「目をそらさずに・・・みんなで一緒に『自殺予防』を考えたい・・・」
「自殺」などと言いますと、ちょっとセンセーショナルですね。でも、本当に「自殺」という文字を目にすることが多くなっています。長引く不況、いじめ、ネット自殺いろいろな要因があるのだと思います。目をそらさずに、皆様もご一緒にお考え下さい。
Q1.思い返してみますと確かに自分の周りにも自らの命を絶った人が存在しますね。
A1.
はい、全国的には、平成10年に自殺で亡くなった方が急増しています。その年は約3万3千人も亡くなったんですよ。それ以降、年間約3万人の方が自殺によってなくなっている状況が続いていす。3万人といいますと、交通事故で亡くなる方の約5倍以上となっています。それだけではなく、1人の自殺死亡者の後ろには、10人の未遂者がいるともいわれているんですよ。
東京都では、年間2,500〜2,700人の方が自ら命を絶っています。本当に多くの命が失われている事になりますね。東京においては、自殺で亡くなる方は交通事故で亡くなる方の約10倍になっています。
Q2.平成10年に急増して、そこから10年、毎年3万人以上の方が自らの命を絶っているのですね?さらに、極端に言えば、その後ろには、30万人の自殺未遂者がいるということなんですね?社会的に大変、大きな問題ですよね?
A2.
そうですね・・・。
平成10年と言えば、山一證券の破綻がありました。バブル経済の崩壊の影響が尾を引いた形になるかと思いますが・・・、バブルの崩壊以降、日本の経済は低迷を続けていますよね。経済的な背景は、自殺問題と非常に大きくかかわっているといえます。自殺については、一つの原因のみで説明できるほど単純ではありません。大変複雑な原因や背景が考えられます。警察庁が出しています「自殺の概要」によりますと、遺書に残された原因や動機には「家庭問題」「健康問題」「経済生活問題」「勤務問題」「男女問題」「学校問題」などが上がっています。
Q3.そうですよね。経済状態や心の問題や体の病気など様々な問題が複雑に絡み合い、最後の最後は自らが死を選ばざるを得ないところまで追い込まれるという事なのでしょうね。日本における「自殺」についての特徴というものはそのほかにもあるのですか?
A3.
はい、人口10万人に対して15〜20人が自殺で死亡している現状があります。世界的にみても自殺死亡率が高い国に入っています。また、平成10年の時は、中高年の自殺死亡の急増ということで注目されましたが、いまや幅広い年齢層での自殺死亡が多いです。自殺手段としては、縊死や飛び降りが多いです。最近では、若年層の自殺増加が懸念されています。ネットで呼びかけ、練炭で集団自殺なんていう事件も話題になっていますよね。
日本は世界的にみても自殺死亡が多いと言いましたが、G8(先進国首脳会議:アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・ドイツ・イタリア・ロシア・日本)での自殺死亡の一番高い国はどこだと思いますか?2000年の統計ですけど、ロシアが1位、日本は2位です。ロシアは今経済的な格差も非常に大きいですし、とても寒いのでウォッカなどによるアルコール依存症も多いです。そういった諸々の事情によってロシアは自殺が多いのではないかといわれております。
では、日本についてはどうでしょうか。東京は死亡率は低いんですよ。高い県は秋田県、岩手県、山形県など北のほうです。
Q4.日本の自殺について少し分かった気がします。では、この現状に対して、社会的にはどのような動きがあるのでしょうか・・・?
A4.
平成12年に「健康日本21」という国民の健康づくり運動計画ができたのですが、その中に「自殺者の減少」という数値目標が掲げられています。30,000人以上の自殺者数を22,000以下にするというものです。その後、様々な取組みをしたのですが、減少には至りませんでした。平成17年に参議院の厚生労働委員会で「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」が為され、意識調査や関係省庁連絡会等で討議が続けられ、平成18年10月に「自殺対策基本法」がつくられました。そして、昨年、平成19年6月に「自殺総合対策大綱」が策定されました。
Q5.「自殺総合対策大綱」ですか?「大綱」といいますと大元・根本になることですよね・・・国は、基本的にどんな考え方を出したのですか?
