコミュニケーション方法である「手書き文字」「点字筆記」「触手話」「指点字」ができる職員がいないとの理由で受入れを断られてしまいました。 → 後日、Bさんは通訳・介助者を同伴して盲ろう者関係機関に相談したところ、「Bさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設側に伝えたらよいのではないか」との助言を受け、改めて、Bさんは点字ができること、また、手のひらに書く(手書き文字)ことでコミュニケーションがとれることを施設に説明した結果、施設側も理解を示し、前向きに受け入れる方向で話が進展しました。 4 肢体不自由 <車いすを使用している場合> 〔主な特性〕 ・ 脊髄損傷(対麻痺又は四肢麻痺、排泄障害、知覚障害、体温調節障害など)、脳性麻痺(不随意運動、手足の緊張、言語障害等、知的障害重複の場合もある)、脳血管障害(片麻痺、運動失調)に主に起因している ・ 原因となる疾病や障害の程度により、全く立ち上がれない方、ある程度の歩行ができる方、言語障害や知的障害がある方など状況は様々である ・ ベッドへの移乗、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で援助が必要な方の割合が高い ・ 上肢にも障害がある場合は、筆記等が困難な方もいる ・ 車いす使用者にとっては、段差や坂道が移動の大きな妨げになる ・ 脊髄損傷等により、体温調整が困難な方もいる ・ 手動車いすの使用が困難な場合は、電動車いすを使用する場合もある ・ 障害が重複する場合には、呼吸器を使用する場合もある ・ 自分で車いす操作ができる方は、バリアフリーな場所であれば、移動に支障がない場合もある 〔主な対応〕 ・ 段差を無くす、車いす移動時の幅・走行面の斜度、車いす用トイレ、施設のドアを引き戸や自動ドアにするなどの配慮を行う ・ 机アプローチ時に車いすが入れる高さや、作業を容易にする手の届く範囲を考慮する (53ページ) ・ ドア、エレベーター内のスイッチなどの機器操作のための配慮を行う ・ 目線が低いため、立ったまま話すと見下ろされたように感じ、威圧感を受ける場合があるので、目線を合わせて会話する ・ 体温調整障害がある場合は、部屋の温度管理に配慮する ・ 自分で移動できる方には、過度な干渉は不要なこともあるので、本人の意向を確認する <杖などを使用している場合> 〔主な特性〕 ・ 脳血管障害(歩行可能な片麻痺、運動失調) ・ 機能障害の程度が軽いため、杖や装具を使っての歩行が可能な場合や、義足を使用して歩行可能な場合は、日常生活の動作は自立している方が多い ・ 歩行の障害など、目に見える障害だけでなく、失語症や高次脳機能障害がある場合もある ・ 長距離の歩行が困難だったり、階段、段差、エスカレーターや人ごみでの移動が困難な場合もあるので、配慮する必要がある ・ 自分で動ける方には、過度な干渉は不要なこともあるので、本人の意向を確認する 〔主な対応〕 ・ 上下階に移動するエレベーターの設置や、階段の手すりの設置を行う ・ 休憩できる椅子やベンチ等を設置する ・ 滑りやすい床などは転びやすいので、雨天時などの対応に留意する ・ トイレでの杖置きの設置や、靴の履き替えが必要な場合に椅子を用意するなどの配慮を行う ・ 上肢に障害がある場合は、片手や筋力低下等、障害の状況に応じて作業をサポートする 好事例4 障害への理解が深まれば(肢体不自由) 座骨部に褥瘡(床ずれ)発生を繰り返している脊髄損傷者Cさん。褥瘡は、長時間座位を保持していることが原因で発生していました。褥瘡悪化による手術で数か月単位の入院を繰り返していました。 → 納期が迫っており長時間作業をしなければならない場面でも、時間調整や褥瘡予防できる姿勢を確保するため、途中で休憩をとることなど周囲の理解と協力を得ることで、褥瘡の発生を抑え、入退院を繰り返すことなく生活することが可能になりました。 (54ページ) 車いす使用者への配慮のポイント〜段差や溝がある場合〜 車いす介助のイラストあり。 1 昇るとき 昇る手順は「持ち上げます」と声をかけます。 1ティッピングレバー(後車輪の内側の棒)を踏み、 2同時にハンドグリップ(持ち手)を押し下げて前輪キャスターを上げます。 3後車輪だけでバランスを保ちながら段差に近づきます。 4前輪キャスターを段に乗せてから、後輪を押し上げます。 2 降りるとき 降りる手順は、後ろ向きになり、「降ろします」と声をかけます。相手が安心できるよう配慮しながら、車いすの背を身体で支えながら衝撃を与えないようにそっと降ろします。 3 小さい段差や溝があるときは、斜めに通るか、後ろ向きで通ります。 車いすは、少しでも段差や溝があると前輪のキャスターがつかえたり、はまり込んだりするので注意しましょう。 