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1「成人になり気管支ぜん息と診断され、現在治療中の40歳男性」の場合

最終更新日:令和5年5月11日 | 公開日:令和4年1月18日

受診時の状況

40歳の会社員(男性)です。
営業職のため不規則で多忙な生活を送っています。仕事のストレスも多く、喫煙は習慣となっており、日頃の気分転換に欠かせません。
最近、咳込むことが多くなり、最初は風邪かなと思い、ドラッグストアで購入した咳止め薬を飲みました。しかし、症状は良くならず、かかりつけ医に診てもらったところ、咳ぜん息の可能性があると言われました。処方された薬を服用し、少し楽になったかと思っていたら、更に悪化し、ある日、呼吸をするとヒューヒュー、ゼーゼーと音がして、急に胸が締め付けられるように息苦しくなりました。

そこで呼吸器の専門医を受診することにし、肺機能などの検査を受けました。その結果、気管支ぜん息と診断されました。 そういえば、子供の頃、ダニや埃のアレルギーがあり、アレルギー性の発疹や鼻炎がありました。 今回、血液検査と問診の結果、ダニ、埃の他、カビにもアレルギーがあることがわかり、それらのアレルゲンをできるだけ避けた生活をするよう言われ、また、禁煙も勧められました。治療には、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を含むぜん息薬が処方されました。吸入ステロイド薬は毎日継続使用するよう言われました。

その後の状況

しばらく使うと、息苦しさが落ち着いてきたので、吸入ステロイド薬は使ったり、使わなかったり、忘れることもありました。ところが、残業で寝不足が続いたり、疲労やストレスが溜まると、息苦しさは再びひどくなり、気管支拡張薬を使用しても改善しないこともありました。吸入ステロイド薬を継続して使っても、いつも胸が詰まったように苦しい状態が続いています。このままステロイド薬を使うことにも不安があり、本当に良くなるのか心配で、再度主治医に相談をすることにしました。


主治医にこの状況を伝えたところ、次のようなアドバイスを受けました。
≪治療について≫

  • ぜん息は気道粘膜のアレルギー性炎症で、気道の炎症を鎮めるために、吸入ステロイド薬を使用する。そのため、症状の有無にかかわらず、吸入ステロイド薬を継続することで正常時に近い状態にすることができる。
  • 適切な治療を受けないと、気道は炎症と修復を繰り返すうちに腫れてでこぼこになり、狭くなったまま固定されてしまう。これが気道リモデリングというもので、リモデリングが起きると、発作がない時でも息が苦しく、生活の質が落ちてしまう。そうならないようにリモデリングを防ぐことがとても重要。
  • 吸入ステロイド薬は気道や肺の局所に直接届くため、全身の副作用が出にくいメリットがある。その反面、吸入のやり方が上手くいかないと薬が肺まで届かず、効果が出ないため、正しく上手に吸入することが大切。
  • ぜん息は長期に渡る自己管理が大切であるため、毎日ピークフローを測定して、喘息日記をつけること。

≪日常生活について≫

  • 喫煙はぜん息だけでなく、COPDなど様々な肺疾患のリスクが極めて高くなるため、禁煙は必要不可欠である。
  • ダニや埃などのアレルゲンは積極的に避け、部屋はこまめに掃除を行い、寝具の手入れ等を行うこと。
                

以上のアドバイスがあり、今回は息苦しさがなかなか改善しないため、吸入ステロイド薬が一旦増量されることになりました。
主治医から詳しい説明を聞き、正直難しい話も多く、やらなければいけないことが増え、上手くできるのだろうかと複雑な心境になりましたが、少なくともぜん息は風邪などと違って、息苦しさが治ったからといって治療が終わるわけではなく、気長に取り組んでいかなければいけないと思いました。
タバコは自分の習慣であり、息抜きでもあり、喫煙できなくなるのは非常に辛くて気持ちも落ち込みましたが、あの息が吐けない苦しさを思うと、一大決心して禁煙せずにはいられませんでした。部屋の掃除に関しても正直面倒だと思いましたが、まずはやるしかないと思いました。

タバコを止め、毎日欠かさず吸入ステロイド薬を続けると、不思議と痰も減り、息苦しさは少しずつ軽減し、ピークフローの数値も上がってきて、変化が見られました。なるほど、主治医のアドバイスを実行してみると、そういうことだったのかと気付きました。
しばらく今の治療を続け、状態が改善しなければ、最新の治療である、抗体薬の注射を受ける選択肢もあると聞きました。今後も主治医と相談しながら、自分でも日常生活をきちんと管理し、これ以上悪化させないよう気を付けて、息苦しさのない毎日を送ることを目標に考えています。


     

医師からのワンポイントメッセージ

禁煙されたことは大変素晴らしい第一歩です。喫煙は最も重要な吸入ステロイド薬の効果を半減させ、リモデリングを早めてしまいます。また、最近の気管支拡張薬は効果が高く、症状の改善を早い時期に実感できるかもしれませんが、改善しても是非治療を継続してください。理由は、気道が過敏な状態の改善には半年以上かかること、また少しでも不安定な状態が続くと、リモデリングが加速するためです。効果が十分上がらない場合は、吸入薬の使用方法を薬剤師などにチェックしてもらうことも重要です。最近は、3種類の薬剤を1度に吸入できる、簡便で効果の高い製剤も出てきました。ご多忙な場合でも、ライフスタイルに合った治療を続けて、希望通りの生活をしていただきたいと思います。
(帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学 教授 長瀬 洋之 先生)

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独立行政法人環境再生保全機構

  

このページは東京都 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報担当が管理しています。

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