A5.
6つの基本的な考え方があります。1つ、総合的に「自殺予防対策」に取組む事。2つ、国民一人ひとりが自殺予防に取組む事。3つ、自殺予防の体制を整備し、未遂者や遺族へのフォローを行う事。4つ、自殺企図者を関係者が連携して支える事。5つ、自殺の実態解明を進め施策に展開する事。6つ、中長期的視野で、継続して対策を進める事・・・です。なんか、ややこしいですよね。まとめてみますと、こうなります。『日本の自殺について実態を明らかにして、国民一人ひとりの「気づき」や「見守る」という力を育て、特に地域の中に自殺予防に関する中心的役割を担う人材を養成し、心の健康づくりを進めると共に社会的資源(利用しやすい精神科医療体制の整備や関係機関・民間団体等)の連携の下、社会で自殺を防ぐ。さらに自殺未遂者や遺された人のフォローもしっかりと行う』というものです。なんとなく分かっていただけましたか?
Q6.なるほど、社会で取組むというところが目玉ですね。自殺総合対策の中に精神科医療体制というところまで踏み込んでいるようですが、心の病気と自殺の関係は何かあるのですか?よく、自殺した方が、うつ病だったというような話しを聞きますよね?うつ病=自殺というようなイメージがあるのですが・・・どうなのでしょうか?
A6.
おっしゃるとおり、うつ病は、自殺に最も密接に関連する病気と言われています。例えば、からだの病気に罹っている人は、からだの病気に罹っていない人に比べて、うつ病が合併する割合が高いようです。また、からだの病気の治療のために飲んでいる薬の副作用などでうつ症状が現れる事もありますので、注意する必要があります。
ある研究者の報告では、心の病気は自殺の重要な危険因子の一つであると言われています。自殺する方の大多数は、最後の行動に及ぶ前に気分障害(うつ病)、統合失調症、アルコール依存症、物質関連障害(薬物依存症等)、パーソナリティー障害といった何らかのこころの病気にかかっていたと指摘する声が多いようです。しかし、この方々が適切な治療を受けていたかというとそうでもないのです。うつ病、統合失調症、アルコール依存症を早期に診断し、適切に治療する事によって、自殺を予防する余地は十分に残されているとWHO(世界保健機関)は強調しています。
Q7.大きな社会問題となった「自殺」に関して、国も本腰を入れて取組もうというものなのですね。
A7.
そうですね。国の動きも踏まえて、東京都でも取組みを始めています。
Q8.具体的には、どのような取組みなのですか?
A8.
東京都では、『みんなでいのちを大切にし、だれもが生きやすい東京を目指して』をキャッチフレーズに、平成19年7月10日に『自殺総合対策東京会議』を設置しました。「一人一人のかけがえのないいのちを大切にする生きやすい社会の創造」を都民みんなで取組もう・・・というものです。自殺総合対策について、大きく分けて『予防』と『危機対応』と『事後対応』という3つの分野から取組みを進めていこうとしています。
予防については、『自殺防止キャンペーン』を毎年、9月と3月に行い、都民のみなさまの意識啓発を深めようとしています。講演会や映画会の開催やホームページを活用した普及啓発事業を進めています。都民の皆様からポスターや標語を募集して、それを活用したキャンペーン活動を展開するなどしています。また、危機対応については『ゲートキーパーの養成』『相談・支援のネットワーク構築』『産業医・かかりつけ医と精神科医療機関との連携強化』などにより「自殺防止に向けた専門対応力を強化することとしています。最後に、事後対応についてですが『遺族支援』の検討を行っていくとしています。多摩地区のある保健所においては、遺族の方々が集まる「わかちあいの会」を設立し活動を開始しています。
Q9.『ゲートキーパー』という言葉が出てきましたが、面白いですね?門番・・・ですか?ゲートキーパーは、どんな人がなるんでしょうか?また、どんなお仕事をするんですか?