5 構音障害 〔主な特性〕 ・ 発音が不明瞭だったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりする ・ 話す運動機能の障害、聴覚障害、咽頭摘出などの原因がある 〔主な対応〕 ・ しっかりと話を聞く ・ 会話補助装置などを使ってコミュニケーションをとることも考慮する 6 失語症 〔主な特性〕 ○ 以下の症状が見られる場合がある <聞くことの障害> ・ 音は聞こえるが「言葉」の理解に障害があり、話の内容が分からない ・ 単語や簡単な文は分かっても、早口や長い話になると分からなくなる (55ページ) <話すことの障害> ・ 伝えたいことをうまく言葉や文章にできない ・ 発話がぎこちない、言いよどみが多くなったり、本人が考えていることと違う言葉が出てしまうこともある <読むことの障害> ・ 文字を読んでも理解が難しい <書くことの障害> ・ 書き間違いが多い、また、「てにをは」などをうまく使えない、文を書くことが難しい 〔主な対応〕 ・ 表情が分かるよう、顔を見ながら、ゆっくりと短い言葉や文章で、分かりやすく話しかける ・ 一度でうまく伝わらない時は、繰り返して言ったり、別の言葉に言い換えたり、漢字や絵で書いたり、写真・実物・ジェスチャーで示したりすると理解しやすい ・ 「はい」「いいえ」で答えられるように問いかけると理解しやすい ・ 話し言葉以外の手段(カレンダー、地図、時計など身近にあるもの)を用いると、コミュニケーションの助けとなる ※「失語症のある人の雇用支援のために」(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター)より一部引用 好事例5 話すことの障害(失語症) 失語症(発語がうまくできない)のDさんが、買い物に行きましたが、自分の欲しいものを探すことができませんでした。店員にどこにあるのか尋ねようとしましたが、欲しいものをうまく伝えられず、時間が経過するばかりでした。 → 店員は、Dさんが言葉をうまく話せないことが分かったため、「食べ物」「飲み物」「日用品」等、徐々に的を絞って確認していったところ、Dさんの欲しいものが判明し購入することができました。 7 高次脳機能障害 交通事故や脳血管障害などの病気により、脳にダメージを受けることで認知や行動に生じる障害。身体的には障害が残らないことも多く、外見では分かりにくいため「見えない障害」とも言われている。 (56ページ) 〔主な特性〕 ○ 以下の症状が見られる場合がある <記憶障害> ・ すぐに忘れてしまったり、新しい出来事を覚えることが苦手なため、何度も同じことを繰り返したり質問したりする <注意障害> ・ 集中力が続かなかったり、ぼんやりしてしまい、何かをするとミスが多く見られる ・ 二つのことを同時にしようとすると混乱する ・ 主に左側で、残してある食べ物に気が付かなかったり、障害物に気が付かないことがある <遂行機能障害> ・ 自分で計画を立てて物事を実行したり、効率よく順序立てられない <社会的行動障害> ・ ささいなことでイライラしてしまい、興奮しやすい ・ こだわりが強く表れたり、欲しいものを我慢できない ・ 思いどおりにならないと大声を出したり、時に暴力をふるったりする <病識欠如> ・ 上記のような症状があることに気付かず、できるつもりで行動してトラブルになる ○ 失語症(失語症の詳細は、54ページ参照)を伴う場合がある ○ 片麻痺や運動失調等の運動障害や眼や耳の損傷による感覚障害を伴う場合がある 〔主な対応〕 ○ 本障害に詳しいリハビリテーション専門医やリハビリテーション専門職、高次脳機能障害支援普及拠点機関、家族会等に相談する <記憶障害> ・ 手がかりがあると思い出せるので、手帳やメモ、アラームを利用したり、ルートマップを持ち歩いている方も多いので、必要に応じて確認する ・ 自分でメモを取ってもらい、双方で確認する ・ 残存する受傷前の知識や経験を活用する(例えば、過去に記憶している自宅付近では迷わず行動できるなど) (57ページ) <注意障害> ・ こまめに休憩が取れるよう配慮する ・ 一つずつ順番にやる ・ 左側に危険なものを置かない <遂行機能障害> ・ 手順書を利用する ・ 段取りを決めて目につく所に掲示する ・ スケジュール表を見ながら行動したり、チェックリストで確認する <社会的行動障害> ・ 感情をコントロールできない状態にあるときは、上手に話題や場所を変えてクールダウンを図る ・ あらかじめ行動のルールを決めておく 好事例6 メモを活用して行き違いを防止(高次脳機能障害) 高次脳機能障害のEさんに、「先ほど伝えたことを忘れて勝手な行動をしている」と注意したところ、「聞いていなかった、知らない」と逆に怒り出してしまいました。Eさんは普段、難しい言葉を使ったり、以前のことをよく覚えている方なので、高次脳機能障害の特性を知らない周囲の人は、Eさんはいい加減な人だと腹を立てて、人間関係が悪化してしまいました。 → 高次脳機能障害の方は、受傷前の知識や経験を覚えている場合が多いが、直近のことを忘れてしまいがちであるという説明を受け、周囲の人は、障害の特性であることを理解することができました。また、口頭で伝えたことは言った、言わないとトラブルのもとになりやすいので、メモに書いてもらい、双方で確認するようにしたら、トラブルが起きなくなりました。 