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残留抗菌性物質の検出事例

 牛や豚などの病気の治療のために抗菌性物質を使用し、その後法令で定められた休薬期間(薬物が体内から排泄される期間)を守らずに出荷した場合などは、筋肉等の中に薬物が残留する場合があります。
 ここでは、その一例をご紹介します。

ベンジルペニシリンを基準以上検出した豚

 と畜検査で、豚の頚部の筋肉に注射の痕跡が認められ、注射剤が筋肉中に残留しているのが発見されました。

注射の痕跡が認められた筋肉
豚の頚部(首の部分)の筋肉

 矢印で示したところが注射剤が残留している部位です。

 抗菌性物質の検査を実施したところ、ベンジルペニシリンを基準以上検出し、食品衛生法違反となりました。
 この豚の枝肉は販売禁止となり、出荷者などから答申書・始末書を徴収し、また生産県へ通報し生産者への指導を依頼するなどの再発防止を図りました。

検査方法

検体は筋肉、肝臓、腎臓
筋肉、肝臓、腎臓の一部を検体として採取します。

ホモジナイザー
検体を細かく粉砕します。

ロートで濾す
検体を濾して抽出液をディスク(ろ紙)にしみ込ませます。

矢印 下へ
ディスクを培地に乗せて培養します。

ディスクを置いた培地

 左から、バチルスズブチルス、バチルスマイコイデス、ミクロコッカスルテウスを生やした培地です。
 検体からの抽出液を含ませたディスクをこれらの培地に置きます。これを培養すると菌が増殖して培地全体が白く濁ってきますが、抗生物質などが入っていると、菌が死んでディスクの周りに透明な阻止円ができます。
 抗生物質等の種類によって、各培地の阻止円のでき方が違ってきます。

阻止円ができた培地
ペニシリン系抗生物質の定量試験


 ディスクに検体からの抽出液を含ませて培地におきます。
 検体にペニシリン系の抗生物質が含まれていると、ディスクの周りに透明な阻止円ができます。
 阻止円の大きさ(直径)を計ることで、検体に含まれていたペニシリンの量がわかります。

Bacillus(Geobacillus) stearothermophilus 培地によるペニシリン系抗生物質の定量試験

バイオオートグラムの阻止円


左 腎臓100倍希釈液    
右 筋肉100倍希釈液

どちらの培地も、左から ベンジルペニシリン・検体・アンピシリンの順

 ペニシリン系の抗生物質には、いろいろな種類があります。種類を同定(どうてい)するために、オートバイオグラフィを使います。

試験溶液を滴下


 まず、薄層板の下端から3センチメートルの位置に各抗生物質標準溶液および検体から抽出した試験溶液を10マイクロリットルスポットします。
 これに下端から検査用の溶液を染み込ませて約10センチメートルまで広がった後,薄層版を角型シャーレに入れて培地を流し込みます。

シャーレに試験液を流し込む


 55℃で17時間培養した後、得られたバイオオートグラムの阻止円のRf値(移動率)を測定します。
 検体(各培地の中央)のRf値がベンジルペニシリンのRf値(0.79)と一致したので、当該抗生物質をベンジルペニシリンと同定(どうてい)しました。

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