A9.
はい、ゲートキーパーは、地域で自殺予防に取組む時のまさしく門番なのです。早期に住民の方々の悩みを察知し、「生きることを支援」していただく役割をもっています。当面は、行政の保健師や地域で活動している民生委員、児童委員、健康推進員など、こころや体の健康に関わる方が、ゲートキーパーになっていただきます。きまった養成研修を受けていただき、うつ病や自殺に関する基本的な知識を学んでいただきます。そして、自分の活動の中で関わる方々の心と体の不調のサインに気づき、必要に応じては、相談機関・専門機関につないでいただき、相手の方の生きること、生活する事に支援をしていただきます。ゲートキーパーの生活エリアで、自殺のサインに『気づき・見守り・つなぐ』ことのできる存在になっていただきます。
そして、いずれは、健康問題に関わる人々だけでなく、地域住民のみなさまそれぞれがゲートキーパーになっていただくと言う事になろうかと思います。それぞれみんなで、家族は勿論、近所の人や同僚・同級生、先輩や後輩、地域に生活している人に対して「気づき」「見守る」力を蓄えて、地域全体で自殺を予防しようという『地域コミュニティーの創造』につながるものだと思います。
Q10.本当にそのような地域が創造できると良いですね。東京都の取組みが進む事を願っています。東京都の取組みをこの地域で実際にやっていくには、保健所を始めとした市などの行政が何か具体的に始めるのでしょうか?
A10.
はい、始めています。実は、私もゲートキーパー指導者養成研修というのを先
月、2月14日に受けました。(バレンタインデーだったですよね・・・チョコレートを配り損ねました・・・。)そして、「終了証書」を貰っています。つまりゲートキーパー養成の指導者になった訳です。私どものような指導者がさらに指導者を増やし、そして、ゲートキーパーを養成していく仕組みを考えています。また、心の健康についての講演会などを継続して、うつ病や自殺予防について普及啓発していきます。さらに保健所が管轄させていただいているこの地域の中で、心や体の相談を行っている関係機関や精神科医療関係機関、教育関係機関や警察、消防など、自殺予防に関連する機関とのネットワークを構築し、「自殺予防」に地域で取組む基盤をつくっていきたいと思っています。また、地域の中で心の悩みに対して、早くから取組んでおられた「いのちの電話」や「自殺防止センター」など民間機関との協働やこの地域の環境や特徴、人材など、地域性をフルに生かした「自殺総合対策」に取組んでいきたいと思っています。申し送れましたが、本日、こちらの番組に出演させていただいたのもその一環です。よろしくお願いいたします。
最後に
本日は、少し重い題材である「自殺」についてお話しを伺い、地域社会全体で取組む「自殺予防」についてお伝えしました。この世に生を受け、できるならば天寿を全うしたいなどと考えがちですが、人は生きていく間に様々な事に突き当たります。その問題を何とか解決できれば良いのですが、どうにもならず自らの命を絶たなければならない状況に追い込まれる人もいます。
冒頭にも申し上げましたが、「自殺」は、自分から遠いところにある事象ではありません。今の日本は、その事実から目をそらしてはならない現状になっているように思います。皆さん、一人ひとりが真剣に「生きること」を考えてみる必要があるかもしれませんね。この世の中において、自ら命を絶つ事を選択せざるを得ない人たちが少しでも減り、自分の人生を自分なりに充実させ、過ごしていただける事を心から願っています。そのような環境づくりを私たち一人一人がおこなっていかなくてはならないんだな・・・としみじみと感じています。
お問い合わせ
このページの担当は 多摩小平保健所 保健対策課 地域保健係 です。
東京都福祉保健局 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号