8 内部障害 〔主な特性〕 ・ 心臓機能、呼吸器機能、腎臓機能、膀胱・直腸機能、小腸機能、肝機能、HIVによる免疫機能のいずれかの障害により日常生活に支障がある ・ 常に医療的対応を必要とすることが多い ・ 外見からは、障害があることが分かりにくい方もいる ・ 疲れやすいため、長時間の立ち姿勢、速く歩くこと、負荷を伴う歩行や作業が困難な場合がある 〔主な対応〕 ・ 常に医療的対応を必要とすることが多い (58ページ) ・ ペースメーカーは外部からの電気や磁力に影響を受ける可能性があることに注意する ・ 排泄に関し、人工肛門(ストマ)の場合、パウチ洗浄等特殊な設備が必要となることに配慮する ・ 人工透析が必要な方については、通院に配慮する ・ 呼吸器機能障害のある方は、慢性的な呼吸困難、息切れ、咳等の症状があることを理解し、息苦しくならないよう、楽な姿勢でゆっくり話をしてもらうよう配慮する ・ 常時酸素吸入が必要な方は、携帯用酸素ボンベが必要な場合があることを理解する 好事例7 人工肛門等を造設した方(オストメイト)への配慮(内部障害)  病気のため、人工肛門(ストマ)を活用することになったFさん。これまで外出先のトイレにおいてストマの処理を適切に行うことに困難を感じていました。 → 最近では、旅館や公衆浴場でもオスメイト用の水洗設備のあるトイレが設置されてきており、トイレを安心して利用することができるようになりました。 コラム オストメイト用設備の例 オストメイト用設備の図あり。 ※オストメイトへの配慮 排泄機能障害が主たる障害なので、恥ずかしい思いをせずに安心して話をすることができるように、同性の対応が望ましいでしょう。 (59ページ) 9 重症心身障害・その他医療的ケアが必要な障害者 〔主な特性〕 ・ 自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由と、年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害が重複している場合がある ・ てんかんを有していることが多い ・ ほとんど寝たままで自力では起き上がれない状態が多く、長時間座っていることが困難な場合があるため、特殊型車いすやストレッチャー型車いすを使用して移動する ・ 移動、寝返り、着替え、洗面、トイレ、入浴など、日常の様々な場面で介助者による援助や全面的な介助が必要(オムツを使用していることが多い) ・ 自力で食事をすることが困難なため、スプーンなどでの介助が必要 ・ 誤嚥を起こしやすいため、通常の食事が摂れない場合には、食事の形態を変えるなど特別な配慮が必要 ・ 食事を経口で摂れず、鼻に留置した管や胃ろう等から、児童に対しては医療用ミルク、成人の場合は半消化態栄養剤を注入する方もいる ・ 常に医学的な管理を必要とし、人工呼吸器を使用する場合や、胃ろうや吸引など医療的ケアが必要な方もいる ・ 言葉でのコミュニケーションが困難な方が多い 〔主な対応〕 ・ 人工呼吸器などを装着して専用の車いすで移動する方もいるため、電車等の乗降時等で人手が必要なときは、周囲の人が介助者に声をかけ、何を手伝えばよいか聞くなど配慮する ・ 体温調整がうまくできないことも多く、常に医学的管理が必要なため、急な温度変化を避け、一定の湿度の保持等環境に配慮する 好事例8 ちょっとした配慮で家族と一緒に外出(重症心身障害) ・外食の際に、食事形態を整えるために持参した電源を要する器具を使用したいと思いました。 → お店の方に伝えたら、電源を快く使わせていただけました。胃ろうなどから注入をする場合でも、お店の方たちが温かい対応をしてくださり、家族と一緒に外出しやすくなりました。 ・外出先のトイレに、大人用の折りたたみ式ベッドがありませんでした。 → お店の方に伝えたら、別室に案内していただき、おむつ交換をすることができました。 (60ページ) 10 知的障害 〔主な特性〕 ・ おおむね18歳頃までの心身の発達期に現れた知的機能の障害により、生活上の適応に困難が生じる ・ 考える、理解する、読む、書く、計算する、話す等の知的な機能に発達の遅れが生じる ・ 理解できても、話す・書くといった表現が苦手な方もいる ・ 金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応について状態に応じた援助が必要 ・ 主な原因として、ダウン症候群などの染色体異常、又は先天性代謝異常によるものや、脳症や外傷性脳損傷などの脳の疾患があるが、原因が特定できない場合もある ・ てんかんを合併する場合もある ・ ダウン症候群の場合の特性として、筋肉の低緊張、知的な発達の遅れがみられることが多い、心臓に疾患を伴う場合があることがあげられる 〔主な対応〕 ・ 言葉による説明などを理解しにくいため、ゆっくり、丁寧に、分かりやすく話す ・ 本人の返事をじっくり待つ ・ 文書は、漢字を少なくしてルビを振るなどの配慮で理解しやすくなる場合がある ・ 写真、絵、ピクトグラム(絵文字)など分かりやすい情報提供を工夫する ・ 説明が分からないときに提示するカードを用意したり、本人をよく知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる環境を工夫する 好事例9 飲食店のメニュー選び(知的障害) 外食をしようとしたGさんは、飲食店等で料理を選ぶことが苦手でした。