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事件No.20 宇宙から来た相談者 くわしいページ
HACCP(食品衛生管理システム)
人間にとって欠かせない毎日の食事。たくさんある飲食店や食品製造施設のいずれにも、食品による事故の危険はひそんでいます。近年、食中毒などの食品事故を防ぐ方法として、NASAが考案したHACCPの考え方が取り入れられてきています。
HACCPとは?
HACCPとは、1960年代にNASA(アメリカ航空宇宙局)が、宇宙飛行中の食事の安全性を確保するために考案した食品衛生管理システムです。エイチエーシーシーピー、ハサップなどと呼ばれています。
HACCPの意味は
Hazard(ハザード:危害要因)Analysis(アナリシス:分析)and
Critical(クリティカル:重要)Control(コントロール:管理)Point(ポイント:点)
食品の製造や調理のときに、その食品の安全性を損なう要因を調べます。そして、その要因をなくすことができる工程を決め、その工程を続けて管理するシステムをいいます。こうすれば、できた食品からその要因を確実になくすことができます。
例えば、下のような要因、要因をなくす工程とその管理方法があげられます。
安全性を損なう要因 ↓ 要因をなくす工程 ↓ 工程の管理方法 |
食中毒菌 ↓ 加熱殺菌 ↓ 加熱温度と時間の確認 |
金属性異物の混入 ↓ 金属探知機 ↓ 金属探知機の動作確認 |
従来の衛生管理法とどう違うの?
今までは、最終製品を抜き取って検査し、その安全を確認する方法が取られていました。しかし、この方法では、最終製品の全てが安全であるかどうかを確かめることができません。一方、HACCPシステムは、製造工程中の重要な段階を連続的に監視することによって、最終製品の安全性を保証します。
HACCPの流れ
食品の製造や調理を行う場合、微生物、化学物質、異物など、その食品の安全性を損なう要因にはどのようなものがあるかを調べます。この要因を、「危害要因」(Hazard)といいます。
危害要因について、製造や調理の工程(ライン)ごとに分析(Analysis)を行います。
- 危害要因の種類
- 危害要因による事故が、工程のどこで発生する可能性があるか
- もし事故が起こったとき、どんな規模の事故になるか
- どんな方法でその危害要因をなくすことができるか、または安全なレベルまで抑えることができるか
- 危害要因をなくす、または抑えることができる方法は、具体的にどのような値で(またはどのような状態で)示すことができるか
このように、危害要因を分析することを「危害要因分析」(Hazard Analysis:HA)と言います。
↓
HAに基づき、工程の中で、危害要因を除去している(または抑える)特に重要な(Critical)工程を決めます。例えば、食中毒菌をやっつける加熱工程です。
そして、その工程を連続して監視・管理(Control)できる点(Point)を決めます。これを「重要管理点」(CCP)といいます。例えば、加熱工程の完了時点がCCPになります。
危害要因が除去等されているのを示す具体的な値(状態)と、それを確認できる方法を決めます。例えば、食中毒菌をやっつける加熱温度、時間がその具体的な値になります。
↓
この正常値(状態)からはずれた場合の対応方法を決めます。
- 製品の処理:廃棄、再検査など
- 再発防止の手段
↓
CCPの確認方法、正常値(状態)からはずれた場合の対応方法を確立して、だれが作業しても間違えないようにします。
↓
確認、対応の結果を記録し、保管します。
HACCPの考え方を家庭でも取り入れてみると・・・
食中毒を予防するための方法として、HACCPの考え方は家庭でも応用することができます。
食事を作る過程で、どこに危害要因がひそんでいるかを調べ、それをなくすためにはどうすればいいか考えてみましょう。
<家庭内に潜む「危害要因」の例>
- 食品を買うとき
- ・食品の消費期限を確かめないで買う。
- 食品を保存するとき
- ・冷蔵庫にたくさんの食品を詰め込む。
・冷蔵庫の扉を開ける回数が多い。 - 料理するとき
- ・料理の前、肉や魚を扱った後など、きちんと手洗いをしていない。
・肉、魚、貝など、十分な加熱調理をしていない(中心まで火が通っていない) 。
HACCPの前提
HACCPだけで食品の安全性が確保できるわけではありません。HACCPシステムの中に、その基礎となる衛生管理プログラムを、あらかじめHACCPとは別に決めておく必要があります。これを、「前提条件プログラム」といいます。
前提条件プログラムに含まれるものは、例えば、従業員の教育訓練、施設や人の衛生管理、品質管理などがあります。HACCPとは違って、非常に厳しい管理を必要とせず、食品の安全性には直ちに影響しない多くの点がこのプログラムで管理されます。
HACCPとは分けてこのプログラムをきちんと組み立てておくと、HACCPで管理しなければならない点が少なくなり、効率よくHACCPシステムを実施することができます。