東京都は、「認知症の人が安心して暮らせるまち・東京キャンペーン」の幕開けとして、平成18年11月3日から5日まで、都議会議事堂1階都民ホール及び第一本庁舎5階大会議場において、東京都主催のイベント「認知症の人が安心して暮らせるまち・東京を目指して」を開催しました。
第1部 オープニングセレモニー・基調講演「認知症について考える」
▲堀田力氏のビデオメッセージ
第1部は、本キャンペーンに協賛している東映株式会社から提供された映画「明日の記憶」のプロモーション映像により幕を開けました。
オープニングセレモニーとして、主催者である
福祉保健局長の挨拶に続き、厚生労働省が進めている「認知症を知り地域をつくる10ヵ年構想」の運動体である「認知症になっても安心して暮らせる町づくり100人会議」の議長・堀田力氏(財団法人さわやか福祉財団理事長)から、都のキャンペーンに対するビデオメッセージが寄せられました。
▲斎藤正彦氏の基調講演
続いて、斎藤正彦氏(医療法人社団翠会 和光病院院長)から「認知症について考える」と題して、基調講演がありました。
専門医として多くの認知症の方々を支援してこられた斎藤氏より、認知症とは何か、認知症がもたらす障害とは何かについて、分かりやすくお話ししていただきました。
また、認知症になっても安心して暮らせるために、都民、行政、医療・介護従事者などそれぞれの立場でするべきこと、配慮すべきことについてもご教示いただきました。
さらに、身体に障害を持つ人のためのバリアフリー社会があるなら、脳と心に障害を持つ人にとってバリアのない社会も作れるはず、認知症の障害による社会のバリアを取り除き、脳と心のバリアフリー社会を作ろうと提言されました。
プログラム
レジュメ
第2部 シンポジウム「認知症医療・介護最前線」
▲コーディネーターの村田幸子氏
第2部は、福祉ジャーナリストの村田幸子氏をコーディネーターに迎え、シンポジウム「認知症医療・介護最前線」を実施しました。
医療分野からは、順天堂大学医学部の新井平伊氏より認知症医療の最前線の取組を紹介いただきました。介護の分野からは、認知症の方が地域で暮らすことをサポートするケアを実践している「小規模多機能ホームみちしるべ」の鈴木実氏、「グループホームあおぞら」の濱田秋子氏からの基調コメントがあり、続いて医療・介護双方の立場からディスカッションを行いました。
▲第2部の様子
医療の面では、まず「告知」の問題が取り上げられ、本人・家族と医療スタッフが「認知症」という病気を共有し、今後の対応を共に考えることで、本人を孤立させないことが大切であること、そのためにも早期発見・早期治療が求められること、介護保険サービスなどとも連携して、本人と家族を様々な形でサポートしていくことが重要だということが話し合われました。
▲第2部のディスカッション
介護の面では、認知症ケアはスタッフの質が何よりも求められること、また、地域での生活を支援するためには、近所とオープンな関係を作り、認知症の方が実際に生活する姿を見てもらう中で、認知症に対する地域住民の理解が得られ、必要なサポートをしていただけるなどのお話がありました。
プログラム
レジュメ
コーディネーターからのメッセージ(村田幸子氏)(PDF・10KB)
「認知症医療最前線」(新井平伊氏)(PDF・12KB)
「認知症介護最前線」(鈴木実氏)(PDF・77KB)
認知症介護最前線」〜あおぞら入居者の挑戦〜(濱田秋子氏)(PDF・25KB)
第3部 認知症とともに生きる〜今、訴えたいこと〜
▲コーディネーターの小宮英美氏
第3部は、小宮英美氏(NHK解説委員)をコーディネーターに迎え、シンポジウム「認知症とともに生きる〜今、訴えたいこと〜」を実施しました。
ご出演の予定だった認知症ご本人である越智俊二さんは、体調不良のためご欠席となりましたが、越智さんを支援してきた中島七海氏(医療法人笠松会天神オアシスクラブ施設長)が、越智さんや他の利用者さんの思いや体験を綴った詩やエピソードを映像も交えながらご紹介くださいました。また、認知症の妻を在宅で支え看取った長谷川正氏からも認知症ご本人の思いをお話ししていただきました。
▲中島七海氏と長谷川正氏
それぞれのお話を通して、認知症のご本人が一番辛い思いをしている、本人なりの葛藤がある、とてもデリケートな心を持っている、言葉にできないだけ、さらに家族にも言えず、第三者だから打ち明けられる思いもあるということが分かりました。
長谷川氏は、認知症の妻とともに旅行に出掛け、旅先でいろいろと支えてもらった経験から、認知症だからこそ町に出たい、地域の支援があれば認知症であっても暮らせるということをお話しました。
▲第3部のディスカッション
最後に、まとめとして小宮氏から、本人の生きたいという気持ちを地域で支えることが大切である、地域で暮らすために必要なことは「笑顔」と「声かけ」であるとのメッセージがありました。
プログラム
レジュメ
参考資料
「特集 認知症の人が語る」(「りんくる」2005年5月号)(PDF・6,167KB)
「認知症の妻を在宅で支えて感じたこと 今考えていること」(長谷川正氏)(「読売新聞」2006年9月23日、「ぽ〜れ ぽ〜れ」2002年8月号・2006年5月号)(PDF・399KB)
第4部 シンポジウム「認知症にやさしいまちへ〜東京流の『支えあい』を作ろう」
▲コーディネーターの下垣光氏
第4部は、下垣光氏(日本社会事業大学社会福祉学部助教授)をコーディネーターに迎え、シンポジウム「認知症にやさしいまちへ〜東京流の『支えあい』を作ろう〜」を実施しました。
新田國夫氏(医療法人社団つくし会新田クリニック院長)、池山恭子氏(特定非営利活動法人なぎさ虹の会会長)、加瀬正二氏(庚申塚商栄会会長)、白子君代氏(戸塚地域福祉会議事務局)、坂口郁子氏(特定非営利活動法人たすけあい大田はせさんず理事長)の5人から、医師、地域の住民、地域で働く人といったそれぞれ異なった立場で、地域で取り組まれている支援について報告がありました。
▲第4部のディスカッション
ディスカッションでは、「大都市東京」というメリット・デメリットがある中で、「助け合い」を根付かせるために必要なことや、他の地域にも広げていく際のポイント、認知症のことを地域の方々が理解し、受け入れていくための受け皿や工夫、引きこもりがちな高齢者に出てきてもらうための方策などについて考えていただきました。
認知症の人の生活を支えるためのサービスは、医療にできることは必ずしも多くなく、介護保険だけでも不十分で、地域の人々との交流の中での支えあいが重要であることや、引きこもりがちな高齢者に町に出ていただくための特効薬はないものの、周囲の人々がこまめに声をかけていくことが大切などの意見が出ていました。
まとめとして、下垣氏から、どんな方でも入りやすいような受け皿を作り、その中でプライバシーを尊重しつつ、お話がちゃんと聞けたりするようなこと、そういう場をどんどん増やし、その中にいろいろな業種や職種、世代に入っていただき、認知症について知ってもらうことが大切であるとのお話がありました。
▲クロージングセレモニー
最後に、クロージングセレモニーとして、「第3回認知症高齢者を地域で支える東京会議」を開催し、長嶋紀一議長が3日間を振り返って報告し、小宮英美副議長の「認知症は身近な問題であることを知ってほしい」とのコメントで3日間にわたるイベントを締めくくりました。