メニューが字だけで書かれている場合、内容を把握することがなかなか難しいからです。 → Gさんが利用した飲食店では、ほとんどのメニューに写真が活用されており、また、店員が分かりやすく説明をしてくれたため、好きな料理を選ぶことができました。 (61ページ) 11 発達障害 <自閉症、アスペルガー症候群を含む広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)> 〔主な特性〕 ・ 相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い ・ 見通しの立たない状況では不安が強いが、見通しが立つ時はきちんとしている ・ 大勢の人がいる所や気温の変化などの感覚刺激への敏感さで苦労しているが、それが芸術的な才能につながることもある ・ 自閉症スペクトラムの方の中には、知的障害を伴う方もいる 〔主な対応〕 ・ 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・ 肯定的、具体的、視覚的な伝え方を工夫する(「○○をしましょう」とシンプルに伝える、その人の興味関心に沿った内容や図・イラストなどを使って説明するなど) ・ スモールステップによる支援を行う(手順を示す、モデルを見せる、体験練習をする、新しく挑戦する部分は少しずつ行うなど) ・ 感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整を行う(イヤーマフを活用する、大声で説明せずホワイトボードで内容を伝える、人とぶつからないように居場所を衝立などで区切る、クーラー等の設備のある部屋を利用できるように配慮するなど) ・ 本人の返答や返事をじっくり待ち、焦らないで話ができるようにする 好事例10 個別の対応で理解が容易に(自閉症スペクトラム) Hさんは、利用者全体に向けた説明を聞いても、理解できないことがしばしばある方です。そのため、ルールや変更事項等が伝わらないことでトラブルになってしまうことも多々ありました。 → そこで、Hさんには、全体での説明の他に個別に時間を取り、正面に座り、文字やイラストにして直接伝えるようにしたところ、様々な説明が理解できるようになり、トラブルが減るようになりました。 <学習障害(限局性学習障害)> 〔主な特性〕 ・「話す」「理解」は普通にできるのに、「読む」「書く」「計算する」ことが、努力しているのに極端に苦手 (62ページ) 〔主な対応〕 ・ 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・ 得意な部分を使って情報アクセスし、表現できるようにする(ICT を活用する際は、文字を大きくしたり行間を空けるなど、読みやすくなるように工夫する) ・ 苦手な部分について、課題の量・質を適切に加減する、柔軟な評価をする ・ ストレスケアを行う(傷つき体験への寄り添い、適応行動ができたことへのこまめな評価) 好事例11 苦手なことに対しては、事前のサポート(発達障害) 発達障害のIさんは文字の読み書きが苦手であり、様々な手続の際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。 → そこで、Iさんの相談を受けている職員は、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」「職員が鉛筆で下書きする」などを試したところ、書類作成を失敗する回数が少なくなりました。 <注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動性障害)> 〔主な特性〕 ・ 次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに様々なことに取り組むことが多い 〔主な対応〕 ・ 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・ 短く、はっきりとした言い方で伝える ・ 気の散りにくい座席の位置の工夫、分かりやすいルール提示などの配慮を行う <その他の発達障害> 〔主な特性〕 ・ 体の動かし方の不器用さ、我慢していても声が出たり、体が動いてしまったりするチック、一般的に吃音といわれるような話し方なども、発達障害に含まれる 〔主な対応〕 ・ 本人をよく知る専門家や家族にサポートのコツを聞く ・ 叱ったり拒否的な態度を取ったり、笑ったり、ひやかしたりしない (63ページ) ・ 日常的な行動の一つとして受け止め、時間をかけて待つ、苦手なことに無理に取り組まず、できることで活躍する環境を作るなど、楽に過ごせる方法を一緒に考える 12 精神障害 〔主な特性〕 ・ 精神障害の原因となる精神疾患は様々であり、原因となる精神疾患によって、その障害特性や制限の度合いは異なる ・ 精神疾患には、いくつもの種類があり、その中には、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態が続くものがある ・ 代表的な精神疾患として、統合失調症や気分障害等がある ・ 障害の特性も様々であるため、積極的に医療機関と連携を図ったり、専門家の意見を聴くなど関係機関と協力しながら対応する <統合失調症の場合> 〔主な特性〕 ・ 発症の原因はよく分かっていないが、100人に1人弱の割合で発症する、比較的一般的な病気である ・ 「幻覚」や「妄想」が特徴的な症状だが、その他にも様々な生活のしづらさが障害として表れることが知られている ・ 陽性症状 (幻覚) 実態がなく他人には認識できないが、本人には感じ取れる感覚のこと とりわけ、自分の悪口やうわさ、指図する声等が聞こえる幻聴が多い (妄想) 明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのこと 誰かに嫌がらせをされているという被害妄想、周囲のことが何でも自分に関係しているように思える関係妄想など ・ 陰性症状 意欲が低下し、以前からの趣味や楽しみにしていたことに興味を示さなくなる 疲れやすく集中力を持続できず、人づきあいを避け引きこもりがちになる 入浴や着替えなど清潔を保つことが苦手となる 等 ・ 認知や行動の障害 考えがまとまりにくく何が言いたいのか分からなくなる 相手の話の内容がつかめず、周囲にうまく合わせることができない 等 (64ページ) 〔主な対応〕 ・ 統合失調症は脳の病気であることを理解し、病気について正しい知識を学ぶ必要がある ・ 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する ・ 社会との接点を保つことも治療となるため、本人が病気と付き合いながら、他人と交流したり、仕事に就くことを見守る ・ 一方で、ストレスや環境の変化に弱いことを理解し、配慮した対応を心がける ・ 一度に多くの情報が入ると混乱するので、伝える情報は紙に書くなどして整理してゆっくり具体的に伝えることを心がける ・ 症状が強い時には無理をさせず、しっかりと休養をとったり、速やかに主治医を受診することなどを促す <気分障害の場合> 〔主な特性〕 ・ 気分の波が主な症状として見られる病気で、うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、うつ状態と躁状態を繰り返す場合には、双極性障害(躁うつ病)と呼ぶ ・ うつ状態では気持ちが強く落ち込み、何事にもやる気が出ない、疲れやすい、考えが働かない、自分が価値のない人間のように思える、死ぬことばかり考えてしまい実行に移そうとするなどの症状が出る ・ 躁状態では気持ちが過剰に高揚し、普段ならあり得ないような浪費をしたり、ほとんど眠らずに働き続けたりする その一方で、ちょっとした事にも敏感に反応し、他人に対して怒りっぽくなったり、自分は何でもできると思い込んで人の話を聞かなくなったりする 〔主な対応〕 ・ 専門医の診察の上で、家族や本人、周囲の人が病気について理解する ・ 薬物療法が主な治療となるため、内服を続けるために配慮する ・ うつ状態の時は無理をさせず、しっかりと休養をとれるよう配慮する ・ 躁状態の時は、金銭の管理、安全の管理などに気を付け、対応が難しい時には専門家に相談する ・ 自分を傷つけてしまったり、自殺に至ることもあるため、自殺などをうかがわせるような言動があった場合には、本人の安全を確保した上で、速やかに専門家に相談するよう本人や家族等に促す (65ページ) <アルコール依存症の場合> 〔主な特性〕 ・ 飲酒したいという強い欲求をコントロールできず、過剰に飲酒したり、昼夜問わず飲酒したりすることで身体的、社会生活上の様々な問題が生じる ・ 体がアルコールに慣れることで、アルコールが体から抜けると、発汗、頻脈、手の震え、不安、イライラなどの離脱症状が出る ・ 一念発起して断酒しようとしても、離脱症状の不快感や、日常生活での不安感から逃れるために、また飲んでしまう 〔主な対応〕 ・ 本人や家族に病識がなくても、アルコール依存症は治療を必要とする病気であるということを、本人や家族等の周囲が理解する ・ 周囲の対応が、結果的に本人の飲酒につながってしまう可能性があるため、家族も同伴の上で、アルコール依存症の専門家に相談する ・ 一度断酒しても、再度飲酒してしまうことが多いため、根気強く本人を見守る <てんかんの場合> 〔主な特性〕 ・ 何らかの原因で、一時的に脳の一部が過剰に興奮することにより、発作が起きる ・ 発作には、けいれんを伴うもの、突然意識を失うもの、意識はあるが認知の変化を伴うものなど、様々なタイプのものがある 〔主な対応〕 ・ 誰もがかかる可能性がある病気であり、専門家の指導のもとに内服治療を行うことで、多くの方が一般的な生活を送れることを理解する ・ 発作が起こっていないほとんどの時間は普通の生活が可能なので、発作がコントロールされている場合は、過剰に活動を制限しない ・ 薬の内服を適切に続けられるように配慮することが重要である ・ 発作が起こってしまった場合には、本人の安全を確保した上で専門機関に相談する <認知症の場合> 〔主な特性〕 ・ 認知症とは、単一の病名ではなく、種々の原因となる疾患により記憶障害 (66ページ) など認知機能が低下し、生活に支障が出ている状態である ・ 原因となる主な疾患として、アルツハイマー病、脳血管障害、レビー小体病、前頭側頭変性症(ピック病など)がある ・ 認知機能の障害の他に、行動・心理症状(BPSD)と呼ばれる症状(徘徊、不穏、興奮、幻覚、妄想など)がある 〔主な対応〕 ・ 超高齢社会を迎え、誰もが認知症とともに生きることになる可能性があり、また、誰もが介護者等として認知症に関わる可能性があるなど、認知症は身近な病気であることを理解する ・ 各々の価値観や個性、想い、人生の歴史等を持つ主体として尊重し、できないことではなくできることに目を向けて、本人が有する力を最大限に活かしながら、地域社会の中で本人の馴染みのある暮らし方や人間関係が継続できるよう、支援していく ・ 早期に気付いて適切に対応していくことができるよう、小さな異変を感じたときに速やかに適切な機関に相談できるようにする ・ 行動・心理症状(BPSD)には、何らかの意味があり、その人からのメッセージとして聴くことが重要であり、BPSDの要因として、様々な身体症状、孤立・不安、不適切な環境・ケア、睡眠や生活リズムの乱れなどにも目を向ける ・ 症状が変化した等の場合には、速やかに主治医を受診し、必要に応じて専門機関に相談することなどを促す 好事例12 薬が効くまでの時間をもらえると(精神障害) Jさんは、精神障害当事者としての経験を生かして、福祉サービス事業所でピアサポーター(※)として活動しています。しかし、月に一度位は幻聴が出ることがあり、Jさんは活動に支障が出ることをとても心配していました。 → 職員に相談すると、「普段はどうしているのですか?」と質問され、Jさんは「頓服薬を飲んで1時間位静養すると治まってくる」と説明しました。すると、「自分なりの対処方法があるのはよいことですよ」「症状があっても、工夫をしながら活動を続けることが大切です」「他の利用者の励みになるのだから気にする必要はありません」と言われ、幻聴が出た時は、頓服が効くまで静養できることになりました。その後、Jさんは、ピアサポーターとして自信を持ちながら、安心して活動を続けています。 ※ピアサポーター:同じ症状や悩みをもち、同じような立場にある仲間を、英語で「ピア」と言い、体験を語り合い、回復を目指す取組(=「ピアサポート」)を行う人を指します。 (67ページ) 13 難病 〔主な特性〕 ・ 「難病」とは、神経筋疾病、骨関節疾病、感覚器疾病など様々な疾病により多彩な障害を生じるもの ・ 主なものとして、血液系、免疫系、内分泌系、代謝系、神経・筋、視覚系、感覚系、循環器系、呼吸器系、消化器系、皮膚・結合組織系、骨・関節系、腎・泌尿器系等、多種多様で、病気の状態や症状は個人差があり、重篤で全面介助の生活を送っている方もいれば、ほとんど問題なく日常生活を送っている方まで様々である ・ 「障害」が固定せず、進行したり、体調や服薬の状況によって変動したりすることもある ・ 外見からでは障害があることが分かりにくい方もいるなど、必要な配慮についても個々のケースによって大きく異なる ・ 常に医療的対応を必要とすることが多い ・ 病態や障害が進行する場合が多い ・ 難病のうち、医療の確保の必要性が高いもので一定の要件を満たすものは、指定難病として医療費助成の対象で、その数は、平成30年4月1日現在331疾病であり、今後も指定難病は追加される可能性がある 〔主な対応〕 ・ 専門の医師や東京都難病相談・支援センターなど、難病に詳しい専門機関等に相談する等により、病気について理解する ・ それぞれ病気による症状や状態により特性が異なるため、その特性に合わせた対応をする <例>  「疲れやすい」という特徴のある方には、柔軟に休憩をとれるようにする (外見からでは病気が分かりづらい方などは、休憩をとっているのではなく、さぼっていると誤解されてしまうこともよくある) ・ 体調がよくない時に休憩できる場所を確保する ・ 疾患により、トイレに頻繁に行く・暑さ寒さに気をつけることに留意する ・ 状態の変動などに留意する ・ 外見に目立つ症状がある疾患などは、難病に対する知識の不足から、うつる病気と誤解されることがあるが、難病は伝染病ではないため、誤解や偏見を招かないよう配慮する ・ 進行する場合、病態・障害の変化に対応が必要である (68ページ) ・ 多くの疾患では定期的な通院が不可欠であり、定期的な通院をすることで、入院や長期の休みなどを予防することができるため、通院に配慮する 好事例13 色素性乾皮症(XP)児の保育所における対応(難病) 遮光対策が必要な疾病である色素性乾皮症患児のKちゃんは、紫外線対策がなされていない保育所に入所することは困難です。 → 入所を希望する保育所と話し合った結果、UVカットシートを保育室等の窓ガラスに貼ること、紫外線を遮断するために窓は常時閉鎖してエアコンを取り付けることのほか、保育所側に日光に当たってしまった際の対応策などを十分把握してもらった上で、他の保育園児・保護者への説明も十分行い疾病に対する理解を得ることで、安心して保育所に通うことができるようになりました。 (69ページ) コラム ヘルプマーク 【ヘルプマーク】 義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることができるマークです。 ヘルプマークを身につけた方を見かけたら、電車・バス内で席をゆずる、困っているようであれば声をかける等、思いやりのある行動をお願いします。 ○ 電車・バスの中で、席をお譲りください。 外見では健康に見えても、疲れやすかったり、つり革につかまり続けるなどの同じ姿勢を保つことが困難な方がいます。 また、外見からは分からないため、優先席に座っていると不審な目で見られ、ストレスを受けることがあります。 ○ 駅や商業施設等で、声をかけるなどの配慮をお願いします。 交通機関の事故等、突発的な出来事に対して臨機応変に対応することが困難な方や、立ち上がる、歩く、階段の昇降などの動作が困難な方がいます。 ○ 災害時は、安全に避難するための支援をお願いします。 視覚障害者や聴覚障害者等の状況把握が難しい方、肢体不自由者等の自力での迅速な避難が困難な方がいます。 ※ヘルプマークのイラスト・写真あり。 (70ページ) コラム、ヘルプカード 【ヘルプカード】 障害者が普段から身につけておくことで、緊急時や災害時、困った際に、周囲の配慮や手助けをお願いしやすくするカードです。 ※ ヘルプカードの活用場面 ○ 災害が発生したとき ○ 災害に伴う避難生活が必要なとき ○ 道に迷ってしまったとき ○ パニックや発作、病気のとき ○ ちょっとした手助けが必要なとき など ヘルプカードには、緊急連絡先や必要な支援内容等が記載されています。記載内容に沿った支援をお願いします。 ※ヘルプカードイラストあり。 表面:あなたの支援が必要です。ヘルプカードの文字とヘルプマーク。 裏面:下記に連絡してください。私の名前(ア)連絡先の電話、連絡先名(会社・機関等の場合)、呼んでほしい人の名前、(イ)連絡先の電話、連絡先名(会社・機関等の場合)、呼んでほしい人の名前。 (71ページ) 第6 相談体制の整備等 1 相談体制の整備について ○ 行政機関等においては、それぞれの事業を所管する部署が、都民からの相談に的確に応じられるようにすることが大切です。 ○ 事業者による差別については、まず当該事業者において対応することとなります。事業者においては、下記ポイントを検討していくことが必要です。 ・ 既存の苦情解決体制や相談窓口を活用すること。 ・ 新たにお客様窓口等の相談窓口等を設置したりする際には、ホームページ等を活用し、相談窓口等に関する情報の周知を図り、利用しやすいものとするよう努めること。 ・ 対面のほか、電話、FAX、電子メールなどの多様な手段を用意しておくこと。なお、相談等に対応する際には、障害者の性別・年齢・状態等に配慮が必要です。また、実際の相談事例は、相談者のプライバシーに配慮しつつ順次蓄積し、以後の合理的配慮の提供等に活用することが望まれます。 ○ 東京都や区市町村における事業所の指導監督権限を有する部署では、事業者に対して、対応指針に係る十分な情報提供を行うとともに、都民や事業者からの照会・相談に丁寧に対応するなどの取組を積極的に行いましょう。 ○ 東京都の職員による差別の相談については、東京都の各局等において相談窓口を定め、東京都福祉保健局のホームページ内で公開しています。 また、都内区市町村の障害者差別解消法所管一覧も掲載しています。 http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/sodan/syougaisyakenri.html    ○ 障害者差別解消法及び都条例の内容や運用については、下記窓口にお問い合わせください。   東京都障害者権利擁護センター   電 話:03−5320−4223   FAX:03−5388−1413   (対応時間:平日 午前9時から午後5時まで)   メール:syougaisyakenriyougo@section.metro.tokyo.jp (72ページ) コラム 「障害者差別解消支援地域協議会」とは 障害を理由とする差別に関する相談や紛争の防止、解決の取組を進めるため、国や地方公共団体の機関が、それぞれの地域で障害者差別解消支援地域協議会を組織できることとなっています。 協議会が組織され、関係する機関などのネットワークが構成されることによって、いわゆる「制度の谷間」や「たらい回し」が生じることなく、地域全体として、差別の解消に向けた主体的な取組が行われることが目的とされています。 東京都においては、障害者差別解消法の施行後、本協議会を設置し、都条例の制定に向けて検討を行ってきました。今後も、関係機関等が対応した相談事例の共有や、啓発などについての協議を行い、障害を理由とする差別の解消に取り組んでいきます。 ※組織イメージ図。 構成機関の相談窓口、行政国、行政地方、民間事業者、NPO法人など。 障害者差別解消支援協議会。相談又は相談事例を共有。取組などについて協議。当事者、学識経験者。 (73ページ) 2 参考情報 ○ 障害特性の理解 障害特性に応じた配慮事項等を知るには、例えば、以下のようなホームページがあります。 ・ ハートシティ東京(東京都福祉保健局障害者施策推進部) http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/tokyoheart/ ・ 公共サービス窓口における配慮マニュアル‐障害のある方に対する心の身だ しなみ‐(内閣府) http://www8.cao.go.jp/shougai/manual.html ・ 障害の種類と必要な就労支援機器の紹介(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構) http://www.kiki.jeed.or.jp/inf/u0400.html ○ 上記のほか、内閣府が「合理的配慮サーチ」(合理的配慮等具体例データ集)を構築しています。 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/ ○ 国等職員対応要領・事業者向け対応指針 国では、府省庁ごとに職員向け対応要領と事業者向け対応指針を作成しています。各府省庁の対応要領・対応指針は、内閣府ホームページから確認できます。 ・対応要領 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioyoryo.html ・対応指針 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/taioshishin.html ○ 障害者差別解消法全般について 法律全般に関する内容等について、詳しくは内閣府のホームページを参照してください。   http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html ※74ページは白紙です。 (75ページ) おわりに 障害者差別解消法及び都条例はどちらも、障害の有無によって分け隔てられることなく、誰もがお互いの個性と人格を尊重し、理解し合うことによって、共生社会を実現することを目指しています。 しかし、社会に存在する障害者に対する差別は、障害者差別解消法や都条例が成立したことで直ちに解消するものではなく、この法律や都条例の内容をきちんと理解し、誰もが暮らしやすい社会をつくるための行動が、皆様一人ひとりに求められています。 そのためには、障害について理解し、障害のある方と対話し、お互いに考え、障害を理由とする権利侵害が起こらないよう、一人ひとりが取り組むことが重要です。 ハンドブック作成に当たっては、各府省庁が作成した職員対応要領、各主務大臣が作成した対応指針等を参考にしました。 今回の改定に当たっては、東京都が新たに制定しました東京都障害者差別解消条例の普及啓発に加え、対応の指針となるよう対応の事例の内容を分かりやすく拡充しています。 このハンドブックに記載していることは、あくまでも例示であり、記載された事例が全てではありません。しかし、このハンドブックを活用いただき、どうすればよいのか考え、理解し合うきっかけにしていただければ幸いです。 東京都は、皆様とともに、障害を理由とした差別のない社会の実現を目指していきます。 このハンドブック作成・改定に当たっては、障害者団体・事業者団体等の皆様から、御意見を頂戴しました。 また、作成時にはパブリックコメントも実施し、多くの方々から御意見を頂きました。 貴重な御意見・御提案をお寄せいただき、どうも有難うございました。 ≪御協力団体一覧≫ 東京都障害者差別解消支援地域協議会 委員・オブザーバーの皆様 障害者と家族の生活と権利を守る都民連絡会 東京都重症心身障害児(者)を守る会 東京都精神障害者団体連合会 特定非営利活動法人 東京都自閉症協会 ※76ページは白紙です。 (77ページ) 東京都障害者差別解消法ハンドブック 平成30年10月発行 印刷番号(30)34 編集・発行/東京都 福祉保健局 障害者施策推進部 計画課・東京都心身障害者福祉センター 〒163‐8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 電話 03‐5320‐4559(ダイヤルイン) FAX 03‐5388‐1413